論文のタイトル: A Tamed Intermediate: The Pivotal Role of Cp* in Hypercoordinate Boron Cation Catalysis
著者: Hsi-Ching Tseng, Po-Han Chen, Yi-Hung Liu, Zhen Hua Li, Ching-Wen Chiu
雑誌: Organometallics
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
ボレニウムイオンは高い反応性を示すが、分解しやすい
二配位のボリニウムイオンの合成的応用は制限されている
著者らは以前、[Cp*B-Mes]+がマスクされたボリニウムイオンとして機能することを示した
2: 未解決の問題
[Cp*B-Mes]+のような超配位ホウ素カチオンの触媒作用のメカニズムは不明
触媒中間体の構造や役割が解明されていない
3: 研究の目的
[Cp*B-Mes]+によるケトンのシアノシリル化反応を調査し、触媒機構を解明
Cp*配位子の役割を明らかにする
方法
1: 研究デザイン
実験的および計算化学的手法を用いた触媒反応の機構解明
[Cp*B-Mes]+触媒によるケトン/アルデヒドのシアノシリル化反応
2: 評価法
生成物の単離、構造解析(NMR、X線構造解析)
速度論的解析
3: 理論計算
DFT計算による中間体構造と電子状態の解析
自然電荷分布解析による電荷分布の検討
結果
1: 触媒活性
[Cp*B-Mes]+はケトン/アルデヒドのシアノシリル化を高効率に触媒する
TMSCNと反応して四配位ホウ素イオン[Cp*BMes(TMSCN)2]+を生成
2: 中間体の単離と構造解析
[Cp*BMes(TMSCN)2]+の単結晶X線構造解析に成功
TMSCN配位により五員環からη2配位のCp*配位子に変化
3: 反応速度論
速度は基質とTMSCNの濃度に関して1次
実測の活性化エンタルピーは19.9 kcal/mol
考察
1: Cp*配位子の役割
中間体[Cp*BMes(TMSCN)]+におけるCp*のη2配位が重要
Cp*配位により中間体の正電荷が減少し、分解を抑制
2: 先行研究との比較
[Mes2B]+はTMSCNと反応してB-C結合が切断される
Cp*配位子が強い正電荷の局在化を防ぐ
3: 計算化学的解析
[Cp*BMes(TMSCN)]+と[Mes2BMes(TMSCN)]+の電荷分布を比較
Cp*配位子がB-C結合の極性を低下させる
4: 反応機構
実験結果と計算から、協奏的機構が示唆される
[Cp*BMes(TMSCN)]+がカチオン種の実際の触媒
5: 限界点
他の塩基やリン配位子の効果は検討されていない
他の反応への適用範囲は不明
結論
超配位ホウ素カチオン[Cp*B-Mes]+はケトン/アルデヒドのシアノシリル化反応の前駆触媒
Cp*配位子はボレニウムイオン中間体を安定化し、触媒活性を向上
新規高活性ホウ素カチオン触媒開発への指針を提供
今後の課題
他の反応への応用と一般性の評価
より実用的な配位子設計指針の確立
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