2025年1月12日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0222~

論文のタイトル: Unified ionic and radical C-4 alkylation and arylation of pyridines(統一的イオン型およびラジカル型ピリジンのC-4アルキル化およびアリール化)

著者: Qiu Shi, Xiaofeng Huang, Ruizhi Yang, Wenbo H. Liu*
雑誌名: Chemical Science
巻: Volume15, 12442-12450
出版年: 2024
DOI: https://doi.org/10.1039/d4sc03739a

背景

1: 研究の背景

  • ピリジン骨格は医薬品、農薬、機能性材料に広く存在しており、その合成は重要である。
  • ピリジンのC–H官能基化は、複雑なピリジン誘導体を合成するための効率的な戦略である。
  • ピリジンをピリジニウムに変換し、求核付加反応を行う手法(Minisci反応)が有効である。
  • イオン性またはラジカル求核剤によるピリジニウムへの付加反応は有用だが、位置選択性の低さが課題である。
2: 未解決の問題点
  • ピリジニウムの官能基化において、C-2異性体とC-4異性体の制御不能な生成が大きな問題である。
  • 従来のC-4官能基化戦略では、ヘテロ原子リンチピンを介した中間体の形成が必要である。
  • 多様な炭素求核剤に対して統一的なプロトコルを確立することが困難であった。
3: 研究の目的と期待される成果
  • 本研究では、酵素模倣ポケット型尿素活性化試薬を用いることで、ピリジンのC-4官能基化の一般プラットフォームを開発することを目的とする。
  • イオン性およびラジカル求核剤の両方に対応できる統一的なプロトコルの開発を目指す。
  • 多様な求核剤に対し、高いC-4選択性を実現する。
  • 特に、ラジカルC-4アリール化を初めて実現することを目指す。
  • 開発されたプラットフォームは、医薬品の後期官能基化生物学的に重要な複雑な分子の調製に応用可能である。

方法

1: 研究デザイン

  • 新規な尿素活性化試薬を用いて、ピリジンのC-4位を選択的に官能基化するプロトコルを開発する。
  • Grignard試薬などのイオン性求核剤と、カルボン酸、ボロン酸などのラジカル前駆体を用いた反応を検討した。
2: 反応条件
  • ピリジンを尿素誘導体と反応させ、グアニジニウム型付加物を形成。
  • Grignard試薬などの求核剤を添加し、ピリジンのC-4位に付加させる。
  • 必要に応じて、酸化的再芳香族化を行い、目的のピリジン誘導体を生成。
  • ラジカル反応の場合、追加の再芳香族化ステップは不要である。
3: 主要な評価項目と測定方法
  • 生成物の収率は、単離された純粋な化合物の収率として評価した。
  • 異性体比(C-4/C-2)は、1H NMRおよびGC-MSを用いて決定した。
  • 結晶構造は、単結晶X線回折によって解析した。

結果

1: Grignard試薬を用いたC-4アルキル化

  • 多様なGrignard試薬(第一級、第二級、第三級、アリール、ヘテロアリール)が、高い収率とC-4選択性で反応した。
  • メチルGrignard試薬のような小さい求核剤でも、高いC-4選択性を示した。
2: その他のイオン性求核剤を用いたC-4官能基化
  • 有機亜鉛試薬、TMSCN、有機リチウム試薬、シリルケテンアセタール、ニトロナート、マロネートなど、多様なイオン性求核剤が利用可能だった。
  • 有機リチウム試薬を用いたC-4アリール化も初めて実現した。
3: ラジカル前駆体を用いたC-4官能基化
  • 多様なカルボン酸、ボロン酸、アルカンをラジカル前駆体として用いることができた。
  • 特に、C-4選択的なラジカルアリール化を初めて達成した。

考察

1: 主要な発見

  • 本研究で開発した尿素活性化試薬は、ピリジンを安定かつ高度に求電子的なピリジニウムに変換できる。
  • このピリジニウムは、C-2位とC-6位が保護されており、C-4位への求核攻撃を促進する
  • このプラットフォームは、イオン性およびラジカル求核剤の両方に対応できる。
2: 意義と重要性
  • 従来の課題であったC-4選択的な官能基化を、多様な求核剤に対して実現した。
  • 特に、ラジカルC-4アリール化は、従来の方法では困難であった。
  • このプロトコルは、医薬品や生物活性分子の合成に有用である。
3: 先行研究との比較
  • 先行研究では、特定の求核剤にしか適用できない、またはC-2位との異性体混合物が生成されるといった問題があった。
  • 本研究では、多様な求核剤に対し、高いC-4選択性を実現した。
  • Minisci反応における位置選択性の問題も解決している。

結論

  • 本研究では、置換された尿素を活性化試薬として用いることで、ピリジンのC-4選択的な官能基化を実現した。
  • このプロトコルは、イオン性およびラジカル求核剤の両方に対応でき、アルキル化とアリール化が可能である。
  • 多様な求核剤が利用可能で、高いC-4選択性が得られる。
  • 特に、C-4選択的なラジカルアリール化を初めて達成した。

将来の展望

        • このプロトコルの有機合成における利用が期待される。
        • C-4ヘテロ官能基化他のヘテロ芳香族への応用が期待される。

        用語集

        • Minisci反応: ピリジンの求電子攻撃に対して、炭素ラジカルを付加する反応
        • Grignard試薬: 有機マグネシウム化合物で、求核剤として使用される
        • 求核剤: 電子を豊富に持ち、正に帯電した原子に結合する試薬
        • 求電子剤: 電子が不足しており、電子を求めて反応する試薬
        • HSAB理論: 酸と塩基の硬さ(hard)と軟らかさ(soft)で反応性を説明する理論
        • TMSCN: シアン化トリメチルシリル

        TAKE HOME QUIZ

        質問1: 本研究で開発された活性化試薬を使用することで、ピリジンはどのような状態に変換されますか? (a) 求核的なピリジン (b) 求電子的なピリジニウム (c) ラジカル中間体 (d) キレート化合物

        質問2: 開発された活性化試薬は、ピリジニウムのどの位置を保護しますか? (a) C-3位とC-5位 (b) C-2位とC-6位 (c) C-4位のみ (d) すべての位置

        質問3: イオン性求核剤の例として、以下のうち適切でないものはどれですか? (a) Grignard試薬 (b) 有機亜鉛試薬 (c) カルボン酸 (d) シリルケテンアセタール

        質問4: ラジカル前駆体として利用できるのは、以下のうちどれですか? (a) カルボン酸 (b) アルデヒド (c) ケトン (d) アミド

        質問5: 本研究で初めて達成されたC-4官能基化は何ですか? (a) C-4アルキル化 (b) C-4シアノ化 (c) C-4ラジカルアリール化 (d) C-4ハロゲン化

        回答:

        1. (b) 求電子的なピリジニウム
        2. (b) C-2位とC-6位
        3. (c) カルボン酸
        4. (a) カルボン酸
        5. (c) C-4ラジカルアリール化

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