時が経つのは早いもので,4年ぶりの更新になってしまいました。
ご無沙汰しております。
博論を書いたり,留学に行ったり,風の吹くまま気の向くままの人生を卒業したりと,色々ありました。
前振りはこれくらいにして,典型元素化合物を用いたキラルと言うと、キラルホスフィン配位子やキラルリン酸が一番に浮かぶでしょうか。
これらは,言わずもがなの遷移金属触媒の配位子として、あるいは有機触媒として数多くの反応が報告される活発な研究分野となっています。
一方で、キラルスルホキシドはというと、そもそもDMSOすら平面だと思われているような言動を見かけることもちらほら。。。
その最たる理由は、やはりスルホキシドの結合を二重結合で書いてしまうことにあると個人的には思っている次第です。
さて、キラルなスルホキシド(R 1 R 2 SO)やスルフィン酸エステル(RSOOR)の話ですが、その歴史は1926年に遡ります。キラルスルホキシドの合成は、Andersenらが1962年に最初に報告したメントールが置換したスルフィン酸に対してグリニャール試薬や有機リチウム試薬を求核剤として用いる手法が有効なようです。
スルホキシドの不斉合成の方法論として,触媒的不斉スルホキシド化が注目されています。スルホンへの酸化、硫化物への還元、側鎖の修飾、およびスルホキシミンへのイミド化を含む速度論的分割や、アキラルなスルホキシドの非対称化のための硫黄原子上での求核置換、その他にも,MOFやホスト-ゲスト化学を応用したエナンチオ選択的認識と分離に加え、ホーナー-ワズワース-エモンズ反応を応用した方法もあります。
一方で,スルホキシドの立体化学の正確な決定には注意点があります。エナンチオ濃縮されたスルホキシドがエナンチオマーの自己不均化現象(SDE)を起こしやすいという事です。これは、後処理および精製工程で,エナンチオ純度が低下する可能性があることを意味しています。
この濃縮されると自己不均化が起こるという現象に着目すると,ある一定の分子間距離以上に近づくと,スルホキシド同士が単なる双極子相互作用以上の何か,硫黄原子上での付加/脱離を起こしているのではという気がしますね。
今度,DFT計算でシミュレートしてみようかな。
それではまた。
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