著者: G. Peng, N. Ullah, S. Streiff, K. De Oliveira Vigier, M. Pera-Titus, R. Wischert, F. Jérôme
雑誌: Chemistry - A European Journal
出版年: 2024
背景
1: α,β-不飽和アルデヒドの重要性
α,β-不飽和アルデヒドは重要な化学プラットフォームである
ポリマー、生理活性物質、香料の原料として広く利用される
2: 従来の合成方法の課題
従来法はWittig反応、アルドール縮合、金属触媒を用いるなど
高価な金属触媒や過酷な反応条件が必要
3: 本研究の目的と意義
アルケンとホルムアルデヒドから金属不使用で選択的に合成する
安価な原料と温和な条件を利用する環境調和型プロセス
方法
1: 研究デザイン
スチレンをモデル化合物として最適条件を探索
ジメチルアミン、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)溶媒の利用
2: 反応中間体の同定
GC-MS、NMR、DFT計算による反応機構の解明
中間体の単離と反応性評価
3: 反応条件の最適化
ジメチルアミン量の検討(当量比0.1~1.0)
温度(30~50℃)、時間の最適化
結果
1: スチレン由来α,β-不飽和アルデヒドの合成
最適条件下で2-ベンジルアクロレインを78%収率で合成
副生成物はN-メチル-3-フェニルプロパン-1-アミンのみ
2: 直鎖アルケンからの合成例
1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンから対応アルデヒドを40-44%収率で合成
工業的に重要な化合物へのアクセスが可能に
3: ジメチルアミン量の影響
0.1当量でも反応は進行し、選択性は維持された(80%収率)
理論的に100%アトムエコノミーな触媒的プロセスの実現
考察
1: 反応機構の解明
DFT計算により、連続的な1,5-水素転位が最も有利であることを示唆
ジメチルアミンは1,3-水素転位を触媒することも確認
2: 本手法の優位性
金属不使用、温和な条件(30-50℃)、100%原子経済的
スケールアップが容易な安価で豊富な原料利用
3: 工業的インパクト
医薬品中間体や高分子原料となるα,β-不飽和アルデヒド製造が可能に
環境負荷の低減が期待できる
4: 反応条件の最適化の必要性
直鎖アルケンの収率は40-44%と低く、更なる条件検討が必要
工業的には80%以上の収率が求められる
5: 限界点
ごく一部のアルケンについての結果であり、さらなる基質の検討が必要
実装には工程の最適化とスケールアップ研究が不可欠
結論
ジメチルアミンを触媒として、アルケンとホルムアルデヒドから直接的に、選択的にα,β-不飽和アルデヒドが合成可能なことを実証した
本プロセスは金属不使用、100%原子経済的で、環境に優しい
工業的に重要なα,β-不飽和アルデヒドの供給源となり得る
将来の展望
今後、基質一般性の拡大と工業化に向けた条件最適化が課題