著者: Tobias Krückel, Steffen Schauerte, Jinbo Ke, Marcel Schlottmann, Sandra Bausch, Xiaofei Chen, Christoph Räuber, Igor d’Anciães Almeida Silva, Thomas Wiegand, Markus Albrecht
雑誌: Chemistry—A European Journal
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
階層的自己組織化は、複雑な機能構造を単純な構成ブロックから形成する重要な過程
チタン(IV)ベースの階層的ヘリケート (Li[Li3L6Ti2])は、溶液中で単量体/二量体平衡を示す
この平衡の熱力学を研究することで、溶媒効果や分散相互作用を解明できる
2: 未解決の問題点
既存研究では1H NMRによるモノマー/二量体比の決定が一般的
1H NMRでは配位子混合物から生じる統計的ヘリケート混合物の評価が困難
7Li NMRはヘリケート内部と外部のリチウムイオンを区別できるため、上記問題解決のための有力なツール
3: 研究の目的
7Li NMRによる二量体化定数および平均二量体化定数の決定
固体NMRによるリチウムイオン環境の解析
可逆的圧縮/伸長ヘリケートの7Li NMRによる評価
方法
1: 研究デザイン
様々な置換基を有するカテコール配位子からヘリケートを合成
溶液および固体NMRを用いてリチウムイオン環境を評価
2: 試料
Li[Li3L6Ti2], Li[Li3L'3Ti2] (L'=ブリッジ型ジカテコール配位子)
3: 評価法
7Li NMRによる二量体化定数決定
•結合リチウム(低磁場)と溶媒和リチウム(高磁場)のシグナル強度比からモノマー/二量体比を決定
•既知濃度からモノマー/二量体比を算出し、二量体化定数(Kdim)を算出
固体NMRおよび可逆ヘリケート評価
•7Li 固体高分解能NMR(SATRAS実験)によりリチウムイオン四重極相互作用を調べた
•リチウム周辺の構造情報を得る
•ジカテコール配位子を用いて圧縮型と伸長型ヘリケートを評価
結果
7Li溶液NMR
•溶液中で内部リチウムと外部リチウムのシグナルが明確に分離
•シグナル分離(Δδ)は溶媒と置換基に依存
ex1. アルキルエステル < ベンジルエステル
ex2. 電子密度の増加に伴いΔδも増加
二量体化定数(Kdim)
•シグナル強度比からKdimを決定
•1H NMRとの良好な一致
•配位子混合物でも平均Kdimが算出可能
固体NMR
•固体NMRでも内部リチウムと外部リチウムの化学シフトが明確に区別可能
•四重極相互作用から結合の強さや動的挙動が推定可能
圧縮/伸長ヘリケート
•16員環ブリッジ配位子を用いると、圧縮型と伸長型ヘリケートが共存
•7Li NMRで両種のシグナル強度比から、圧縮/伸長平衡が評価可能
考察
1: 7Li NMRの有効性
7Li NMRは階層的ヘリケートのモノマー/二量体平衡を簡便に評価できる
配位子混合物に対する平均Kdimの決定も可能
内部/外部リチウム環境の詳細が固体NMRから得られる
可逆的圧縮/伸長ヘリケートの動的平衡も追跡可能
2: 新たな知見
ヘリケート内リチウムイオン環境の違いが化学シフトに反映
二量体化定数は配位子置換基や溶媒に大きく依存
配位子混合物中で最も不安定な配位子がKdimを低下させる
3: 限界点
NMR測定には高濃度試料が必要
混合物のシグナル重なりが解析を困難にする可能性
圧縮/伸長ヘリケートの動的平衡の解析は定性的
結論
7Li NMRはヘリケートの単量体/二量体平衡を定量的に評価するのに優れた手法
配位子混合物からの平均二量体化定数決定も可能
リチウム周辺の詳細な構造情報が得られる
動的ヘリケートシステムの評価にも有用
将来の展望
今後、より複雑な系への応用が期待される
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