まず、化学における「群」とはなにか。(対称操作の集まり\(^o^)/)
1: 群とは何か?
対称操作の集まり
水分子の対称操作を例に考えると、水分子は折れ線型(V字型)で、以下のような「対称操作」が可能です。
- E(恒等操作)
 
何もしない
- C₂(回転)
 
分子を180°回転
- σv(鏡映)
 
垂直面で反射
- σv'(別の鏡映)
 
もう一つの垂直面で反射
これらの操作は「水分子を変えない操作の集まり」であり、群を形成します。
「集合」と「演算」の意味から
- 集合:対象の集まり。例:整数の集合 {…, –2, –1, 0, 1, 2, …}
 - 演算:その集合の要素同士を組み合わせるルール。例:加法(+)
 
群とは、「集合」と「演算」がセットになって、以下の4つの性質を満たすときに成立します。
- 閉包性:演算の結果もその集合に属する
 - 結合性:演算の順序が変わっても結果は同じ
 - 単位元の存在:演算しても元の要素が変わらない要素が存在
 - 逆元の存在:演算して単位元になるような要素が存在
 
正直言って、この4つの性質、どれをとってもナンノコッチャなんですよね。なので、以下に「水分子の対称操作」と「整数の加法」という2つの例を並列で示すことで、群の4つの性質を1つずつ徹底的に解説します。
2: 閉包性(Closure)
意味:演算の結果が、必ず元の集合の中にあること。
整数の加法の例:
- 集合:整数(…, –2, –1, 0, 1, 2, …)
 - 演算:加法(+)
 - 検証:1 + 2 = 3 → 3は整数 → OK
–5 + 7 = 2 → 2も整数 → OK 
すなわち、どんな2つの整数を足しても、結果はまた整数になる。だから閉包性あり。
水分子の対称操作の例:
- 操作:C₂(180°回転)とσv(鏡映)を組み合わせると、σv'になる(\( C_2 \times \sigma_v = \sigma_v' \))
 - σv'も水分子の対称操作の1つ → 閉包性あり
 
3: 結合性(Associativity)
意味:演算の順序を変えても、結果が変わらないこと。
整数の加法の例:
- (1 + 2) + 3 = 3 + 3 = 6
 - 1 + (2 + 3) = 1 + 5 = 6
→ 両方とも結果は6 → 結合性あり 
水分子の対称操作の例:
- \( (C_2 \times \sigma_v) \times \sigma_v' = C_2 \times (\sigma_v \times \sigma_v') \) → 結果は同じ操作になる
 - \( E \times (C_2 \times \sigma_v) = (E \times C_2) \times \sigma_v \) → 結果は同じ操作になるので、結合性あり(実際の行列演算でも確認できる)
 
4: 単位元の存在(Identity Element)
意味:演算しても何も変わらない要素が存在すること。
整数の加法の例:
- 単位元:0
 - 5 + 0 = 5、–3 + 0 = –3 → 何も変わらない → OK
 
水分子の対称操作の例:
- 単位元:E(恒等操作)
 - \( E \times C_2 = C_2, \quad E \times \sigma_v = \sigma_v \) → 何も変わらない → OK
 
5: 逆元の存在(Inverse Element)
意味:演算して単位元に戻るような要素が存在すること。
整数の加法の例:
- 逆元:–x(xの逆)
 - 5 + (–5) = 0 → 単位元(0)に戻る → OK
 
水分子の対称操作の例:
- \( C_2 \times C_2 = E \) → C₂は自分自身が逆元(180°回転を2回すると元に戻る)
 - \( \sigma_v \times \sigma_v = E \) → 鏡映も自分自身が逆元 → OK
 
まとめ:群の4つの性質
| 性質 | 意味 | 例(整数) | 例(水分子) | 
|---|---|---|---|
| 閉包性 | 演算しても 集合の中にいる  | 
1 + 2 = 3 | \( C_2 \times \sigma_v = \sigma_v' \) | 
| 結合性 | 演算の順序を 変えても同じ  | 
(1 + 2) + 3  = 1 + (2 + 3)  | 
\( (C_2 \times \sigma_v) \times \sigma_v'\)  \( = C_2 \times (\sigma_v \times \sigma_v') \)  | 
| 単位元 | 何も変えない要素がある | x + 0 = x | \( E \times C_2 = C_2 \) | 
| 逆元 | 元に戻す要素がある | x + (–x) = 0 | \( C_2 \times C_2 = E \) | 
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