2025年1月7日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0218~

論文のタイトル: Insight into the Course of the Ferrier Rearrangement Used to Obtain Untypical Diosgenyl Saponins(非典型的なジオスゲニルサポニン類の生成に用いられるフェリエ転位の過程への洞察)

著者: Grzegorz Detlaff, Magdalena Zdrowowicz, Małgorzata Paduszyńska, Magdalena Datta, Daria Grzywacz, Wojciech Kamysz, Janusz Rak, Andrzej Nowacki, Henryk Myszka, Beata Liberek*
雑誌名: The Journal of Organic Chemistry
巻: Volume 89, Issue 20, 15026–15040
出版年: 2024
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.joc.4c01756

研究の背景

  • フェリエ転位は、グリカルから2,3-不飽和グリコシドを合成するための重要な反応
  • この反応は、天然物合成や医薬品化学において広く応用されている
  • 従来のフェリエ転位は、ルイス酸触媒下で求核剤との反応により進行すると考えられている
  • しかし、反応機構の詳細は完全には解明されていない

研究の目的

  • 本研究では、フェリエ転位の過程で生成する中間体の安定性をDFT計算を用いて調査
  • 得られた知見に基づいて、不典型的なジオスゲニルサポニンを得るためのフェリエ転位の反応機構を提案
  • また、合成されたジオスゲニルサポニンの細胞毒性活性についても評価

方法

  • 6種類の異なるアセチル化グリカル(1〜6)を用いてフェリエ転位を実施
  • DFT計算を用いて、アリルオキシカルベニウムイオンとジオキソレニウムイオンの安定性を比較しました。
  • ジオスゲニンとグリカルの反応を、無水エーテルとジクロロメタンの混合溶媒中で、無水塩化鉄(III)触媒を用いて行いました。
  • 反応生成物は、フラッシュクロマトグラフィーを用いて精製しました。
  • 生成物の構造は、NMR、MALDI-TOF-MS、HRMSを用いて決定しました。
  • 細胞毒性活性は、MTTアッセイを用いて評価しました。

結果

  • DFT計算の結果、すべてのジオキソレニウムイオン(1″〜5″)は対応するアリルオキシカルベニウムイオン(1′〜5′)よりも安定であることが明らかになりました。
  • ジオキソレニウムイオンは、アリルオキシカルベニウムイオンから変換されることで生成すると考えられます。
  • ジオスゲニンの反応は、アリルオキシカルベニウムイオンを介して進行すると考えられます。
  • グリカルの種類によって、αアノマーとβアノマーの生成比が異なることが明らかになりました。
  • 末端基のエクアトリアル配向とアグリコンの擬似アキシャル配向が、半椅子配座を安定化させる要因であることが示唆されました。
  • アノマー効果とアリル効果が、2,3-不飽和グリコシドの配座選好性に影響を与えることが明らかになりました。

考察

  • DFT計算と実験結果に基づいて、フェリエ転位の反応機構が提案されました。
    • ジオキソレニウムイオンは、反応中間体として存在する可能性があります。
    • しかし、ジオスゲニンの反応は、アリルオキシカルベニウムイオンを介して進行すると考えられます。
  • グリカルの種類によって、αアノマーとβアノマーの生成比が異なるのは、アノマー効果とアリル効果のバランスが異なるためと考えられます。
  • 合成されたジオスゲニルサポニンは、いくつかの癌細胞株に対して細胞毒性活性を示しました。

結論

  • 本研究では、DFT計算を用いて、フェリエ転位の過程で生成する中間体の安定性を調べました。
  • 得られた知見に基づいて、不典型的なジオスゲニルサポニンを得るためのフェリエ転位の反応機構を提案しました。

将来の展望

    • より広範な基質を用いて、提案された反応機構の妥当性を検証する必要があります。
    • 合成されたジオスゲニルサポニンの細胞毒性活性をさらに詳しく評価する必要があります。

    TAKE HOME QUIZ

    フェリエ転位反応について
    1. フェリエ転位反応とはどのような反応ですか?
      • ルイス酸の存在下で、アセチル化されたグリカル求核剤と反応し、2,3-不飽和グリコシドを生成する反応です。
    2. フェリエ転位反応の2つの主要な経路を説明してください。各経路における中間体は何かを述べてください。
      • 第一の経路は、SN1'型求核置換反応であり、アリルオキシカルベニウムイオンを中間体とします。
      • 第二の経路は、ジオキソレニウムイオンを中間体としますが、これはアリルオキシカルベニウムイオンからの転換によって生成される可能性があります。
    3. フェリエ転位反応において、ルイス酸はどのような役割を果たしますか?プロトン酸との違いを説明してください。
      • ルイス酸は、アセチル化されたグリカルの3-OAc基を開裂させ、アリルオキシカルベニウムイオンを生成します。
      • プロトン酸は、求電子付加を引き起こし、2-デオキシグリコシドを生成する可能性があります。

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