2023年4月2日日曜日
A Deeper Look at Organic Process Research & Development (OPR&D) - Part 2
2023年3月28日火曜日
Organic Process Research & Development【OPR&D】を深読み 〜その2〜
まずは,オランダのアムステルダム大学のTimothy Noël教授のスルホニルヒドラゾン類を用いた光触媒によるC–Hアルキル化の論文です。反応としては,アルデヒドから誘導される4-トリフルオロメチルスルホニルヒドラゾンのアルジミンの求電子性炭素に対するアルキルラジカルの付加です。
基質の4-トリフルオロメチルスルホニルヒドラゾンの合成に用いる対応するヒドラジンの合成は簡便ですね。ヒドラジン水和物(3当量)を、0℃で30mLのTHF中の対応するスルホニルクロリド(6 mmol)の溶液に滴下して加えるだけです。N–H結合(ca. 430 kJ/mol)とS–Cl結合(ca. 260 kJ/mol)→S–N結合(ca. 460 kJ/mol)とH–Cl結合(ca. 430 kJ/mol)への置換ですね。実際にはヒドラジンとスルホニルなので誤差はあるでしょうが,200 kJ/molほどの強力な発熱反応ですね。H–Cl結合(ca. 430 kJ/mol)ができるのが大きな駆動力になっていそうです。生成したH–Clは,ヒドラジン水和物(3当量)を使っているので,ヒドラジン塩酸塩が生成していそうですね。そのときの中和反応熱もあるので,0℃で滴下して加えているのも納得ですね。
精製は反応混合物を酢酸エチルで希釈した後、ブラインで5回洗浄してヒドラジン塩酸塩を除去してますね。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して完了です。
肝心の4-トリフルオロメチルスルホニルヒドラゾンのアルジミンの求電子性炭素に対するアルキルラジカルの付加ですが,C=N結合(ca. 640 kJ/mol)とC–H結合(ca. 385 kJ/mol)→C–C結合(ca. 300 kJ/mol)とC–N結合(ca. 285 kJ/mol)とH–N結合(ca. 430 kJ/mol)への変換ですね。前後の結合エネルギーの概算としては,それほど大きな有利さはないですが,著者らも言及しているように,ラジカルと付加を受ける基質の極性の一致が鍵となっているようです。論文中の極端な例では,今回のアルキルラジカルは求核性なので,アルジミンのような求電子性の基質には付加しますが,シリルエノールエーテルのような求核性のオレフィンには付加しません。THFのα水素の活性については酸素原子の電気陰性度に由来する誘起効果によって説明できますが,THF由来のアルキルラジカルの求核性については,酸素の非共有電子対による炭素ラジカルの軌道への超共役効果でしょうか。
Shapiro反応を起こしそうな基質ですが,用いる基質に活性なα水素を持たないアルジミンを中心に用いている点や,溶媒にもトルエンではなくTFTを用いているのも,ラジカル生成段階で競合するものが存在していると上手くいかないのでしょうね。
光触媒として用いる4, 4′-ジクロロベンゾフェノンについて,なぜベンゾフェノンがいいのかについてや,エネルギー移動については私の解説よりも詳しいものがありますので,そちらに譲ります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/24/12/24_12_1183/_pdf/-char/ja
http://www9.gunma-ct.ac.jp/staff/nakajima/Lecture/photochem5K/RS_20150701.pdf
http://www9.gunma-ct.ac.jp/staff/nakajima/Lecture/photochem5K/RS_20160613.pdf
私が推定反応機構で少し疑問に思ったのが,THFから水素ラジカルを引き抜いた後のケチルラジカルがベンゾフェノンに戻るときに,アルジミンの求電子性炭素にアルキルラジカルが付加した後のヒドラジニルラジカルが,THFから水素ラジカルを引き抜てしまうのでは?という点です。この点に関して,著者に質問してみたところ,ここでも極性の一致が鍵となっているとのことでした。すなわち,ヒドラジニル種の窒素を中心としたラジカルは、かなり求核的であるため(アミジルラジカルとは異なり、アミジルラジカルのようにカルボニル機能を持たず、HAT剤として知られている)、HAT(極性非一致事象)を介してTHFのC-H結合を切断することはありません。
次は,Ugi型四成分連結反応と分子内aza-Wittig閉環による無触媒多成分連結重合反応の論文です。基質としては,芳香族アルデヒド、第二級アミン、(N-イソシアノイミノ)トリフェニルホスホランおよびカルボン酸です。特筆すべきは,やはり(N-イソシアノイミノ)トリフェニルホスホランでしょうか。こちら市販品としても入手可能ですが,ギ酸ヒドラジド,四塩化炭素,トリフェニルホスフィンおよびトリエチルアミンを用いて,合成できるようです。推定反応機構を勝手に考えてみましたが,アッペル反応と少し光延反応のようなアゾ部位にPPh3が付加する要素も入れてみましたが,序盤で少し腑に落ちない部分があるので,まぁ参考程度に。
重合反応の着想の元論文はこちらです。ugi反応の途中で分子内aza-Wittig閉環が起きるのが大きな特徴ですね。また,イミンではなくイミニウムを使っているところも個人的には面白い着想だと感じていますが,この重合反応への展開は簡単そうに見えますが,色々と検討している基質などから工夫が伺えて面白いです。例えば,P1とP3でジベンジルアミンからジエチルアミンに変更すると,収率は大幅に低下しますが,Mwが劇的に増えています。一本あたりの平均であるMnも上がっているので,おそらくこれは分子量が増えてきても溶解性が落ちなかったために,低分子量の成分が全体として減ってMwが上昇したのではないかと想像しています。逆にピペリジンを使うと,おそらく溶解性が落ちる方向に働き,MwもMnも下がったのではないかと思います。P2では,グルタルアルデヒドはベンズアルデヒドではなくなったので,単純にイミニウム形成が遅くなったために,高分子量の成分が全体としてわずかに減ってMwが下がったのではないかと想像しています。
続いて,ドイツのアーヘン工科大学のDaniele Leonori教授のアリールジアゾニウム塩とヨードアルカンを用いたハロゲン原子移動(XAT)を利用したインドール合成です。インドール合成というと,Fischerインドール合成ですが,Fischerインドール合成はアリールヒドラジンを用意しなければならないため,基質一般性や官能基許容性に難がありますが,アリールジアゾニウム塩からインドール合成が可能になれば,アリールジアゾニウム塩はアニリンから亜硝酸ナトリウムと適切な酸を作用させることで用意に調整可能なので,基質一般性が大きく広がりますし,何よりもアニリン誘導体が市販品として豊富にあるので,多様な応用展開が期待できますね。
条件最適化では,還元剤として最初は第三級アミンを検討しましたが,1とアミンの副反応に由来する多量の副生成物と,それに起因して過剰に用いる必要がありました。著者らは,Gomberg−Bachmann型の機構で何らかの副反応が起きたのではないかと推測していましたが,アミンを使ってラジカルが関与する反応をやろうとすると,頻繁にどうにもおかしなことが起きるのですが,ラジカルが関与するとなると,有機化学者お得意のNMRが使えないので,機会があればアミンを使ったラジカル反応の全容をEPRと共鳴ラマンなどを駆使してどこかで解明してみたい気持ちがありますね。なんとか会社のプロジェクトと絡ませてやれないかな。。。化学メーカーじゃないけど笑。あるいはそういうチャンスがあれば,アカデミアの現場復帰もありえるかもしれませんね。まぁなにせ,副反応が起きて反応系が汚くなる点から,ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドや硫酸鉄を検討して,最終的に費用対効果の側面から,硫酸鉄を使用しています。論文で「費用対効果」なんて,あまり目にすることがないので取り上げました。
この手のSET反応全般に言えることですが,ヨードアルカンやヨードアレーンがよく利用されるのですが,ヨード系の基質は基質一般性の問題があったり,光で分解したりとなにかにつけてデメリットがあるので現場の人は嫌がるので,この辺りが解決できる一般性の高い方法論が見つかればブレイクスルーになりそうだという感覚はありますね。
続いても,同じくドイツのアーヘン工科大学のDaniele Leonori教授のニトロアレーンを光応答性酸化剤として用いたオレフィンのジヒドロキシル化反応です。こちらは以前にNatureで報告されたこちらの論文の派生研究ですね。以前はニトロアレーンを光応答性酸化剤として用いたオレフィンのオゾン分解型の反応を行っていましたが,今回は反応性を制御して開裂しないように還元することで,ジオール合成に成功しています。反応としての面白さもさることながら,従来は猛毒の四酸化オスミウムを用いざるを得なかった反応を代替できるとあって,非常に魅力的な反応ですね。
反応機構のところで,(E)-オレフィンと(Z)-オレフィンのいずれのジヒドロキシル化からも,syn異性体が主生成物で得られたことから,光環化付加反応の貴重な洞察を与えていますね。励起したニトロアレーン三重項ビラジカルの反応が協奏的ではなく,段階的に進んでいることが,立体障害の少ない中間体にに平衡化させる速い結合回転が起きているであろうということから容易に想像できますね。
syn体のジオールが優先的に得られているので,これ,David W. C. MacMillanの報告していたこちらのトランス体からシス体ジオールへの動的エピメリ化の条件を活用して,オレフィンからワンポットで,syn体とanti体のジアステレオダイバージェントなジオール合成ができたら,面白そうですね。
最後はコロラド州立大学のAndrew McNally教授のZinckeイミン中間体を介したピリジン類3位のハロゲン化反応の論文です。
端的に言ってめちゃくちゃおもしろい反応ですね。ピリジンは電子不足な芳香環なので,求電子芳香族置換(EAS)反応によるハロゲン化は,過酷な条件を必要とします。強力なブレンステッド酸やルイス酸と高温で反応を進めることができますが,基質一般性や官能基許容性の観点から,現実的ではありません。また,教科書のように位置異性体がきれいに選択的に得られることはなく,位置整体混合物になる点も問題です。他にも,強塩基を用いたメタル化-ハロゲン化反応もアプローチの一つとして考えられますが,3位にアクセスするためには配向基が必要になるので,これもまた同様の問題を抱えています。結果的に,人類は現実的な解決手段として,他の汎用性の高い官能基を介した間接的な方法ではありますが,立体障害や配位子の構造制御によって,イリジウム触媒を用いた3位選択的ボリル化やシリル化を開発しました。ちょっと興奮して研究背景を熱く語りすぎてしまいましたね。
なにせこのような背景から,ピリジンの3位選択的ハロゲン化について,開環→ハロゲン化→閉環の戦略による代替アプローチが今回開発されました。本反応は,ピリジンをアザトリエン中間体(Zincke imines)に変換する古典的なZincke開環反応を改良したもので,ワンポットで行えます。いくらピリジンとはいえ,芳香環を開いて閉じる間にハロゲン化するなんて発想が
すごすぎますね。著者らはまず,従来のZincke開環化学の手法の改善に取り組み,ピリジンN-活性化ステップが強力な反応条件を必要とした点,2位の置換基が存在する場合にしばしば失敗するという制限をとりさり,置換ピリジン類の基質一般性を拡大しました。具体的な解決法として,低温でピリジンと無水トリフラート(Tf2O)から容易に生成するNTf-ピリジニウム塩の開環を利用しています。これにより,反応性中間体として2,6-二置換を除くほとんどの置換パターンにまで基質一般性を拡大しました。ToscanoらもTf2Oによる開環を報告していましたが,このプロセスをピリジン以上に拡張することはなく,開環生成物の混合物を観察したところで止めてしまったようです。2-フェニルピリジンを用いて,開環のための求核剤として一連の脂肪族アミンをした結果,ピロリジン,ピペリジン,モルホリンからはジイソブチルアミンと同様の中程度の収率で開環生成物を得ることができましたが,最終的にはジベンジルアミンが最適で,高収率で開環生成物を得ることができました。そういえば偶然ですが,さっきのUgi型四成分連結反応のときもジベンジルアミンが最適でしたね。
このZincke開環化学,面白いですね。ピリジンに求核剤を作用させると,通常はChichibabin反応のように芳香族求核置換反応が進行しますが,その理由は芳香族反応の特徴である「芳香族性を回復する有利さ」のために,付加後の中間体よりも生成物のほうが安定になります。ところが,今回の場合はTf基の電子求引性のために,付加後の中間体の窒素上の非共有電子対が芳香族性を回復できるほどの力がないのでしょう。また,メチル基を3つも有するcolidineを塩基として用いているのも,colidine側にTf基が移ったり,求核剤が付加するのを防ぎつつ,強すぎないという絶妙なバランスなのだろうなと推測しています。付加後の中間体は局所的に見れば,アミジンのような骨格であり,NTfが脱離基と考えれば自然な反応機構が書けると思います。
開環後は,ハロスクシンイミド(NXS)を作用させれば,ヨウ素化と臭素化はスムーズに進行し,塩素化は結果が芳しくありませんでしたが,塩酸を共存させればワンポットで塩素化と閉環まで首尾よく進行するようです。ヨウ素化と臭素化の場合は,TFAを共存させればワンポットで進行します。これらのことから,開環と閉環あるいはさらなる分解を招くかは,酸性か塩基性かの絶妙なバランスで成立しているようですね。
著者らは,NXSによるZinckeイミンハロゲン化の機構と位置選択性について,DFT計算を行っています。確かに位置選択性が何で決まっているのかは気になるところです。DFT計算のレベルは,B3LYP-D3(BJ)/def2-TZVP//ωB97X-D/6-31+G(d,p)レベルを使って,CH2Cl2のSMDによる溶媒補正を入れていますね。ωB97Xですが,構造最適化の精度が高いということで,B3LYPやM06に代わって最近よく用いられてます。構造最適化ではωB97X-Dを使って,エネルギー計算のところでもB3LYP-D3(BJ)にして長距離補正を入れていますね。あまり弱い相互作用が効きそうな系ではなさそうですが,念の為ということでしょう。Dで入れる長距離補正は,B3LYPからωB97Xに変えることによる計算コストに比べれば小さいですから。ハロゲン化の経路は,一般的な求電子付加に続く脱プロトン化であり,外殻電子移動過程を仮定した経路はは活性化障壁が34 kcal/molとかなり高かったようです。余談ですが,34 kcal/molがどれくらいのエネルギーかをボルツマン定数を使って,大雑把に推定すると,原料を99%消費するために200℃で1時間,160℃で24時間の加熱が必要ということになります。
以上で,OPR&Dの深読み第2回でした。今回はあまりSIの合成にまでは踏み込みませんでしたが,論文の反応のエネルギーの考え方や反応機構を中心に深読みしました。みなさんも自分なりの視点を持って論文を深読みできるように,いろんな考え方や視点を取り入れて実践してみるのもいいかもしれません。
2023年3月26日日曜日
A Deeper Look at Organic Process Research & Development (OPR&D) - Part 1
Although I have not become a process chemist, I have learned a lot from OPR&D and have been reading it since I was a student. I would like to share with you some of the articles in the "Most Read" or "Some Items of Interest to Process R&D Chemists and Engineers", which is a compilation of articles by Dr. John Knight that I think chemists should read.
Today's article is co-authored by Mr. Masatoshi Yamada of the Pharmaceutical Research Division of Spera Pharma, Inc., members of the API team of the CMC Research Division, and members of Tohoku University.
The article describes an efficient and scalable asymmetric total synthesis of (-)-Emetine with pharmaceutical grade quality, which is the first multigram scale synthesis. The starting material is inexpensive homoveratrylamine (3,4-dimethoxyphenethylamine), which is surprising to see again at the end of the process.
According to Wikipedia, the synthesis of 3,4-dimethoxyphenethylamine is done by using vanillin or its methylated form as a starting material, condensation with acetic acid to increase carbon, hydrogenation to the double bond, and Hofmann rearrangement. Another route is the reduction from the Henry reaction using nitromethane.
The synthesis starts with the one-pot intramolecular SEAr reaction from imine formation of the terminal amine to produce 6,7-Dimethoxy-3,4-dihydroisoquinoline. This reaction is named the Pictet-Spengler reaction and uses electrophilic carbons produced by the decomposition of hexamethylenetetetramine (HMTA) under the acidic conditions used in the Duff reaction. The order of adding HMTA and TFA should be reversed if you want to proceed with the Friedel-Crafts type reaction favorably. In addition to the neutralization of TFA by the amino group of the raw material, even if HMTA reacted with TFA, there would still be a sufficient amount of TFA remaining to start heating. The remaining 0.3 equivalents of HMTA were added in three separate additions, and the final yield, including purification, was nearly 70%, so it seems safe to assume that HMTA provided the electrophilic carbon at least twice.
The asymmetric allylation of 6,7-Dimethoxy-3,4-dihydroisoquinoline shows the dark side of scale-up. The reaction went well on a scale of about 130 g. When they increased the amount of catalyst and ligand further and ran the reaction on a 2 kg scale, they encountered several issues, such as the appearance of byproducts, a decrease in enantioselectivity, and difficulty in controlling the reaction temperature. These issues were resolved by optimizing the reaction conditions and using a different catalyst and ligand.
Authors have successfully functionalized the terminal allyl group using a second-generation Grubbs catalyst for an olefin metathesis reaction with ethyl acrylate. The nitrogen functional group is useful as it can be converted into an organic salt every time it is isolated.
The benzoquinolizidine skeleton is constructed through the Michael addition of a secondary amine of tetrahydroisoquinoline to an α,β-unsaturated ketone, followed by intramolecular cyclization. In this process, the Michael addition with the easily polymerizable methyl vinyl ketone is controlled by neutralizing the hydrochloride salt of the raw material from the previous isolation process with exactly one equivalent of triethylamine. In the subsequent intramolecular cyclization, pyrrolidine is added to deprotonate the α-hydrogen of the ketone, and the reaction proceeds in a one-pot fashion.
The remaining ketone is reduced with sodium borohydride, but the reduction also competes with the intramolecular condensation of the alcohol and ester resulting from the reduction, forming a lactone. This is not surprising, especially since concentration during the post-processing process can be problematic. Therefore, tosyl alcohol is protected by adding anhydrous tosylate and then isolated as a tosylate. This is a smart approach.
After removing the tosyl group by hydrogenation, hydrolyzing the ester, and activating with pivalic acid chloride and triethylamine, condensation with homoveratrylamine, which also appeared first, forms an amide. Here, an intramolecular SEAr reaction is carried out using phosphoryl chloride to form an imine from the amide, which is famous for the Vilsmeier-Haack reaction, to produce an electrophilic carbon, resulting in the Bischler-Napieralski reaction.
Finally, the target compound is obtained by reducing the imine through the Noyori asymmetric hydrogen transfer reaction.
How was it? The last part was a bit of a rush, but I think it is good to read OPR&D in depth to learn a lot.
2023年2月18日土曜日
How to make organic single crystals - Part 1
How do you look at molecules?
The author specializes in organic synthesis, but I am really interested in visualizing molecular structures through X-ray crystallography.
I usually imagine molecular structures in my mind from information such as NMR.
In recent years, it is also possible to look at molecular structures in isolated systems by calculation.
This is exciting, but X-ray crystallography enables us to view not only the structure of a single molecule, but also the beautifully organized arrangement of molecules in the solid phase.
The aesthetic beauty of the unnatural alignment, which is a product of weak intermolecular forces, is indescribable, and stands in stark contrast to nature's ruthless law of increasing entropy.
However, X-ray crystallography is not easy.
Single crystals are required to view molecular structures in X-ray crystallography.
Once the technique is mastered, it doesn't take much effort, and if you enjoy it, you may even become as eager to grow single crystals as the author.
This time, I would like to discuss how to grow single crystals.
For me, making crystals is a nice break from my busy schedule because I can do it while waiting for concentration of reaction mixture or 13C NMR.
The reason I chose the title "organic single crystals" is because I believe that those in the inorganic field have know-how in the inorganic field.
I hope you will refer to it as the know-how in the organic field.
The availability of results from X-ray crystal structure analysis can enrich not only laboratory discussions but also academic presentations.
Why not take a photograph of the target compound you have synthesized and purified with your own hands?
Well, that's enough of the long preamble.
I would like to introduce how to make a single crystal.
The flow is as follows
1. Purify the sample
↓
2. Perform solubility test
↓
3. Single crystal preparation
It's easy, isn't it? (Once you get the hang of it, you may even skip the solubility test in STEP 2.)
1. Purify the sample
This is the process of removing dust from a chemically purified sample.
- Filtration using a syringe filter
This is easy. If you have the time, I highly recommend this method.
Please be careful of the dust in the container to be filtered.
http://www.monotaro.com/s/c-85732/?sort=price
- Filtration during heat
If you can afford it, this method is preferable.
If you are lucky, single crystals may be formed from the filtrate as it is, so you must act quickly.
*Make sure that the funnel and the flask to receive the filtrate are as dust-free as possible to avoid missing any chance opportunities.
2. Perform a solubility test
You only need a few milligrams of the sample in a vial to roughly determine the degree of solubility (dissolves easily, dissolves when heated, does not dissolve when heated).
As mentioned earlier, if you already know the solubility to some extent or have dealt with a sample with a similar structure before, you may skip this test.
Non-polar solvent
Protic polar solvent
Non-Protic Polar Solvents
Benzenes (non-polar and polar)
can be used.
*By attempting to grow single crystals in a single solvent system without changing the sample used for the solubility test, you can determine the solubility of the sample in that solvent system. This will give you a rough idea of the solvents' tendency to form crystals and the type of crystals they produce.
3. Single crystal preparation
Finally, it is time to fabricate single crystals.
Generally, a sample of about 1 mg is sufficient for one examination.
Even if the sample has poor solubility, it can still be used if it dissolves even a little.
Microtubes or small vials are used as containers.
- Simple precipitation
Simple precipitation is easy to perform.
(1) Cover the solubility test sample with a simple lid made of wrapping paper, etc. and make a hole.
↓
(2) Leave it to stand.
- Precipitation from supersaturated solution
It is easy.
(1) Referring to the result of the solubility test, add solvent to the extent that the sample is not completely dissolved.
(2) Heat the solvent to dissolve the sample completely.
↓
(3) Allow the sample to cool (if it can be cooled in a bath, try that as well).
- Precipitation by poor solvent
It is a little time-consuming, but various conditions are possible.
(1) Dissolve the sample in a good solvent based on the solubility test results.
↓
(2) Divide the solution into microtubes or small vials (less than 1/4 of the volume is desirable).
↓
(3) Prepare several large vials that can be put microtubes or small vials, and pour a different poor solvent into each large vials.
↓
(4) Put the microtubes or small vials mentioned above into the large vials and close the lids to seal them. Needless to say, please do not put lids on the containers inside. I often do this when I am careless. lol
The above is an introduction to [how to make organic single crystals], which is longer than a useless story.
If you are already experienced in making single crystals, this may have been a bit of a "what's new" story.
In Part 2, I will share my personal tips and special techniques.
See you soon!
2023年2月15日水曜日
Organic Process Research & Development【OPR&D】を深読み 〜その1〜
プロセスケミストになったわけではないけど、昔からOPR&Dから学ぶことが多くて学生時代からよく読んでいたので、みなさんにもOPR&Dを好きになってもらうべくMost Readにあがっている論文や、John Knight先生によって定期的に他誌のプロセス化学者に読んでほしい論文をまとめたSome Items of Interest to Process R&D Chemists and Engineersを深読みしていこうと思います。
それでは本日の論文ですが、筆頭著者&責任著者はスペラファーマ株式会社 製薬研究本部 山田雅俊氏、CMC研究本部 原薬チームのメンバーと国立大学法人東北大学の皆さまと共著した以下の論文です。
Efficient and Scalable Asymmetric Total Synthesis of (−)-Emetine with Pharmaceutical Grade Quality;First Multigram Scale Synthesis
出発物質は安価なhomoveratrylamine(3,4-ジメトキシフェネチルアミン)を用いています。終盤にもう一度出てくるので、驚きました。
Wikipediaによると、3,4-ジメトキシフェネチルアミンの合成は、バニリンかそのメチル化体を出発物質にして、酢酸との縮合反応により増炭した後、二重結合に対して水素添加して、Hofmann転位といったところでしょうか。
他にも、ニトロメタンを使ったHenry反応からの還元による経路もあるそうです。
まずは、homoveratrylamineからの6,7-Dimethoxy-3,4-dihydroisoquinolineの合成ですが、末端アミンのイミン形成からの分子内SEAr反応をワンポットで行っています。余談ですが、校舎の反応はPictet-Spengler反応という名称があるそうです。反応の本質は、Duff反応で用いられる酸性条件下、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)が分解することで生じる求電子性の炭素を反応に用いている点ですね。反応の順序的には、流石に先にDuff反応によるアシル化が起きてはいないと思うのですが、一応計算してHOMOを見ておきました。
試薬を加える手順から考えても、酢酸溶媒中の原料と0.1当量のHMTAに対して氷浴しながら2.3当量のTFAを加えているので、フリーデルクラフツ型の反応を有利にすすめたいなら、HMTAとTFAを加える順序は逆でもいいはずなので。また、TFAに対して、原料のアミノ基による中和に加えて、HMTAが反応したとしても、まだ十分な量のTFAが残っているであろう状態で加熱を始めています。そこへ、残りの0.3当量分のHMTAを3度に分けて加えて、HMTAは全量でも0.4当量しか加えていませんが、精製も含めて最終的に7割近い収率でえているので、これは、HMTAが少なくとも2回は求電子性の炭素を供給していると考えて良さそうです。
1回目は、HMTAのアダマンタン骨格の歪みエネルギーの解消が駆動力になっていそうですが、2回目もやはりビシクロ骨格に取り込まれたヘキサヒドロトリアジンの開環による歪みエネルギーの解消が駆動力ということで良いのでしょうか。。。?それでも分子内にも第一級アミンがいる状況で、分子間反応を優先させるのは難しそうな印象があります。それもあって、常に原料がHMTAの2倍以上は量がある状況を保っているのかも?
流石に3回目ともなると、ヘキサヒドロトリアジン環の分子内で炭素−窒素結合が開裂したとしても、再び分子内のアミンが付加する方が速いと思われますし、原料の濃度は下がっているのに、反応後のHMTAの残骸の濃度は上がってくるので、おそらくこれ意図的に少なめの当量で反応をかけていますね。本文中ではHMTAを過剰に入れると、酸化反応が進行してイソキノリンが生成してしまうと言及されていますね。
これ今は無置換なので炭素−窒素結合が開裂しますが、もしかしてグルコースのときの隣接基関与みたいな感じで、脱離基を導入できれば、上手いことαβの選択性出して面白い分子作れるのでは?とふと思ったり。。。
反応の終盤は、HMTAが炭素源として2度働くのであれば、ブレンステッド酸(BA)を4倍消費した上で、反応後のHMTAの残骸もBAを消費するのであれば、計5倍は消費するので、原料(生成物)の窒素と合わせてブレンステッド酸を3.0当量消費するので、2.3当量のTFAは全て中和されていそうです。反応後は水で希釈して108 molのNaOHを水溶液で加えています。酢酸が98 mol使用されているので、TFAと合わせて116 molのBAが反応混合物にいたので、塩基として働く物質の量は、計23 + 108 molなので、15 molほど塩基が多くなるように加えているようですね。実際、pHも9付近で落ち着くようです。
酢酸エチルで抽出した後、コハク酸を加えて有機塩として6,7-Dimethoxy-3,4-dihydroisoquinolineを単離しているあたりも渋くていいですね。
つづいて、6,7-Dimethoxy-3,4-dihydroisoquinolineの不斉アリル化では、スケールアップの闇が垣間見えていますね。およそ130 gのスケールでうまく行ったので、触媒と配位子の量を更に増やして2 kgのスケールで反応をかけたら収率が激減したので、塩化銅と比較的安い不斉配位子を追加してなんとか進めたというところでしょうか。銅触媒反応は、良い反応が多いのですが、酸素に敏感なので軽い気持ちで当量を減らすと痛い目を見ることがあるのが怖いですね。
末端アリル基の官能基化は、エチルアクリレートとのオレフィンメタセシス反応を泣く子も黙る第2世代グラブス触媒を使って達成していますね。窒素官能基があると、単離の度に有機塩にできるのでいいですね。
Benzoquinolizidine骨格の構築は、tetrahydroisoquinolineの第二級アミンのα,β-不飽和ケトンへのMichael付加と、続く分子内環化によって行っています。このとき、先の単離で塩酸塩にした原料の中和をきっちり1当量のトリエチルアミンで行うことで、重合しやすいメチルビニルケトンを使ったマイケル付加を制御しています。その後の分子内環化ではピロリジンを追加してケトンのα水素を脱プロトンして、反応をワンポットで進行させているのでしょう。
残ったケトンは水素化ホウ素ナトリウムで還元していますが、還元によって生じるアルコールとエステルの分子内での縮合によるラクトン形成と、形成したラクトンの還元も競合してしまうそうです。言われてみれば、さもありなん。。。特に、後処理過程での濃縮が大敵のようです。なので、無水トシル酸を加えてアルコールをトシル保護して、ついでにトシル酸塩として単離しています。賢い。
水添でトシル基を除去した後、エステルの加水分解と、続くピバル酸クロリドとトリエチルアミンを使った活性化を行った後、最初にも出てきたhomoveratrylamineを縮合させてアミドを形成します。ここで、Vilsmeier-Haack反応で有名な塩化ホスホリルを使ったアミドからイミンを形成する手法によって、求電子性の炭素を生じることで、分子内SEAr反応を行っています。Bischler-Napieralski反応という名前があるそうです。
最後は野依不斉水素移動反応によってイミンを還元することで、目的化合物を得ています。
いかがだったでしょうか?