2024年4月24日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0004~

論文のタイトル: Nickel-catalyzed C(sp2)–C(sp3) coupling via photoactive electron donor–acceptor complexes

著者: Salman Alsharif, Chen Zhu, Xiushan Liu, Shao-Chi Lee, Huifeng Yue, Magnus Rueping

雑誌: Chemical Communications

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応は有機合成化学の基盤反応

C(sp2)-C(sp3)結合形成は化合物の複雑性を高める上で重要

従来法は金属還元剤の過剰使用や廃棄物の発生が課題


2: 研究の目的 

貴金属触媒を必要とせず、より汎用的な新規手法の開発

電子供与体-電子受容体(EDA)複合体を活用したC(sp2)-C(sp3)カップリング反応の確立


3: 期待される成果

EDA複合体駆動型の新規カップリング手法の開拓

温和な反応条件による広範な基質適用可能性

貴金属触媒を必要としない環境調和型プロセス


方法 

1: 反応条件の最適化

モデル基質: 4-ブロモ-1,1'-ビフェニル、シクロヘキシルヨージド

種々の Ni触媒/配位子、溶媒、添加剤、光源を検討

Cy2NH/HE/NiBr2・4,4'-ジメトキシ-2,2'-ビピリジン/DMF/390 nm光が最適


2: 基質適用範囲の検討  

多様なアリールブロミド、アルキルヨウ化物の適用範囲を検証

各種官能基の許容性や立体障害の影響を評価


3: 分光学的解析

UV-Vis分光法によりEDA複合体の形成を確認  

機構的知見を得るためにHE/アミン/アルキルヨウ化物/Ni触媒の吸収スペクトルを測定


4: 統計解析

ガスクロマトグラフ内標準法による生成物収率の算出

反応条件の最適化にはOne-way ANOVA(一元配置分散分析)を使用


結果

1: アリールブロミドの適用範囲

電子求引性/電子供与性置換基を有するアリール基が適用可能

ケトン、シアノ、トリフルオロメトキシ、フッ素など多様な官能基を許容

ヘテロ環式アリールブロミドも良好な収率


2: アルキルヨウ化物の適用範囲 

環状および直鎖状のアルキルヨウ化物が反応可能

一級および二級アルキルヨウ化物に対して適用可能

シリル基やエーテル結合などの官能基も許容される


3: 天然物誘導体への応用

コレスタノール、プロベネシドなどの複雑な分子への適用に成功

実用的な変換プロセスとしての有用性を実証


考察  

1: 主要な知見

EDA複合体を介した新規C(sp2)-C(sp3) カップリング反応の開発に成功

貴金属触媒を必要とせず、温和な条件下で進行

広範なアリール/アルキル基質に適用可能な汎用性の高い手法


2: 先行研究との比較

従来のニッケル/光還元体系に比べ、より簡便なプロトコル  

Molander らの類似手法と比較して基質適用範囲が広い


3: 反応機構の考察

UV-Vis測定からEDA複合体の形成と光誘起電子移動が示唆される

アルキルラジカル種の発生、ニッケル触媒サイクルを経る機構が提案されている  


4: 今後の課題

より高い原子経済性と選択性を目指した最適化

スケールアップ時の課題の検討

他の結合形成反応への適用拡大の可能性


結論

EDA複合体駆動によるC(sp2)-C(sp3)カップリング反応の開発に成功

貴金属触媒を必要とせず、温和な条件で広範な基質に適用可能

よりグリーンで実用的なカップリングプロトコルとなる可能性


将来の展望

他の結合形成反応への応用展開が期待される新概念反応

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