ラベル 考察 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 考察 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年12月20日火曜日

スルホキシドのキラルの話

時が経つのは早いもので,4年ぶりの更新になってしまいました。

ご無沙汰しております。

博論を書いたり,留学に行ったり,風の吹くまま気の向くままの人生を卒業したりと,色々ありました。


前振りはこれくらいにして,典型元素化合物を用いたキラルと言うと、キラルホスフィン配位子やキラルリン酸が一番に浮かぶでしょうか。

これらは,言わずもがなの遷移金属触媒の配位子として、あるいは有機触媒として数多くの反応が報告される活発な研究分野となっています。


一方で、キラルスルホキシドはというと、そもそもDMSOすら平面だと思われているような言動を見かけることもちらほら。。。

その最たる理由は、やはりスルホキシドの結合を二重結合で書いてしまうことにあると個人的には思っている次第です。

さて、キラルなスルホキシド(R 1 R 2 SO)やスルフィン酸エステル(RSOOR)の話ですが、その歴史は1926年に遡ります。キラルスルホキシドの合成は、Andersenらが1962年に最初に報告したメントールが置換したスルフィン酸に対してグリニャール試薬や有機リチウム試薬を求核剤として用いる手法が有効なようです。


スルホキシドの不斉合成の方法論として,触媒的不斉スルホキシド化が注目されています。スルホンへの酸化、硫化物への還元、側鎖の修飾、およびスルホキシミンへのイミド化を含む速度論的分割や、アキラルなスルホキシドの非対称化のための硫黄原子上での求核置換、その他にも,MOFやホスト-ゲスト化学を応用したエナンチオ選択的認識と分離に加え、ホーナー-ワズワース-エモンズ反応を応用した方法もあります。


一方で,スルホキシドの立体化学の正確な決定には注意点があります。エナンチオ濃縮されたスルホキシドがエナンチオマーの自己不均化現象(SDE)を起こしやすいという事です。これは、後処理および精製工程で,エナンチオ純度が低下する可能性があることを意味しています。


この濃縮されると自己不均化が起こるという現象に着目すると,ある一定の分子間距離以上に近づくと,スルホキシド同士が単なる双極子相互作用以上の何か,硫黄原子上での付加/脱離を起こしているのではという気がしますね。


今度,DFT計算でシミュレートしてみようかな。


それではまた。


2018年11月22日木曜日

金属の酸化数を変えない配位子(redox non-innocent ligand)の話

より詳しく解説した続編執筆してあります。

ご無沙汰しております。

人生には色々なことがあります。
心中お察しください。

タイトルにも書きましたとおり、
金属の酸化数を変えない配位子の話をします。
遷移金属触媒を用いたカップリング反応といえば、
主に遷移金属の酸化数が0価→2価→0価と変化するサイクルの中で、
炭素-炭素結合が形成されるわけですが、
今回の主役であるredox non-innocent ligandは、
金属が酸化還元されないように配位子側が酸化還元を代わりに受けるように働きます。

そんな配位子がなんの役に立つんだと思った方がいるかもしれませんが、
触媒やケミカルバイオロジー、一方で材料科学分野でも
応用が期待されているそうです。
それこそ、磁性の分野では中心金属の酸化数が変わらないというのは、
安定性の面から非常にいいのではと思ったり。。。

上っ面の話だけで申し訳ありませんが、
また時間ができれば続きを書こうと思います。

それではまた。

2017年12月17日日曜日

oxidative addition(酸化的付加)について~その1~

酸化的付加と聞くと有機化学の人なら、真っ先にアリールハライドの遷移金属への酸化的付加を思い浮かべるでしょうか。
あるいは最近ですと、C―Hの酸化的付加でしょうか。
なにはともあれ、今日は酸化的付加について考えたことを、つらつらと書き連ねようと思う次第です。

酸化的付加って、現象としてイメージがわきにくいと思うんですけど、例えばオレフィンのシクロプロパン化って、実際には反応の前後で酸化還元は起きていないわけですが、視点を変えれば、現象として酸化的付加に近いと思うんですよね。
すなわち、ジクロロカルベンの炭素を金属、塩素を配位子とみなせば、オレフィンの金属への酸化的付加と考えることができるかと思います。
(厳密に言えば、何から何まで全く違うのですが、あくまでイメージとして統一的な解釈を目指す上での話ですのでご容赦ください)

一方で、酸化的付加を熱力学の視点で考えると、酸化的付加の前後では2分子→1分子なので、エントロピーは減少していることになります。
しかしながら、1つの結合を切断する代わりに2つの結合ができるので、そこでエンタルピーの有利さがあれば、酸化的付加は進行すると考えられますね。
あるいは、あらかじめ金属に配位子が(あるいは配位性の溶媒が)ついていれば、その配位子が解離することでエントロピーの不利さを解消していることもありますね。

まぁ、年末を前にしてそんな感じで久しぶりに少し空き時間ができたので更新してみた次第です。