2024年4月22日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0001~

論文のタイトル: Lewis Acid Decorated Hexacyanodiborane(6) Dianion

著者: Ludwig Zapf and Maik Finze

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

巻: e202401681号

出版年: 2024年


背景

1: 研究の背景

Diborane(4)化合物は既によく研究されているが、Diborane(6)ジアニオンについての報告例は少ない


2: 未解決の問題点

Hexacyanodiborane(6)ジアニオン[B2(CN)6]2-は空気安定性があるが、その反応性は詳しく調べられていない

[B2(CN)6]2-は弱配位性アニオンとしての応用が期待されている


3: 研究の目的

Hexacyanodiborane(6)ジアニオンに Lewis 酸を導入し、新規弱配位性ジアニオンを合成

生成物の物性や反応性を明らかにする


方法

1: 研究デザイン

Hexacyanodiborane(6)ジアニオン[B2(CN)6]2-にtris(pentafluorophenyl)boraneを作用させる


2: 生成物

[B2{CNB(C6F5)3}6]2- (1)のカリウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、酸化物オニウム塩 {H(OEt2)2}2・1、トリチルカチオン塩 [Ph3C]2・1


3: 物性評価法

単結晶X線構造解析

NMR、IR、ラマン分光分析

熱分析(DSC)

電気化学測定(CV)


4: 計算化学的検討

密度汎関数法(DFT)による電子構造、結合特性の解析


結果

1: X線構造解析結果

ジアニオン1の構造決定

C≡N結合の短縮化が確認された


2: 分光学的性質

IR、ラマン分光によりC≡N伸縮振動数の大幅な増加を確認

ジアニオン1のトリ-n-オクチルアンモニウム塩のNHプロトン酸性度は、[B(C6F5)4]-を用いた場合と同程度


3: 熱的・電気化学的安定性

1の塩の多くは200℃以下では安定

酸化電位が[B2(CN)6]2-より大幅に正電位側にシフト


考察

1: 弱配位性アニオンの合成

ジアニオン1は分子容積が2000 Å3を超える極めて大きな弱配位性アニオン

電荷が非局在化し、分極率が小さいためにカチオンとの相互作用が弱い


2: C≡N結合の短縮と安定化

Lewis酸であるBCFがC≡N結合に作用し、結合が短縮・強化された

これが酸化電位の正シフトにつながり、より安定化された


3: 反応性の向上

[Ph3C]2・1とEt3SiHの反応により、ジアニオン1から中性のビス(シリル化)体2が生成

[B2(CN)6]2-に比べ反応性が大幅に向上した


4: 限界点

ジアニオン1の溶解性が低い

Et3Si+基の導入は2つまでしか進行せず、完全置換体は得られなかった


5: 先行研究との比較

[closo-B12X12]2- (X=ハロゲン)に比べ大きな弱配位性ジアニオンが得られた

BCF付加体では類例があるが、Diborane(6)化合物への応用は初めて


結論

Hexacyanodiborane(6)ジアニオンに Lewis 酸を導入することで、新規極大型弱配位性ジアニオン1が合成できた

1は熱的・酸化的に非常に安定であり、カチオンの安定化剤として有用

さらに1から新規中性 Diborane(6)化合物2への変換も可能

Diborane(6)化合物の新たな反応場の開拓につながる成果


将来の展望

溶解性の改善による新たな応用展開

他のLewis酸による修飾による物性制御

反応性の詳細な解明と新規変換反応の探索

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