2024年4月28日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0008~

論文のタイトル: A Tamed Intermediate: The Pivotal Role of Cp* in Hypercoordinate Boron Cation Catalysis

著者: Hsi-Ching Tseng, Po-Han Chen, Yi-Hung Liu, Zhen Hua Li, Ching-Wen Chiu

雑誌: Organometallics

出版年: 2024年


背景 

1: 研究の背景

ボレニウムイオンは高い反応性を示すが、分解しやすい

二配位のボリニウムイオンの合成的応用は制限されている  

著者らは以前、[Cp*B-Mes]+がマスクされたボリニウムイオンとして機能することを示した


2: 未解決の問題 

[Cp*B-Mes]+のような超配位ホウ素カチオンの触媒作用のメカニズムは不明

触媒中間体の構造や役割が解明されていない


3: 研究の目的

[Cp*B-Mes]+によるケトンのシアノシリル化反応を調査し、触媒機構を解明

Cp*配位子の役割を明らかにする


方法

1: 研究デザイン 

実験的および計算化学的手法を用いた触媒反応の機構解明

[Cp*B-Mes]+触媒によるケトン/アルデヒドのシアノシリル化反応


2: 評価法

生成物の単離、構造解析(NMR、X線構造解析)

速度論的解析


3: 理論計算

DFT計算による中間体構造と電子状態の解析

自然電荷分布解析による電荷分布の検討


結果

1: 触媒活性

[Cp*B-Mes]+はケトン/アルデヒドのシアノシリル化を高効率に触媒する

TMSCNと反応して四配位ホウ素イオン[Cp*BMes(TMSCN)2]+を生成


2: 中間体の単離と構造解析  

[Cp*BMes(TMSCN)2]+の単結晶X線構造解析に成功

TMSCN配位により五員環からη2配位のCp*配位子に変化


3: 反応速度論

速度は基質とTMSCNの濃度に関して1次

実測の活性化エンタルピーは19.9 kcal/mol 


考察

1: Cp*配位子の役割

中間体[Cp*BMes(TMSCN)]+におけるCp*のη2配位が重要

Cp*配位により中間体の正電荷が減少し、分解を抑制


2: 先行研究との比較  

[Mes2B]+はTMSCNと反応してB-C結合が切断される

Cp*配位子が強い正電荷の局在化を防ぐ


3: 計算化学的解析

[Cp*BMes(TMSCN)]+と[Mes2BMes(TMSCN)]+の電荷分布を比較

Cp*配位子がB-C結合の極性を低下させる


4: 反応機構

実験結果と計算から、協奏的機構が示唆される

[Cp*BMes(TMSCN)]+がカチオン種の実際の触媒


5: 限界点

他の塩基やリン配位子の効果は検討されていない

他の反応への適用範囲は不明


結論

超配位ホウ素カチオン[Cp*B-Mes]+はケトン/アルデヒドのシアノシリル化反応の前駆触媒

Cp*配位子はボレニウムイオン中間体を安定化し、触媒活性を向上 

新規高活性ホウ素カチオン触媒開発への指針を提供


今後の課題

他の反応への応用と一般性の評価

より実用的な配位子設計指針の確立

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