論文のタイトル: Silylium-Ion-Promoted (3 + 2) Annulation of Allenylsilanes with Internal Alkynes Involving a Pentadienyl-to-Allyl Cation Electrocyclization(Silyliumイオンを触媒とするアレニルシランと内部アルキンの(3+2)環化反応:ペンタジエニルからアリルカチオンへの電子環状反応)
背景
1: アレニルシランの化学
- アレニルシランは、有機合成において、プロパルギルアニオン等価体として広く利用されている。
- 従来、アレニルシランは、ルイス酸や塩基の存在下で、求核付加反応に用いられてきた。
- Danheiser環化では、アレニルシランが3炭素合成等価体として働き、五員環の構築に利用されてきた。
- これらの反応は、アレニルシランがルイス酸活性化されたアクセプターに求核付加することから始まる。
2: 本研究の着想
- アレニルシランがカルボカチオン中間体に直接求核付加する例は、ほとんど報告されていない。
- Silyliumイオンによるアルキンの活性化は知られている。
- 本研究では、Silyliumイオンによって生成したβ-ケイ素安定化ビニルカチオンへのアレニルシランの付加を検討した。
- この反応において、ケイ素部位がSilyliumイオンとして放出され、触媒サイクルを形成することを目指した。
3: 研究の目的と意義
- 本研究の目的は、アレニルシランとアルキンを用いた(3+2)環化反応の開発である。
- この反応では、アレニルシランが2炭素合成等価体として働き、従来のDanheiser環化とは異なる。
- この環化反応は、Silyliumイオンによって開始され、自己再生によって触媒サイクルが維持される。
- ペンタジエニルからアリルカチオンへの電子環状反応が鍵となるステップである。
方法
1: 反応条件の最適化
- モデル基質として、α-メチル置換アレニルシランと内部アルキンを使用した。
- Silyliumイオン開始剤として、[Me3Si(HCB11H5Br6)] を使用した。
- ベンゼンなどの非極性溶媒が反応に好適であった。
- アルキンを1.25当量使用した際に、最高の収率が得られた。
2: 基質範囲の検討
- メチル基やハロゲンを含む様々なアルキンが許容された。
- o-トリル基を持つアルキンは、立体障害により収率が低下した。
- アレニルシランの置換基も変更し、様々なメチレンシクロペンテンが得られた。
3: 反応機構の解明
- 重水素標識実験により、アルキンのメチル基が環化反応に関与していることが示された。
- アレニルシランは、プロパルギルシランに異性化されることがわかった。
- DFT計算により、反応機構の詳細が明らかになった。
4: 触媒サイクルの提案
- Silyliumイオンが触媒として作用し、反応を促進する。
- 触媒サイクルは、ビニルカチオン中間体の形成から始まる。
- ヒドリドシフトとそれに続く電子環状反応が重要なステップである。
- 最終的にSilyliumイオンが再生され、触媒サイクルが完結する。
結果
1: (3+2)環化反応の収率
- 多くの基質で、中程度から良好な収率で目的物が得られた。
- 反応条件を最適化することにより、最大で74%の収率を達成した。
- アレニルシランの置換基の種類により、収率に差が見られた。
- ビスアルキンを用いた場合、両方の部位で環化が進行し、有用な収率で生成物が得られた。
2: 生成物の構造解析
- 生成物 3ae の分子構造をX線結晶構造解析により決定した。
- NMRを用いて生成物の構造と収率を確認した。
- 重水素標識体3aa-d3の構造を解析した。
3: 反応機構の理論的考察
- DFT計算により、反応機構における各ステップのエネルギープロファイルが明らかになった。
- 最初のSilyliumイオン移動が律速段階であることが示された。
- ペンタジエニルカチオンからアリルカチオンへの電子環状反応が、非常に容易に進行することが示された。
考察
1: (3+2)環化反応のメカニズム
- 本研究で開発した(3+2)環化反応は、アレニルシランが2炭素合成等価体として働く点が特徴的である。
- これは、アレニルシランが3炭素合成等価体として働くDanheiser環化とは異なる。
- β-ケイ素安定化カルボカチオンが反応の中間体として重要な役割を果たす。
- ヒドリドシフトに続く電子環状反応は、反応を促進する。
2: 基質範囲と置換基の効果
- 様々なアルキンとアレニルシランが、この環化反応に適応できることがわかった。
- 立体障害の大きい置換基は、反応の収率を低下させる可能性がある。
- アリール基の存在は、ビニルカチオンの形成を促進する。
- アレニルシランの置換基を調整することで、様々なメチレンシクロペンテンを合成することができる。
3: 他の環化反応との比較
- アレニルシランを用いた環化反応は、Danheiser環化が有名である。
- 本研究では、Silyliumイオンを触媒とし、アレニルシランが2炭素合成等価体として働く新しい環化反応を開発した。
- 他の環化反応と比較して、独自の反応機構を持つ。
4: 研究の限界点
- 非置換のアルキンの反応性は低い。
- いくつかの基質では収率が低い。
- Me2PhSi 基を持つアレニルシランは、望ましくない副反応を引き起こす可能性がある。
- tBuMe2Si 基を持つアレニルシランは、反応を起こさない。
5: 生成物の変換反応
- 生成物3aaを様々な変換反応に適用できることが示された。
- 脱シリル化により、スキップジエン11が得られた。
- 水素化反応により、シクロペンタン12が得られた。
- ヒドロホウ素化と酸化により、アルコール14が得られた。
- ヒドロシリル化とヨウ素化により、化合物16が得られた。
結論
- 本研究では、Silyliumイオンを触媒とした(3+2)環化反応を開発した。
- この反応では、アレニルシランが2炭素合成等価体として働き、ペンタジエニルからアリルカチオンへの電子環状反応が鍵となる。
- この反応は、幅広い基質に適用可能であり、生成物をさらに他のシクロペンテン誘導体に変換することができる。
将来の展望
- 今後の研究では、反応のさらなる最適化、触媒の改良、適用範囲の拡大を目指す。
用語集
- アレニルシラン: アレン構造を持つケイ素化合物。
- プロパルギルアニオン等価体: プロパルギルアニオンと同様の反応性を持つ化合物。
- ルイス酸: 電子対受容体として働く化合物。
- Danheiser環化: アレニルシランを用いた(3+2)環化反応の既知の例。
- Silyliumイオン: ケイ素カチオン。
- β-ケイ素安定化ビニルカチオン: ビニルカチオンのβ位にケイ素原子が結合した構造で、安定化される。
- ペンタジエニルカチオン: 5つの炭素原子からなる共役カチオン。
- アリルカチオン: アリル基の炭素原子に正電荷を持つカチオン。
- 電子環状反応: 分子内のπ電子系が環状構造を形成する反応。
- スキップジエン: 二つの二重結合が単結合で隔てられた構造。
- ヒドリドシフト: 分子内の水素原子が隣接する原子に移動する反応。
TAKE HOME QUIZ
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この論文で報告されている反応は、どのような種類の反応ですか?
- a) (2 + 2)環化反応
- b) (3 + 2)環化反応
- c) ディールス・アルダー反応
- d) フリーデル・クラフツ反応
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この反応において、アレニルシランはどのような役割を果たしますか?
- a) 3炭素合成等価体
- b) 2炭素合成等価体
- c) 1炭素合成等価体
- d) 触媒
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この反応の開始剤として用いられるものは何ですか?
- a) ルイス酸
- b) ブレンステッド酸
- c) シリルイオン
- d) 金属触媒
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この反応の重要な中間体は何ですか?
- a) カルボアニオン
- b) ラジカル
- c) ペンタジエニルカチオン
- d) ベンジルカチオン
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この反応の触媒サイクルにおいて、シリルイオンはどのように再生されますか?
- a) 外部からの供給
- b) 自己再生
- c) 反応基質との相互作用
- d) 溶媒との相互作用
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この反応で生成される主な生成物は何ですか?
- a) シクロヘキサン
- b) メチレンシクロペンテン
- c) シクロブタン
- d) オキセタン
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この反応は、どのような種類のアルキンに対して有効ですか?
- a) 内部アルキン
- b) 末端アルキン
- c) 脂肪族アルキン
- d) 全てのアルキン
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この反応において、アレニルシランは反応前に何に異性化されますか?
- a) アリルシラン
- b) プロパルギルシラン
- c) ビニルシラン
- d) アルキルシラン
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この反応の重要な段階は、DFT計算によってどのように明らかにされましたか?
- a) ペンタジエニルカチオンからアリルカチオンへの電気環化が鍵となる
- b) シリルイオンの転位が鍵となる
- c) ハイドライドシフトが鍵となる
- d) アルキンの活性化が鍵となる
解答
- b
- b
- c
- c
- b
- b
- a
- b
- a
解説
- この論文では、アレニルシランと内部アルキンを用いた新しい(3 + 2)環化反応が報告されています。
- アレニルシランは、反応前にプロパルギルシランに異性化し、その後、2炭素合成等価体として機能します。
- 反応はシリルイオンによって開始され、触媒サイクルを通して自己再生されます。
- ペンタジエニルカチオンからアリルカチオンへの電気環化が重要なステップです。
- 生成物であるメチレンシクロペンテンは、さまざまな官能基化反応を経て、他のシクロペンテン誘導体に変換できます。
- この反応は、既知のダナイザー環化反応とは異なり、アレニルシランが2炭素合成等価体として機能する点が特徴です。
- DFT計算によって、反応機構が詳細に解明されています。