2024年4月27日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0007~

論文のタイトル: Intramolecular Diels-Alder Reaction of a Biphenyl Group in a Strained meta-Quaterphenylene Acetylene

著者: Komal Mittal, Ashley V. Pham, Amanda G. Davis, Abigail D. Richardson, Clement De Hoe, Ryan T. Dean, Vi Baird, Ashley Ringer McDonald, and Derik K. Frantz

雑誌: Journal of Organic Chemistry

出版年: 2023


背景

1: 研究の背景

ペリレンなどの大きなπ系化合物の湾曲領域は、高温でジエノフィルと Diels-Alder 付加環化反応を起こす

この反応は、より大きなπ系の形成に有用である

しかし、この反応性はペリレンなどの特殊な化合物に限られていた


2: 未解決の問題点

二環式のビフェニル誘導体においては、同様の Diels-Alder 反応性が観測されていない

ビフェニルの反応は、より高い活性化エネルギーを必要とすると予測されている  


3: 研究の目的

歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物のビフェニル部位が、高温で分子内 Diels-Alder 反応を起こすことを実証する

この反応の熱力学的および速度論的な特性を調べる


方法

1: 研究デザイン

有機合成と分光分析による実験的研究


2: 生成物

歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物(6)およびその誘導体 6-Me


3: 反応性の評価  

化合物 66-Me を高温溶媒中で加熱し、生成物を分析

1H NMR を用いた反応経路の追跡


4: 理論計算

DFT計算により、反応機構と活性化自由エネルギーを算出し、実験結果と比較


結果

1: 化合物 6 の反応

化合物 6 を高温で加熱すると、ベンズ[e]インデノ[1,2,3-hi]アセフェナントリレン 7 が生成

1H NMR で反応の追跡と生成物の同定が可能


2: 化合物 6-Me の反応速度論

220°C で 6-Me から 7-Me への反応を追跡 

一次反応速度定数 k = ∼ 1 × 10-5 s-1

活性化ギブズ自由エネルギー ΔG‡ ≈ 40-41 kcal/mol


3: 理論計算の結果

協奏的な [4+2] 環化付加-脱 H2 機構が最も妥当

計算された活性化自由エネルギーは実験値と良い一致を示す


考察

1: Diels-Alder 反応の発見

初めてビフェニル誘導体で湾曲領域の Diels-Alder 反応性を実証した

ペリレンなど大きなπ系と同様の反応性を示す  


2: 反応の駆動力

高い歪みエネルギーが反応の駆動力となっている

生成物は非常に安定であり、大きな生成熱を伴う


3: 理論との比較

計算結果は実験値をよく再現しており、提案した機構を支持


4: 先行研究との比較 

ビフェニル誘導体の Diels-Alder 反応は初の報告例

大きなπ系への拡張に向けた新たな方法論となる可能性


5: 限界点

高温条件が必要で、基質の適用範囲が限定される

生成物の利用法については未検討


結論

歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物のビフェニル部位が、分子内 Diels-Alder 反応により環拡大化合物を与えることを実証  

反応は高温条件で進行し、計算化学的にも支持された[4+2]環化付加-脱離機構が妥当

この反応は、ビフェニル誘導体に対する新たなπ系拡張手法を提供


将来の展望

より温和な条件での反応や、生成物の有用性の検討が、今後の課題

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