2024年4月23日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0003~

論文のタイトル: 7Li NMR Spectroscopy: a Tool for Determining DimerizationConstants and Averaged Dimerization Constants of theMonomer/Dimer Equilibrium of Hierarchical Helicates

著者: Tobias Krückel, Steffen Schauerte, Jinbo Ke, Marcel Schlottmann, Sandra Bausch, Xiaofei Chen, Christoph Räuber, Igor d’Anciães Almeida Silva, Thomas Wiegand, Markus Albrecht

雑誌:  Chemistry—A European Journal

出版年: 2024年


背景

1: 研究の背景

階層的自己組織化は、複雑な機能構造を単純な構成ブロックから形成する重要な過程

チタン(IV)ベースの階層的ヘリケート (Li[Li3L6Ti2])は、溶液中で単量体/二量体平衡を示す  

この平衡の熱力学を研究することで、溶媒効果や分散相互作用を解明できる


2: 未解決の問題点

既存研究では1H NMRによるモノマー/二量体比の決定が一般的

1H NMRでは配位子混合物から生じる統計的ヘリケート混合物の評価が困難

7Li NMRはヘリケート内部と外部のリチウムイオンを区別できるため、上記問題解決のための有力なツール


3: 研究の目的 

7Li NMRによる二量体化定数および平均二量体化定数の決定

固体NMRによるリチウムイオン環境の解析  

可逆的圧縮/伸長ヘリケートの7Li NMRによる評価


方法

1: 研究デザイン

様々な置換基を有するカテコール配位子からヘリケートを合成

溶液および固体NMRを用いてリチウムイオン環境を評価


2: 試料

Li[Li3L6Ti2], Li[Li3L'3Ti2] (L'=ブリッジ型ジカテコール配位子)


3: 評価法

7Li NMRによる二量体化定数決定  

•結合リチウム(低磁場)と溶媒和リチウム(高磁場)のシグナル強度比からモノマー/二量体比を決定

•既知濃度からモノマー/二量体比を算出し、二量体化定数(Kdim)を算出  


固体NMRおよび可逆ヘリケート評価

•7Li 固体高分解能NMR(SATRAS実験)によりリチウムイオン四重極相互作用を調べた

•リチウム周辺の構造情報を得る

•ジカテコール配位子を用いて圧縮型と伸長型ヘリケートを評価


結果

7Li溶液NMR  

•溶液中で内部リチウムと外部リチウムのシグナルが明確に分離

•シグナル分離(Δδ)は溶媒と置換基に依存

    ex1. アルキルエステル < ベンジルエステル

    ex2. 電子密度の増加に伴いΔδも増加


二量体化定数(Kdim)

•シグナル強度比からKdimを決定

•1H NMRとの良好な一致   

•配位子混合物でも平均Kdimが算出可能


固体NMR

•固体NMRでも内部リチウムと外部リチウムの化学シフトが明確に区別可能

•四重極相互作用から結合の強さや動的挙動が推定可能


圧縮/伸長ヘリケート

•16員環ブリッジ配位子を用いると、圧縮型と伸長型ヘリケートが共存  

•7Li NMRで両種のシグナル強度比から、圧縮/伸長平衡が評価可能  


考察

1: 7Li NMRの有効性

7Li NMRは階層的ヘリケートのモノマー/二量体平衡を簡便に評価できる

配位子混合物に対する平均Kdimの決定も可能

内部/外部リチウム環境の詳細が固体NMRから得られる  

可逆的圧縮/伸長ヘリケートの動的平衡も追跡可能


2: 新たな知見 

ヘリケート内リチウムイオン環境の違いが化学シフトに反映

二量体化定数は配位子置換基や溶媒に大きく依存  

配位子混合物中で最も不安定な配位子がKdimを低下させる


3: 限界点

NMR測定には高濃度試料が必要

混合物のシグナル重なりが解析を困難にする可能性  

圧縮/伸長ヘリケートの動的平衡の解析は定性的


結論

7Li NMRはヘリケートの単量体/二量体平衡を定量的に評価するのに優れた手法

配位子混合物からの平均二量体化定数決定も可能

リチウム周辺の詳細な構造情報が得られる  

動的ヘリケートシステムの評価にも有用


将来の展望

今後、より複雑な系への応用が期待される

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