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2025年5月31日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0238~

論文のタイトル: Rapid Synthesis of the Spiroketal Subunit of Neaumycin B: Stereochemical Aspects of Singly Anomeric Spiroketals and Proposal for a Stereocenter Reassignment

著者: Anna E. Healy, Marcus D. Van Engen, Nicholas A. Cinti, and Paul E. Floreancig* 
雑誌名: Organic Letters
巻: Volume 26, Issue 50, 10774–10779
出版年: 2024
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.orglett.4c03751

背景

1: ネアウマイシンBとは

  • ネアウマイシンB(1)は、2015年に微細胞子菌Actinoplanes sp. ATCC33076から単離されたマクロ環状ポリケチドです。
  • MRSAに対するラモプラニンの抗生物質効果を高めることが示されています。
  • また、U87神経膠芽腫細胞に対して例外的かつ選択的な細胞毒性 potency を示します。
  • 天然源からの入手は、その化学的不安定性により限られています。
  • 生物活性、天然存在量の低さ、合成の難しさから、ネアウマイシンBは化学合成の魅力的な標的となっています。

2: 未解決の構造問題

  • ネアウマイシンBの単離報告では、原子の連結性は記述されましたが、立体化学情報は含まれていませんでした。
  • その後の研究で提案された立体異性体構造が示されました (Figure 1)。
  • しかし、発表された構造に対して行われた2つの全合成からのスペクトルデータは、原子の連結性は確認できそうでしたが、報告された構造のものと一致しませんでした。
  • これは、ネアウマイシンBの実際の立体構造が依然として謎であることを示しています。
  • さらに、報告された構造は細胞毒性活性を欠いています。

3: 研究の目的

  • したがって、1の構造の謎を解くためには、さらなる合成努力が必要です。
  • これは、その抗神経膠芽腫活性に関するさらなる研究に不可欠です。
  • 本研究は、単一アノマー型スピロケタルの立体化学的側面と、立体中心の再割り当ての提案に焦点を当てています。
  • 目標は、天然物の構造における notable なサブユニットであるスピロケタールコアへの迅速かつ収束的なアプローチを報告することです。
  • これにより、2つの異性体的な単一アノマー型スピロケタルの形成という、まれにしか記述されない結果の起源を記述します。
  • 最終的に、この研究から得られた知見に基づいて、天然物中の立体中心に対する修正を提案します。

方法

1: 合成戦略の概要

  • 本研究では、ネアウマイシンBのスピロケタールユニットに対する迅速かつ収束的なアプローチを採用しました。
  • 主要な断片結合段階として、Mukaiyamaアルドール反応を利用しています。
  • この戦略の魅力的な要素は、断片結合プロセスで生成物に関連する立体中心を設定できる点です。
  • このアプローチは、立体選択的なアルドール断片結合から生じる基質からの脱水スピロケタール形成を経て進みます (Scheme 1)。
  • これは、単一アノマー構造形成のためのヘテロDiels-Alder/C-H結合開裂ベースの以前のアプローチが立体制御に難があったため変更されました。

2: 断片合成(アルデヒド)

  • アルデヒド断片の合成はScheme 2に示されています。
  • アルデヒド4は、1,3-プロパンジオールから容易に2段階で入手可能です。
  • Leightonのその場クロチル化条件下で5が得られ、良好なエナンチオ選択性を示しました。
  • 結果として生じるヒドロキシ基の保護基選択が、下流のアルドール反応の成功に不可欠であり、p-メトキシベンジル基が最適でした。
  • このシーケンスは、Johnson-Lemieux酸化によりアルデヒド7を形成して完了しました。

3: 断片合成(ケトン)

  • ケトン断片の構築はScheme 3に示されています。
  • 5-ヘキセン-1-オールのSwern酸化で調製されたアルデヒド8とプロピオニルクロリドのエナンチオおよびジアステレオ選択的シクロ付加により、β-ラクトン9を形成しました。
  • この段階は、多グラムスケールで実施可能で、立体異性体の形成は検出されませんでした。
  • ラクトン開環、Weinrebアミド形成、nBuLi過剰量添加によりケトン10が得られました。
  • NaBH4とEt2BOMeを用いたケトンの選択的syn-還元により、1,3-ジオールが形成され、その後シリル化により11が得られました。
  • TsujiバリエーションのWacker酸化により、ケトン12が得られました。

4: 断片結合と環化

  • 断片(アルデヒド7とケトン12)はMukaiyamaアルドール反応により結合されました (Scheme 4)。
  • ケトン12からのエノリルシラン13とアルデヒド7へのBF3・OEt2を用いた暴露により、アルドール生成物として8:1のジアステレオマー混合物(14)が得られました。
  • 14のアシル化により15を形成し、PMBエーテルはDDQにより切断され、ヘミケタール16となりました。
  • 16をCSAとMeOHで処理すると、脱保護と環化が迅速に進行し、分離可能な2:1のスピロ環混合物が得られました。
  • これらの種は個別にパーアシル化され、構造決定を容易にしました。これにより、17と18がそれぞれ高収率で得られました。

結果

1: 合成されたスピロケタルの特徴

  • スピロ環化により、見かけ上1つの立体中心が形成されるように見えますが、2つ以上の立体異性体が可能なのは、スピロ環[5.5.1]系が軸不斉であり、2つの立体発生単位が形成されるためです。
  • 我々の合成では、2つのスピロケタール異性体(17と18)が2:1の混合物として分離されました。
  • これらの異性体は、単一アノマー型でした。
  • Figure 2に示される二重アノマー型異性体(3)は単離されませんでした。
  • これはおそらく、軸方向に分岐鎖が存在することに伴うエネルギー的なペナルティによるものです。
  • スポンジスタチンの合成でも2つの単一非アノマー型スピロケタールの単離が報告されていますが、詳細な議論は少なく、他にはあまり報告されていません。

2: スペクトル分析による構造決定

  • 17と18を1H NMRおよびNOESY実験により分析しました (Table 1)。
  • 多くの主要な水素は、非常に類似した分裂パターンとカップリング定数を示しましたが、化学シフトとNOEパターンは著しく異なっていました。
  • 分裂パターンの類似性は、スピロケタールユニット上のすべての置換基がequatorial配向であることを明確に示しました。
  • これは、生成物の1つがFigure 2の構造3に関連する二重アノマー型異性体である可能性を排除します。
  • このシーケンスにおける主生成物(17)は、天然物と合成物から得られたスペクトルデータ(化学シフトとNOE)に非常に近いものを示しました。
  • 副生成物(18)は、代替の単一アノマー型異性体と一致していました。

3: 重要な化学シフトの差異

  • 化合物17と18の化学シフトにおける顕著な違いは、酸素原子とジアキシャルな関係にある水素に見られます。
  • Table 1(ネアウマイシンBナンバリング)によると、17中のC25とC27の水素は、18に比べてそれぞれ1.17および0.18 ppm downfieldに位置しています。
  • 一方、17中のC33の水素は18に比べて0.7 ppm upfieldに位置しています。
  • 17中のC28のequatorial水素も立体異性体の強い指標であり、18に比べて0.67 ppm downfieldに位置しています。
  • 17における異常なdownfieldシフト(天然物でも見られる)の起源は不明ですが、この水素はアノマー配向の酸素とgauche関係にあることが指摘されています。
  • これらのスペクトルの違いは、将来のスピロケタール構造を区別するための貴重な出発点となるはずです。

考察

1: スピロ環異性体の起源

  • 構造17と18の類似性は、エネルギー的にほぼ同等であるべきであることを示唆しており、これはそれらが2:1の混合物として形成されることと一致しています。
  • 純粋な18をスピロ環化条件下に置くと、17と18の2:1混合物への遅い変換が見られました。
  • しかし、平衡化は環化よりもはるかに遅いため、混合物は速度論的制御から生じることを示唆しています。
  • 立体異性体は、ヘミケタール16から異なる経路を介した速度論的に制御された混合物として生成されると仮定しました (Scheme 5)。
  • 経路Aはオキソカルベニウムイオン19を経て進行し、立体電子的により好ましいaxial軌道からのアルコール付加により20を生成します(アノマー位で正味の立体化学保持)。
  • 代替経路(経路B)はアノマー中心での立体化学的反転を必要とし、SN2経路または水がオキソカルベニウムイオンと静電的に関連している中間体(21)からの立体制御を伴うSN1経路を介して発生し、22を生成します。

2: C34立体中心の再割り当ての可能性

  • 合成された主生成物17のNOE分析は、天然物のスピロ環サブユニットのそれと強い一致を示しましたが、周辺部には顕著な違いが見られました。
  • 例えば、Fenicalらは、ネアウマイシンBについて、C35とC25およびC27の水素間にNOEを報告しましたが、これは17では観察されませんでした。
  • Amos B. Smith III先生の論文も、合成された1と天然物の間で、C35領域に significant な化学シフトの差異を示していました。
  • これは、この領域が立体化学的誤りの潜在的な場所である可能性を示しています。
  • C34の立体化学的配置を反転させることで、好ましい側鎖のコンフォメーションを変化させ、この問題を解決できると仮説を立てました。

3: C34エピマーの合成と分析

  • この仮説を検証するため、必要な立体化学的配置を確立するためにanti-アルドール反応を行いました (Scheme 6)。
  • HeathcockのEvansアルドール反応バリアントがこの目的に適していることが判明しました。
  • ホウ素エノラート23をアルデヒド24とカップリングさせ、Weinrebアミド25を合成しました。
  • 続く一連の反応(BuLi添加、1,3-syn-ケトン還元、シリルエーテル形成)により26が得られました。
  • 終末アルキンのメチルケトンへの変換には、吉田らの銅触媒ボリル化条件を用いる経路が、酸に敏感なアルキンの水和に望ましい方法であることが判明しました。
  • 得られたケトン27からのエノリルシラン形成後、7とのBF3・OEt2促進アルドール反応により28が得られました。
  • 新たに生成したアルコールをアセテートに変換後、PMBエーテル切断および酸触媒環化により、スピロケタール29と30が相互変換可能なジアステレオマーの分離可能な2.5:1混合物として得られました。主なジアステレオマーをアセチル化して31としました。

4: C34エピマーのスペクトルとコンフォメーション

  • 化合物31のNOESY分析は、天然物で観察されるが17では見られない重要な関係性を明らかにしました。
  • 特に、H35がH25およびH27とのNOEを示しました。
  • これらの水素は平面構造では離れているように見えますが、Figure 3に示すように、ダイヤモンド格子に優先コンフォメーションを重ね合わせることで、その近接性が説明されます。
  • H34をH33に対してanti配向に置くことは、アルキル基と環の間のgauche相互作用を最小限に抑えるために望ましいです。
  • このコンフォメーションは、H35とH25およびH27の間の近接性を示しています。
  • 17の同様のコンフォメーションでは、H35はH25およびH27から離れています。

5: スペクトルと生物活性への示唆

  • 特筆すべきは、31におけるH35の化学シフトが、17のH35と比較して0.28 ppm downfieldに位置していることです。
  • これは、天然物とSmithの合成物のそれぞれの化学シフトの差異(Δδ = 0.27 ppm)と驚くほど一致しています。
  • このdownfieldシフトは、酸素原子との1,3-ジアキシャル関係にあるスピロ環内の水素との空間的類似性とも一致しています。
  • これは、分子のこの領域が rigid なコンフォメーションを持つことを意味するのではなく、コンフォメーションバイアスの変化を示唆しています。
  • この変化は、最初に提案された構造が生物活性を欠くことの一因である可能性があり、メチル基がコンフォメーション変化を誘導する能力を示しています。
  • Supporting Informationには、17、31、天然ネアウマイシンB、合成ネアウマイシンB間の主要なNMR信号を比較した表が含まれています。

6: 限界点

  • 本研究はネアウマイシンBのスピロケタールサブユニットに焦点を当てています。
  • 報告された構造のすべての立体中心を検証または修正したわけではありません。
  • マクロ環の立体化学的割り当てには、追加の誤りがほぼ確実に存在すると考えられます。
  • 合成されたスピロケタール異性体(17と18、または29と30)は、平衡状態にあることが示されていますが、これが天然物の構造決定にどのように影響するかは完全に解明されていません。
  • 合成中間体の不安定性により、完全な特性評価ができなかった段階もあります(例:ヘミケタール16)。

結論

      • Mukaiyamaアルドール反応を介して断片を結合させ、生成物に関連する立体中心を生成する、ネアウマイシンBスピロケタールへの収束的アプローチを開発しました。
      • スピロ環化は、中心キラル立体中心と軸不斉立体発生単位の両方を生成するため、2つの単一アノマー型立体異性体のいずれかで形成される可能性があります。
      • 相互変換可能なスピロケタールの分光分析は、明確な化学シフトとNOEパターンを示し、容易な構造割り当てを可能にします。
      • 初期構造におけるNOESY相関の不足が、スピロ環のC33への側鎖における立体化学的誤割り当ての可能性を探るきっかけとなりました。
      • C34における初期の立体化学的割り当てを反転させた結果得られた分光データは、天然物のデータとはるかに整合性が高いことが示されました。
      • 本研究は、分子の一領域を修正し、天然物の構造解明における化学合成の重要な役割を改めて示すものです。

      将来の展望

              • 構造の謎を解明することは、ネアウマイシンBの抗神経膠芽腫活性に関するさらなる研究のために不可欠です。

              TAKE HOME QUIZ

              1. ネアウマイシン B の構造の中で、本論文が合成に焦点を当てている注目すべき部分はどこですか?また、その構造単位は分光データからどのようなタイプであることが示唆されていますか?
              2. 報告された合成経路で、スピロケタルの形成時に得られた主なスピロサイクル異性体は何種類でしたか?それらは「単一アノマー」型ですか、それとも「二重アノマー」型ですか? なぜ2種類以上の異性体が得られる可能性があるのですか?
              3. 合成されたスピロサイクル異性体を分析し、その構造を決定するために使用された重要な分光分析手法は何ですか? これらの分析から、主要な異性体と天然物の構造のどの点が一致していましたか?
              4. 著者らがネアウマイシン B の特定の立体中心の再アサインメントを提案した主な理由は何ですか? 具体的に、どの炭素原子の立体化学に誤りがあると仮説を立てましたか?
              5. 立体中心の配置を反転させて合成した化合物(31)が、天然物の分光データとより一致することを示した重要な分光学的観測は何ですか?

              解答

                1. 本論文が合成に焦点を当てている注目すべき部分は、ネアウマイシン Bの構造におけるスピロケタルのコアユニットです。この構造単位は、天然物の分離および全合成において得られた分光データから、単一アノマー型(structure 2)であることが示唆されています。二重アノマー異性体(structure 3)ではありません。

                2. 報告された合成経路で、スピロケタル形成時には2種類のスピロサイクル異性体が生成しました。これらの異性体はどちらも単一アノマー型であり、二重アノマー異性体は単離されませんでした。2種類以上の異性体が得られる可能性があるのは、スピロ環化プロセスが中心キラルな立体中心と軸キラルな立体生成単位の両方を生成するためです。Spiro[5.5.1]環系が軸キラルであるため、スピロ環化時に2つの立体生成単位が形成されます。

                3. 合成されたスピロサイクル異性体(17および18)を分析し、その構造を決定するために使用された重要な分光分析手法は、1H NMRおよびNOESY実験です。これらの分析から、主要な異性体(17)は、天然物または合成物から得られた化学シフトとNOEパターンが天然物と密接に一致することが明らかになりました。特に、スピロケタルユニット上の全ての置換基がエクアトリアル配向にあることが示され、これが主要な異性体と天然物の構造で一致する点でした。

                4. 著者らがネアウマイシン Bの特定の立体中心の再アサインメントを提案した主な理由は、天然物のスピロサイクル側鎖部分におけるNOEパターンが、合成した主要なスピロサイクル異性体(17)のそれと一致しなかったためです。具体的には、天然物で観察されたC35水素とC25およびC27水素間のNOEが、化合物17では観察されませんでした。この観察に基づき、著者らはC34炭素原子の立体化学に誤りがあると仮説を立てました。

                5. C34の立体中心の配置を反転させて合成した化合物(31)が、天然物の分光データとより一致することを示した重要な分光学的観測は、化合物31における特定のNOEパターンと化学シフトです。特に、化合物31のH35がH25とH27に対してNOEを示すことが観察され、これは天然物で観察される関係性です。また、化合物31のH35の化学シフトが、化合物17のH35と比較して0.28 ppm downfieldに位置しており、これは天然物とSmithらの合成物質におけるそれぞれの化学シフト差(Δδ = 0.27 ppm)と非常に一致しています。これらの観測は、C34の立体化学を反転させた構造が、天然物の分光データをより正確に反映していることを示しています。

                2025年5月10日土曜日

                Catch Key Points of a Paper ~0234~

                 論文のタイトル: 1,3-Dipolar cyclisation reactions of nitriles with sterically encumbered cyclic triphosphanes: synthesis and electronic structure of phosphorus-rich heterocycles with tunable colour (1,3-双極子環化反応によるニトリルと立体的にかさ高い環状トリホスファンの反応: リンを豊富に含むヘテロ環の合成と電子的構造、およびその色調整可能性)

                著者: Mitchell A. Nascimento, Etienne A. LaPierre*, Brian O. Patrick, Jade E. T. Watson, Lara Watanabe, Jeremy Rawson, Christian Hering-Junghans*, Ian Manners
                雑誌名: Chemical Science
                巻: Volume 15, Issue 30, 12006–12016
                出版年: 2024
                DOI: https://doi.org/10.1039/d4sc02497d

                背景

                1: 研究の背景

                • 有機化学分野では、C–CおよびC–X結合形成に関する多くの手法が確立されています。
                • 対照的に、典型元素間の結合形成法はまだ十分に発展していません。
                • 典型化学では還元カップリングなどが用いられますが、しばしば過酷な条件を必要とします。
                • これにより、官能基の導入が難しく、不要な副生成物が生成することもあります。
                • 有機合成の確立された手法を無機基質に応用することで、新しい合成ルートが開かれます。
                • 環化反応は、無機環状系を構築する上でリン化学で注目されています。

                2: リン化合物における色

                • リンを含む化合物の中には、色を示す例が報告されています。
                • 例として、ホスファメチンシアニン類やジホスフェンなどがあります。
                • これらの色の起源は、主にπ–π*遷移などの電子遷移によるものです。
                • しかし、閉殻(非ラジカル)のリンを豊富に含む化合物で色を示す例は比較的少ないです。
                • 特に、本研究の対象であるP3CNコアを持つ先行研究の化合物は、無色または淡黄色でした。

                3: 研究の目的

                • 本研究では、リンを豊富に含む1-アザ-2,3,4-トリホスホレン誘導体の色に焦点を当てました。
                • 環状トリホスファンとニトリルの反応を通じて、新しいP3CNヘテロ環を合成しました。
                • 特に、リン原子に結合した置換基の立体的な大きさが色に与える影響を調べました。
                • ニトリルに由来する置換基の電子的性質の影響も評価しました。
                • 色の起源、それを調整するメカニズム、および潜在的な応用可能性を明らかにすることを目指しました。

                方法

                1: 化合物の合成

                • 立体的にかさ高い置換基を持つ環状トリホスファン(例: (PTipp)3)を出発物質としました。
                • これをニトリル(R′CN)および酸(トリフル酸)と反応させました。
                • これにより、形式的な[3+2]環化反応が進行し、五員環構造を持つ1-アザ-2,3,4-トリホスホレニウムカチオン([1R]+)を合成しました。
                • 得られたカチオン種を塩基(NEt3)で処理することにより、対応する中性種(2R)を容易に得ました。
                • これらのカチオンと中性種は、酸または塩基の添加により可逆的に相互変換が可能です。
                • さらに、これらのP3CNユニットをポリマー鎖に導入する手法も検討しました。

                2: 構造・物性評価と理論計算

                • 合成した化合物の固体構造は、単結晶X線回折(SC-XRD)により詳細に解析しました。
                • 溶液中の化合物については、NMR分光法(31P{1H}, 1H, 19F NMR)を用いて構造を確認し、安定性を評価しました。
                • 化合物の色や光吸収特性は、UV-Vis分光法により測定しました。
                • 観測された色の電子的な起源を理解するため、DFTおよびTD-DFT計算を行いました。
                • これらの理論計算には、実験的に得られた固体構造データを参考にしました。
                • ポリマーについては、GPCやNMR等で評価を行いました。

                3: 多様な色の発現

                • カチオン種[1R]+は、リン原子の置換基(R)やニトリル由来の置換基(R′)を変えることで、広範囲の色を示しました。
                • 例えば、R=Tipp, R′=Meで深紅色、R=Tipp or Dipp, R′=Phで深青色、R=Mes, R′=Phでオレンジ色 でした。
                • R=tBuの場合、一般に無色または淡黄色でした。
                • R′がフェニル基の場合、そのパラ置換基(例: p-MeO, p-CF3)によっても色調が変化しました(マゼンタ、ロイヤルブルーなど)。
                • 対応する中性種2Rは、カチオン種とは異なる色(無色、黄色、オレンジ色など)を示し、色の可逆的なスイッチングが観察されました。
                • 論文中で示されたこれらの化合物の固体および溶液での写真は、色の多様性を示しています。

                結果

                1: 構造と吸収の関連

                • X線構造解析から、カチオン種[1R]+のP3CN環状コアは、リン上の立体障害が増すにつれて、平面からの歪み(曲がり角θ)が増加することが明らかになりました。
                • 一方、中性種2Rは比較的平面に近い構造を保っていました。
                • UV-Visスペクトルでは、カチオン種に低エネルギー吸収帯が観察されました。
                • この吸収帯の波長と、X線構造解析で得られた環の曲がり角の間には、強い線形相関が見られました。
                • つまり、環の曲がりが大きいほど、吸収波長が長波長(赤方)シフトしました。
                • 論文中の曲がり角と吸収波長の関係を示すグラフを参照。

                2: 電子構造と電荷移動

                • DFT/TD-DFT計算により、カチオン種[1R]+の色の原因が分子内電荷移動であることが示唆されました。
                • この電荷移動は、主にHOMOからLUMOへの遷移に由来します。
                • HOMOはリン原子の非結合性軌道に、LUMOはニトリル由来のN=C-R′部位のπ*軌道に主に分布しています。
                • 立体的にかさ高い置換基による環の曲がりがHOMOのエネルギー準位を上昇させます。
                • これによりHOMO-LUMOギャップが小さくなり、可視光領域での低エネルギー吸収が可能になります。
                • 計算された電荷移動距離を示すD指数は約2.3 Åであり、リンからN=C-R′部位への明確な電荷移動を示唆しています。

                3: 高分子材料への応用

                • 合成したP3CNユニットを、ラジカル重合で得られたポリ(4-シアノスチレン)鎖に化学的に結合させました。
                • これにより、P3CN構造を側鎖に持つ共重合体が得られました。
                • このポリマーをガラスウールに担持させたところ、酸性または塩基性の蒸気に応答して色を変化させました。
                • 中性のオレンジ色から、酸性雰囲気で紫色に変化しました(カチオン化)。
                • その後、塩基性雰囲気に戻すと、再びオレンジ色に戻りました(脱プロトン化)。
                • この色の変化は可逆的であり、繰り返し行うことが可能でした。

                考察

                1: 色の起源と調整メカニズム

                • 本研究は、リンを豊富に含む閉殻化合物における、立体的に誘起された色調整という珍しい例を示しました。
                • 色の根本的な原因は、プロトン化によって引き起こされるP3CN環状コアの構造的な曲がりです。
                • この曲がりがリン原子上のHOMOエネルギーを特異的に上昇させます。
                • 結果として、リン原子からN=C-R′部位への分子内電荷移動が可視光領域で起こり、色として観測されます。
                • 色の波長は、リン上の置換基の立体的な大きさを制御することで、効果的に調整できます。
                • ニトリル置換基の電子的性質を変化させることでも、LUMOエネルギーが調整され、色に影響を与えます。

                2: 構造-性質関係と材料設計への示唆

                • 本研究で明らかになった、環の曲がり角と電荷移動吸収波長の間の明確な線形相関は重要です。
                • これは、化合物の基底状態の構造が光物理的性質に直接影響を与えることを示しています。
                • この構造-性質相関は、ニクトゲン(リン族元素)を含む電荷移動材料の合理的な設計に向けた新しい洞察を提供します。
                • 開発した化合物は、比較的合成が容易で、構造がモジュール式に改変可能であり、かつ光安定性も良好です。
                • これらの特性は、様々な応用における利用可能性を示唆しています。

                3: プロトン応答性とセンサー応用

                • カチオン種と中性種の間で観測された可逆的な色変化は、Brønsted酸-塩基に応答するスイッチとして機能します。
                • このプロトン応答性という特徴は、化学センサーなどへの応用が期待されます。
                • 概念実証として、P3CNユニットをポリマー鎖に共有結合させた比色センサーを開発しました。
                • このポリマーセンサーは、酸性・塩基性ガスに空気中で安定に、かつ可逆的に応答しました。
                • 将来の研究課題として、より扱いやすい形態(例: 薄膜)のポリマーセンサー開発などが考えられます。

                結論

                  • 本研究により、リンを豊富に含む1-アザ-2,3,4-トリホスホレンおよびカチオン種が、新規の電荷移動現象により色を示すことが明らかになりました。
                  • 色の起源は、立体障害による環の構造的な曲がりと関連する分子内電荷移動にあります。
                  • リンおよびニトリル上の置換基を設計することで、化合物の色を効果的に調整できることを示しました。
                  • 特に、環の曲がり角と電荷移動吸収波長の間の明確な構造-性質相関を発見しました。

                  将来の展望

                        • これらの化合物は、電荷移動材料の設計や、プロトン応答性センサーなどへの応用が期待されます。
                        • 今回の発見は、ニクトゲンを含む材料の設計に新たな道を開くものです。

                        TAKE HOME QUIZ

                        1. この論文で報告されている、合成・研究された主な化合物は何ですか?

                          • a) 有機アジド
                          • b) 循環トリホスファン
                          • c) リン(P)を豊富に含む複素環
                          • d) ホスファアルキン
                        2. これらのカチオン性種([1R]+)を合成するために使用された主要な反応タイプは何ですか?

                          • a) 塩複分解反応
                          • b) Huisgen環化付加反応
                          • c) 形式的な[3+2]-環化反応
                          • d) 還元的カップリング反応
                        3. カチオン性種([1R]+)の色の調整に寄与する主な要因は何ですか?(最も適切なものをすべて選んでください)

                          • a) 溶媒の種類
                          • b) リン(P)上の置換基の立体的な大きさ
                          • c) ニトリル(R′CN)結合パートナーの電子的特性
                          • d) 反応温度
                        4. カチオン性種において観測された色の主な起源として、論文で特定された現象は何ですか?

                          • a) π–π*遷移
                          • b) 分子内電荷移動
                          • c) 金属中心への配位
                          • d) 分子振動
                        5. この論文で実証された、これらの化合物またはそれらを組み込んだポリマーの潜在的な応用は何ですか?

                          • a) 温度センサー
                          • b) 湿度センサー
                          • c) プロトン(酸)およびアンモニア(塩基)センサー
                          • d) 光電池材料
                        6. カチオン性種([1R]+)の色(特に低エネルギー吸収帯の波長)と強く相関することが見出された構造的特徴は何ですか?

                          • a) P-P結合距離
                          • b) C-N結合距離
                          • c) P3CNリングの曲がり角度
                          • d) 分子全体の平面性

                        解答

                        1. (c)(特に1-aza-2,3,4-triphospholeniumカチオンとその中性体)
                        2. (c)
                        3. (b),(c)
                        4. (b)(Intramolecular Charge Transfer, ICT)
                        5. (c)
                        6. (c)


                         

                        2025年4月12日土曜日

                        Catch Key Points of a Paper ~0232~

                        論文のタイトル: One-pot Functionalization for the Preparation of Cobaltocene-Modified Redox-Responsive Porous Microparticles (コバルトセニウム修飾されたレドックス応答性多孔質微粒子のワンポット機能化)

                        著者: Till Rittner, Jaeshin Kim, Aaron Haben, Ralf Kautenburger, Oliver Janka, Jungtae Kim, Markus Gallei*
                        雑誌名: Chemistry - A European Journal
                        巻: Volume30, e202402338
                        出版年: 2024
                        DOI: https://doi.org/10.1039/d4sc06697a

                        背景

                        1: 研究の背景

                        • 近年、メタロセンは、その電子特性と機能化の多様性から注目を集めている。
                        • フェロセンは、電気化学分析や燃料添加剤として広く利用されているが、そのカチオン状態は不安定である。
                        • コバルトセニウムは、フェロセンと等電子であるが、常に電荷を持った状態が安定であるため、有機合成や電気化学分析で利用されている。
                        • コバルトセニウムを様々な材料に組み込む研究が進んでいるが、多孔質基質への機能化はまだ少ない。

                        2: 未解決の問題点と研究の目的

                        • 従来の表面機能化法は、複雑で時間と労力がかかる。
                        • 多孔質基質へのコバルトセニウムの導入は、触媒や分析応用において非常に魅力的だが、実用的な表面機能化戦略が必要とされている。
                        • 本研究では、ワンポット反応による、多孔質微粒子表面へのコバルトセニウム導入の簡便な手法を開発する。
                        • この手法により、コバルトセニウムの量を制御し、表面特性を調整することを目指す。

                        3: 研究の具体的な目標と成果

                        • 3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン (APTES) を用いた触媒不使用カップリング反応によるコバルトセニウム導入。
                        • ATR-IR、SEM、EDS、TGA、ICP-MSを用いて、表面機能化を評価する。
                        • サイクリックボルタンメトリー (CV) を用いて、電気化学的応答性を解析する。
                        • 合成された材料のセラミック材料としての可能性を示す。

                        方法

                        1: 研究デザイン

                        • ワンポット合成によるコバルトセニウム修飾多孔質微粒子の作製。
                        • 2段階法(APTESを先に結合させ、その後にコバルトセニウムを導入)と比較検討。
                        • APTESとコバルトセニウムの比率を変化させ、表面特性への影響を評価する。
                        • 作製した微粒子をさまざまな分析手法で特性評価を実施。

                        2: 材料

                        • ヒドロキシリッチなポリスチレン-ポリジビニルベンゼン (PSDVB) 微粒子を使用。
                        • 3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン (APTES) を機能化剤として使用。
                        • エチニルコバルトセニウムヘキサフルオロリン酸塩をコバルトセニウム源として使用。

                        3: 主要な評価項目と測定方法

                        • ATR-IR: 表面機能化の確認。
                        • SEM & EDS: 微粒子の構造と元素分布の確認。
                        • TGA: コバルトセニウム含有量の測定。
                        • ICP-MS: コバルト含有量の定量分析。
                        • LSCM: 微粒子の形状と多孔質の確認。
                        • CV: 電気化学的応答性の測定。
                        • PXRD: 焼成後の材料の結晶構造の評価。

                        4: 使用した統計手法

                        • スペクトルデータの処理には、OPUS 8.5およびOrigin2020bを使用。
                        • TGAの評価には、Netzsch Proteus Thermal Analysis 8.0.1を使用。
                        • CVの評価には、EC-Lab V11.46を使用。
                        • SEMの画像分析には、SmartSEM Version 6.07を使用。

                        結果

                        1: ATR-IRによる表面機能化の確認

                        • APTES修飾された粒子にはν(C-N)の共鳴が見られる。
                        • コバルトセニウムで機能化された粒子には、ν(PF6) と ν(シクロペンタジエニル) の信号が見られる。
                        • APTES-コバルトセニウム複合体 (7) の信号と比較して、コバルトセニウムが粒子表面に固定化されたことを確認。
                        • コバルトセニウムの導入量が増加するにつれて、対応する信号強度が増加する。

                        2: TGAによるコバルトセニウム含有量の測定

                        • 350℃以上で炭素構造の分解が確認された。
                        • コバルトセニウムの導入量が増加すると、質量減少がより多くなる。
                        • APTESの導入量を増やすと、残渣質量が増加した。
                        • P-1シリーズでは、コバルトセニウムの導入量増加に伴い、残渣質量が段階的に増加し、約24.5 wt%でプラトーに達した。

                        3: SEM、EDS、ICP-MSによる微粒子の構造と元素分布の評価

                        • LSCMによって、微粒子が損傷を受けていないことが確認された。
                        • SEMによって、多孔質構造と微粒子の完全性が確認された。
                        • EDSによって、コバルトが均一に分布していることが確認された。
                        • ICP-MSとEDSの結果は、コバルト含有量の増加傾向を示している。

                        考察

                        1: 主要な発見

                        • ワンポット合成法により、多孔質微粒子表面へのコバルトセニウム導入を簡便に実現。
                        • APTESの量を調整することで、コバルトセニウムの導入量を制御可能。
                        • 二段階法と比較して、ワンポット法はより簡便で、精製ステップも少ない。
                        • APTESとコバルトセニウムの比率を変えることで、表面特性を調整可能。

                        2: 主要な特性

                        • TGAの結果から、コバルトセニウムの含有量が確認され、APTESの添加量とコバルトセニウムの量との関係性が明らかになった。
                        • LSCM、SEMにより、多孔質構造が維持されつつ、表面が修飾されていることが確認された。
                        • EDSとICP-MSにより、コバルトの含有量と分布が分析され、その定量的な関係が確認された。
                        • CVにより、電気化学的な応答性が確認され、コバルトセニウムの導入量が電気化学特性に影響を与えることが示された。

                        3: 先行研究との比較

                        • フェロセンを基にした研究は多いが、コバルトセニウムを多孔質材料に固定化する研究は少ない。
                        • ワンポット合成は、表面機能化においてより実用的である。
                        • APTESを用いた機能化は、先行研究でも知られているが、本研究ではコバルトセニウムと組み合わせた点が新しい。
                        • 本研究は、コバルトセニウムの電気化学的特性を保持したまま、多孔質材料に導入する点において、他の研究とは異なる。

                        4: 研究の限界点

                        • CV測定は、電極表面への粒子の付着に依存するため、再現性が乏しい。
                        • 分散状態での測定が困難であり、実際の応用環境での挙動を完全に反映しているわけではない。
                        • コバルトセニウムとAPTESの正確な比率の定量は、IRデータだけでは困難である。
                        • セラミック材料としての応用は、収率が低く限定的である。
                        • 熱処理後の材料の結晶性が低いことが課題である。

                        結論

                        • ワンポット法により、多孔質微粒子へのコバルトセニウム導入に成功。
                        • コバルトセニウムとAPTESの量を調整することで、表面特性を制御可能。
                        • 得られた材料は、レドックス活性を示し、電気化学的応答性を調整可能。
                        • 焼成により、磁性を示す多孔質セラミック材料に変換可能。

                        将来の展望

                          • 本研究は、触媒や分析応用における、新たな機能性材料の開発に貢献する。

                          TAKE HOME QUIZ

                          1. 研究の目的と方法に関する質問

                            • メタロセンとは、どのような化合物ですか?
                              • (a) 金属と有機配位子が結合した化合物
                              • (b) 金属のみで構成される化合物
                              • (c) 有機物のみで構成される化合物
                            • フェロセンとコバルトセニウムの主な違いは何ですか?
                              • (a) フェロセンは常に電荷を持ち、コバルトセニウムは中性である。
                              • (b) コバルトセニウムは常に電荷を持った状態が安定で、フェロセンのカチオン状態は不安定である。
                              • (c) 両者に違いはない。

                            2. 研究の目的と方法に関する質問

                            • この研究の主な目的は何ですか?
                              • (a) フェロセンを多孔質基質に導入すること。
                              • (b) ワンポット反応による、多孔質微粒子表面へのコバルトセニウム導入の簡便な手法を開発すること。
                              • (c) コバルトセニウムの新しい合成法を開発すること。
                            • この研究で用いられた2つの機能化戦略は何ですか?
                              • (a) APTESを先に結合させる2段階法と、APTES-コバルトセニウムを直接導入するワンポット法。
                              • (b) 異なる溶媒のみを用いた2つの方法。
                              • (c) 熱処理の有無による2つの方法。

                            3. 結果と考察に関する質問

                            • ATR-IRの結果から何がわかりましたか?
                              • (a) コバルトセニウムは存在しない。
                              • (b) コバルトセニウムが粒子表面に固定化されたことを確認した。
                              • (c) APTESは存在しない。
                            • SEM、EDS、ICP-MSの結果から何がわかりましたか?
                              • (a) 粒子は破壊された。
                              • (b) コバルトが均一に分布しており、含有量を定量的に分析した。
                              • (c) 多孔質構造は失われた。
                            • 熱処理後の材料は何を示すことが分かりましたか?
                              • (a) 磁性を示す多孔質セラミック材料に変換可能。
                              • (b) 磁性を示さないセラミック材料に変換可能。
                              • (c) セラミック材料に変換不可能。
                            • この研究の限界点は何ですか?
                              • (a) CV測定の再現性の難しさ、分散状態での測定困難、セラミック材料としての応用収率の低さなど。
                              • (b) 特に限界点はない。
                              • (c) 分析手法が不足している。

                            解答

                            1. (a), (b)
                            2. (b), (a)
                            3. (b), (b),(a), (a)


                            2024年4月27日土曜日

                            Catch Key Points of a Paper ~0007~

                            論文のタイトル: Intramolecular Diels-Alder Reaction of a Biphenyl Group in a Strained meta-Quaterphenylene Acetylene

                            著者: Komal Mittal, Ashley V. Pham, Amanda G. Davis, Abigail D. Richardson, Clement De Hoe, Ryan T. Dean, Vi Baird, Ashley Ringer McDonald, and Derik K. Frantz

                            雑誌: Journal of Organic Chemistry

                            出版年: 2023


                            背景

                            1: 研究の背景

                            ペリレンなどの大きなπ系化合物の湾曲領域は、高温でジエノフィルと Diels-Alder 付加環化反応を起こす

                            この反応は、より大きなπ系の形成に有用である

                            しかし、この反応性はペリレンなどの特殊な化合物に限られていた


                            2: 未解決の問題点

                            二環式のビフェニル誘導体においては、同様の Diels-Alder 反応性が観測されていない

                            ビフェニルの反応は、より高い活性化エネルギーを必要とすると予測されている  


                            3: 研究の目的

                            歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物のビフェニル部位が、高温で分子内 Diels-Alder 反応を起こすことを実証する

                            この反応の熱力学的および速度論的な特性を調べる


                            方法

                            1: 研究デザイン

                            有機合成と分光分析による実験的研究


                            2: 生成物

                            歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物(6)およびその誘導体 6-Me


                            3: 反応性の評価  

                            化合物 6 と 6-Me を高温溶媒中で加熱し、生成物を分析

                            1H NMR を用いた反応経路の追跡


                            4: 理論計算

                            DFT計算により、反応機構と活性化自由エネルギーを算出し、実験結果と比較


                            結果

                            1: 化合物 6 の反応

                            化合物 6 を高温で加熱すると、ベンズ[e]インデノ[1,2,3-hi]アセフェナントリレン 7 が生成

                            1H NMR で反応の追跡と生成物の同定が可能


                            2: 化合物 6-Me の反応速度論

                            220°C で 6-Me から 7-Me への反応を追跡 

                            一次反応速度定数 k = ∼ 1 × 10-5 s-1

                            活性化ギブズ自由エネルギー ΔG‡ ≈ 40-41 kcal/mol


                            3: 理論計算の結果

                            協奏的な [4+2] 環化付加-脱 H2 機構が最も妥当

                            計算された活性化自由エネルギーは実験値と良い一致を示す


                            考察

                            1: Diels-Alder 反応の発見

                            初めてビフェニル誘導体で湾曲領域の Diels-Alder 反応性を実証した

                            ペリレンなど大きなπ系と同様の反応性を示す  


                            2: 反応の駆動力

                            高い歪みエネルギーが反応の駆動力となっている

                            生成物は非常に安定であり、大きな生成熱を伴う


                            3: 理論との比較

                            計算結果は実験値をよく再現しており、提案した機構を支持


                            4: 先行研究との比較 

                            ビフェニル誘導体の Diels-Alder 反応は初の報告例

                            大きなπ系への拡張に向けた新たな方法論となる可能性


                            5: 限界点

                            高温条件が必要で、基質の適用範囲が限定される

                            生成物の利用法については未検討


                            結論

                            歪んだメタ-クォーターフェニルアセチレン環式化合物のビフェニル部位が、分子内 Diels-Alder 反応により環拡大化合物を与えることを実証  

                            反応は高温条件で進行し、計算化学的にも支持された[4+2]環化付加-脱離機構が妥当

                            この反応は、ビフェニル誘導体に対する新たなπ系拡張手法を提供


                            将来の展望

                            より温和な条件での反応や、生成物の有用性の検討が、今後の課題

                            2024年4月26日金曜日

                            Catch Key Points of a Paper ~0006~

                            論文のタイトル: Suppressing Cis/Trans 'Ring-Flipping' in Organoaluminium(III)-2-Pyridyl Dimers – Design Strategies Towards Lewis Acid Catalysts for Alkene Oligomerisation

                            著者: Dipanjana Choudhury, Ching Ching Lam, Nadia L. Farag, Jonathan Slaughter, Andrew D. Bond, Jonathan M. Goodman, Dominic S. Wright

                            雑誌: Chemistry - A European Journal

                            出版年: 2024


                            背景

                            1: 研究の背景

                            遷移金属は合成と触媒分野で中心的な役割を果たしてきた

                            しかし、貴金属は希少で高価、環境にも優しくない

                            典型元素の活性を利用すれば、よりサステナブルな触媒が期待できる


                            2: 未解決の問題点 

                            Al(III)はLewis酸性が高く、酸化状態の可逆的変化が可能

                            しかし、Al(III)を用いた酸化還元触媒の報告例は少ない


                            3: 研究の目的

                            2-ピリジル基を有する新規二核Al(III)錯体の合成と構造決定

                            脱アルキル化によりカチオン種を発生させ、オレフィン重合触媒への応用を目指す

                            立体選択的重合のため、2-ピリジル環上の置換基の影響を検討


                            方法

                            1: 研究デザイン

                            5種類の新規二核Al(III)錯体[R2Al(2-py')]2 (R = Me, iBu; py' = 置換ピリジル基) を合成

                            1H NMR、X線構造解析により立体異性体の割合を決定

                            理論計算によりシス-トランス異性化機構とエネルギー的安定性を解析


                            2: 評価法

                            2-ピリジル環の6-位置換基の影響評価

                            トランス体の生成を促進する置換基パターンを探索

                            二量体の脱メチル化による活性カチオン種の発生


                            結果

                            1: 6-位置換基の影響評価結果

                            6-位置換基の導入によりシス体生成が抑制された

                            特に6-MeO置換体ではシス体がほとんど観測されなかった


                            2: 理論計算結果 

                            トランス体がよりエネルギー的に安定であることを示唆

                            異性化機構はconcerted型ではなく、2段階の"スイング機構"が有利

                            Al-N結合の一時的解離とピリジル環の回転を経る

                            6-位置換基の導入によりこの異性化の活性化エネルギーが増大


                            3: カチオン種発生の検討結果

                            脱メチル化によるモデルカチオン種[{MeAl(2-py')}2(μ-Me)]+の発生が理論的に示された

                            実験的にも6-MeO置換体の脱メチル化が進行することを確認


                            考察

                            1: 新規二核Al(III)錯体の合成

                            2-ピリジル環6-位への置換基導入がトランス選択性の向上に有効であった

                            立体効果によりシス体生成が抑制され、トランス体が熱力学的に安定化される

                            C2対称性のあるトランス体が重合触媒前駆体として望ましい


                            2: 異性化機構の考察

                            理論計算から2段階のスイング機構が示唆された

                            この機構では活性化エネルギーが置換基効果を受ける

                            6-位置換基はトランス選択性向上に加え、異性化を抑制する効果も持つ  


                            3: カチオン種の考察

                            脱メチル化によるカチオン種発生が計算と実験で裏付けられた

                            トランス配置のカチオンがエネルギー的に有利であり、望ましい構造

                            立体選択的オレフィン重合活性は今後の課題


                            4: 限界点

                            固体構造とNMR解析に留まる

                            実際の重合活性は未検証

                            異性化の速度論的解析が不十分


                            結論

                            2-ピリジル基を含むAl(III)ダイマーの合成と構造解析に成功

                            置換基導入によりトランス選択性が向上し、望ましい配置が得られた

                            脱アルキル化によるカチオン種発生が実証された


                            将来の展望

                            今後、これらカチオン種のオレフィン重合活性と立体選択性を検証する必要がある

                            2024年4月25日木曜日

                            Catch Key Points of a Paper ~0005~

                            論文のタイトル: Development of the Squaramide Scaffold for High Potential and Multielectron Catholytes for Use in Redox Flow Batteries 

                            著者: Jacob S. Tracy, Conor H. Broderick, and F. Dean Toste

                            雑誌: Journal of the American Chemical Society

                            出版年: 2024


                            背景

                            1: 研究の背景

                            再生可能エネルギーの普及に伴い、エネルギー貯蔵技術の重要性が高まっている

                            非水系有機レドックスフロー電池(N-ORFB)は、広い電気化学的安定性窓を有するが、高電位陰極(電解)液材料の設計が課題となっている


                            2: 未解決の問題点

                            既存の陰極(電解)液分子では、0.6 V vs Fc/Fc+以下の酸化電位に限られている

                            高電位 (0.8 V vs Fc/Fc+以上) の陰極(電解)液材料はほとんど報告されていない  


                            3: 研究の目的

                            本研究ではスクアラミド骨格に着目し、高電位・多電子陰極(電解)液の開発を目指した

                            スクアラミド骨格の酸化還元挙動は1977年に報告されたが、エネルギー貯蔵への応用は未開拓

                            機構解析と分子設計により、スクアラミド骨格を最適化し、N-ORFBに適用可能な陰極(電解)液材料を開発する


                            方法

                            1: 研究デザイン

                            スクアリン酸キノキサリン(SQX)およびスクアリン酸アミド(SQA)骨格を合成

                            サイクリックボルタンメトリー、NMR、HRMS等の分析手法を用いて酸化還元挙動と分解機構を解明

                            静止状態でのH型セル充放電実験により電気化学的安定性を評価


                            2: 試料

                            分子設計指針に基づき、SQX、SQAライブラリを構築  

                            フロー電池に適した高溶解性、高酸化電位、長期サイクル安定性を示す分子を選定


                            3: 評価法

                            選定した陰極(電解)液分子を用いて、実験室スケールのフロー電池を構築し性能を評価


                            結果

                            SQX-1の性能

                            • SQX-1は0.51 V vs Fc/Fc+の高い酸化電位と99%の残存容量(102サイクル後)を示した  

                            • SQX-1(100 mM)とピリジニウムアノライト(100 mM)を用いたN-ORFBは1.58 Vを発生

                            • 102サイクル後に99%のピーク容量を維持し、70%の最大利用率を達成


                            SQA-1,2の性能

                            • SQA-1(50 mM)とビオロゲン陽極(電解)液(50 mM)を用いたN-ORFBは1.63 Vを発生し、陰極(電解)液の分解は認められなかった

                            • SQA-1は0.81 V vs Fc/Fc+の極めて高い酸化電位を有し、110サイクル後も分解は認められなかった

                            • SQA-2は0.48 V、0.85 Vの2段階酸化を示し、0.56%/時間の容量低下率を実現


                            考察

                            1: 新たな知見 

                            スクアラミド骨格は、合理的な分子設計により高電位化と電気化学的安定性の両立が可能

                            ラジカルカチオンの非局在化と分子内環化反応の抑制が、高い酸化電位と安定性をもたらした

                            新規高電位・多電子陰極(電解)液分子の開発に成功し、N-ORFBの高エネルギー密度化に貢献


                            2: 先行研究との比較

                            本研究で得られた知見は、Sanfordらの高電位シクロプロペニウム陰極(電解)液と同等の性能  


                            3: 限界点

                            機構解析の一部が不明確で、合理的な設計指針構築にはさらなる理解が必要

                            比較的少数のスクアラミド分子を対象としており、さらなる探索の余地あり

                            フロー電池実験はモデルシステムに留まり、実機条件下での長期安定性は未検証

                            陽極(電解)液分子との適合性、セパレーター材料等の課題も残されている


                            結論

                            本研究では、スクアラミド骨格を活用した高電位・多電子陰極(電解)液材料の開発に成功した

                            機構解析と分子設計の組み合わせにより、従来より200 mV以上高い酸化電位と優れた安定性を実現

                            得られた知見は、高エネルギー密度N-ORFBの実現に向けた重要な一歩となる


                            将来の展望

                            実用化に向けてはさらなる分子最適化による安定性の向上と溶解度の最適化が必要

                            加えて電池システム全体の改善が必要不可欠である

                            2024年4月22日月曜日

                            Catch Key Points of a Paper ~0001~

                            論文のタイトル: Lewis Acid Decorated Hexacyanodiborane(6) Dianion

                            著者: Ludwig Zapf and Maik Finze

                            雑誌: Angewandte Chemie International Edition

                            巻: e202401681号

                            出版年: 2024年


                            背景

                            1: 研究の背景

                            Diborane(4)化合物は既によく研究されているが、Diborane(6)ジアニオンについての報告例は少ない


                            2: 未解決の問題点

                            Hexacyanodiborane(6)ジアニオン[B2(CN)6]2-は空気安定性があるが、その反応性は詳しく調べられていない

                            [B2(CN)6]2-は弱配位性アニオンとしての応用が期待されている


                            3: 研究の目的

                            Hexacyanodiborane(6)ジアニオンに Lewis 酸を導入し、新規弱配位性ジアニオンを合成

                            生成物の物性や反応性を明らかにする


                            方法

                            1: 研究デザイン

                            Hexacyanodiborane(6)ジアニオン[B2(CN)6]2-にtris(pentafluorophenyl)boraneを作用させる


                            2: 生成物

                            [B2{CNB(C6F5)3}6]2- (1)のカリウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、酸化物オニウム塩 {H(OEt2)2}2・1、トリチルカチオン塩 [Ph3C]2・1


                            3: 物性評価法

                            単結晶X線構造解析

                            NMR、IR、ラマン分光分析

                            熱分析(DSC)

                            電気化学測定(CV)


                            4: 計算化学的検討

                            密度汎関数法(DFT)による電子構造、結合特性の解析


                            結果

                            1: X線構造解析結果

                            ジアニオン1の構造決定

                            C≡N結合の短縮化が確認された


                            2: 分光学的性質

                            IR、ラマン分光によりC≡N伸縮振動数の大幅な増加を確認

                            ジアニオン1のトリ-n-オクチルアンモニウム塩のNHプロトン酸性度は、[B(C6F5)4]-を用いた場合と同程度


                            3: 熱的・電気化学的安定性

                            1の塩の多くは200℃以下では安定

                            酸化電位が[B2(CN)6]2-より大幅に正電位側にシフト


                            考察

                            1: 弱配位性アニオンの合成

                            ジアニオン1は分子容積が2000 Å3を超える極めて大きな弱配位性アニオン

                            電荷が非局在化し、分極率が小さいためにカチオンとの相互作用が弱い


                            2: C≡N結合の短縮と安定化

                            Lewis酸であるBCFがC≡N結合に作用し、結合が短縮・強化された

                            これが酸化電位の正シフトにつながり、より安定化された


                            3: 反応性の向上

                            [Ph3C]2・1とEt3SiHの反応により、ジアニオン1から中性のビス(シリル化)体2が生成

                            [B2(CN)6]2-に比べ反応性が大幅に向上した


                            4: 限界点

                            ジアニオン1の溶解性が低い

                            Et3Si+基の導入は2つまでしか進行せず、完全置換体は得られなかった


                            5: 先行研究との比較

                            [closo-B12X12]2- (X=ハロゲン)に比べ大きな弱配位性ジアニオンが得られた

                            BCF付加体では類例があるが、Diborane(6)化合物への応用は初めて


                            結論

                            Hexacyanodiborane(6)ジアニオンに Lewis 酸を導入することで、新規極大型弱配位性ジアニオン1が合成できた

                            1は熱的・酸化的に非常に安定であり、カチオンの安定化剤として有用

                            さらに1から新規中性 Diborane(6)化合物2への変換も可能

                            Diborane(6)化合物の新たな反応場の開拓につながる成果


                            将来の展望

                            溶解性の改善による新たな応用展開

                            他のLewis酸による修飾による物性制御

                            反応性の詳細な解明と新規変換反応の探索

                            2015年12月28日月曜日

                            ベンゾフェノン

                             最近、ある目的の合成のモデルケースとして、式1のような計画で原料合成をやってみたのですが、一段階目の反応は室温では、求核攻撃は1当量分のみ進行し、加温すると2当量分の反応が進行し、3当量分の反応は確認されませんでした。本当は、wittig反応の前に、1段階目の反応の高い選択性の時点で思い至るべきだったのでしょうが、wittig反応はリンイリドの調製ができていることのみが確認でき、肝心の反応は進行しませんでした。まんまと落とし穴にハマったわけです。フラスコの妖精は、私の醜態を見てさぞ笑ったことでしょう。

                             残念ながら、wittig反応が進行しなかったので、現在は式2のように経路を変更して反応を試みていますが、メチルリチウムの付加反応も加熱しなくては反応が進行しませんでした。なので、反応が進行しなかったのは立体的な要因ではなく、電子的な要因ではないかと推測しています。

                            勘の鋭い方はお気づきでしょうが、実はwittig反応がうまくいかなかった時点で、この経路はものすごく無駄の多い経路になっているのです。脱離反応でアルケンを作るなら、式3の経路で市販品からワンポットで作れるのです。

                            なぜ、最初から式3の経路で反応を行わなかったのかと言いますと、実は筆者は生まれてこの方wittig反応をやったことがなかったので、wittig反応をやってみたかったんです。しかしながら、式2の原料を大スケールで持ち上げてしまった今となっては後の祭りです。フラスコの妖精は、私の醜態に笑いが止まらないことでしょう。

                            最後に一言
                            エウレカセブンのドミニク君の言葉を引用しておきます。


                            「私情の何がいけない!?〝俗物〟だと呼んでもらってかまわない!」

                            2015年2月22日日曜日

                            手作りSPhos

                            Buchwald-Hartwig Cross Couplingの配位子として
                            有名なSPhosですが、構造の割に結構値段が高いんですよね。

                            んで、自分で安く作れないものかなと画策していましたら
                            意外と鍵となる前駆体が簡単に作れそうな論文がありました。

                            A straightforward anionic coupling for the synthesis of ortho-bromobiaryls (doi:10.1016/j.tet.2004.06.010)

                            肝心のAldrich社のSPhosの価格
                            (http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/638072)
                            ですが、
                            1 gで13,200円
                            5 gで44,000円
                            25 gで104,500円となっております。



                            このルート案外ワンポットでいけるのでは?と思っているのですが、
                            もしかしたら実際の合成ルートもこのようなものかもしれません。
                            心配な点があるとすれば、
                            三塩化リンを作用させるときに低温であれば反応しないはずですが
                            アリールリチウムが複数りリンに攻撃するかももしれない点ですね
                            有機合成の落とし穴はいたるところにありますから。。。

                            ところで、先に挙げた論文でもっと面白いことができないだろうかと思いまして
                            今回他のマルチブロモベンゼンと反応させてみましたので
                            その報告だけしようと思います。

                            まだあまりしっかりと追試と検討を行ったわけではないのですが、
                            筆者がヘキサブロモベンゼンで同様の反応を行ってみたところ、
                            1-ブロモ-2,6-ジメトキシベンゼンが得られましたヽ(`Д´#)ノ。
                            おそらくヘキサブロモベンゼンの方はベンザインが出たものと思われます。
                            副生成物を完全に解析したわけではないので、
                            ヘキサブロモベンゼンの行く末は続報をお待ちください。

                            一方、1,2,4,5-テトラブロモベンゼンで検討を行ってみたところ、
                            相変わらず1-ブロモ-2,6-ジメトキシベンゼンが取れましたが、
                            反応混合物をGCMSにより分析しましたところ、
                            今回は論文で報告されている反応と同様の反応が進行した
                            と思われるマススペクトルが得られましたε-(´∀`*)ホッ。

                            ヘキサブロモベンゼンとテトラブロモベンゼンともに
                            リチウム-ハロゲン交換反応が進行する結果となってしまいましたが、
                            ヘキサブロモベンゼンは溶解度があまり良くないので、
                            論文のProcedureと異なる方法で添加しましたのでその影響かもしれません。

                            それでは。

                            非対称オルト‐ターアリールの合成

                            皆さんはターアリール骨格を作れと言われたらどのような手法を考えますか?

                            やはり一番最初に浮かぶのはカップリング反応による合成でしょうか
                            異なる周期のハロゲン(例えば塩素とヨウ素)を有するベンゼンを基質として用いることで、
                            一段回目は弱い条件で酸化的付加が可能な位置でカップリングを行い、
                            二段回目は強い条件で酸化的付加が進行する位置でカップリングを行えば
                            非対称ターアリールを合成することができますね(式1)。



                            あるいは、学術領域での合成ならベンザインを利用する方法もありますね(式2)。
                            他にも、最近ではC-Hアリール化を用いる方法もありますね。
                            僕なりに思うC-H活性化型反応のすごい点はまた後日語ろうと思うので、
                            今日は割愛します。

                            さて、タイトルに述べた非対称オルト‐ターアリールの合成ですがけっこう難しいんですね。
                            この非対称オルト‐ターアリールを作れると、
                            これまでよりもっと多様なトリフェニレンの合成と
                            トリフェニレンを起点とする分子の合成が可能になり、
                            さらにはトリフェニレンを置換基として利用できるようになりますね。