2024年6月16日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0043~

論文のタイトル: Reactive Magnesium Nanoparticles to Perform Reactions in

Suspension(反応性マグネシウムナノ粒子を懸濁液中で反応に利用する)

著者: Christian Ritschel, Carsten Donsbach, Claus Feldmann

雑誌: Chemistry - A European Journal

出版年: 2024


背景

1: マグネシウムの反応性

マグネシウムは非常に高い還元力を持つ(-2.34 V vs 標準水素電極)

しかしながら、バルクマグネシウムはMgO被膜で覆われており不活性化される


2: 従来の活性化手法の限界  

グリニャール反応のためのヨウ素処理

ジブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物の使用

マイクロメートルサイズの"Rieke マグネシウム"


3: ナノマグネシウムの利点

ナノサイズ化によりマグネシウムの反応性が向上する可能性

液相合成による清浄なマグネシウムナノ粒子の調製

新規配位子化合物合成への応用が期待される


方法

1: 研究デザイン

液相法によるマグネシウムナノ粒子合成

MgBr2を出発原料とする

強力な還元剤としてリチウムナフタレニド/ビフェニルを使用


2: 合成条件  

溶媒にTHFを使用

均一溶液から直接ナノ粒子を生成するLaMer機構


3: 特性評価

透過電子顕微鏡によるサイズ・形態観察  

X線回折による結晶構造解析

FT-IR、元素分析による表面状態解析


4: マグネシウムナノ粒子の反応性評価

立体的にかさ高い有機ハロゲン化物との反応

酸性プロトンを有するアミン化合物との反応


結果

1: 合成されたマグネシウムナノ粒子

粒子径10.3 ± 1.7 nm (LiBP還元)、28.5 ± 4 nm (LiNaph還元)  

単結晶構造 (d101 = 245±5 pm) 

表面にTHFが吸着


2: ハロゲン化物との反応

1,1'-ビアダマンタンの生成 (収率80%)

[MgCl2(thf)2]・Ph6Si2 (収率70%) の生成


3: 酸性プロトンを有するアミン化合物との反応 

9H-カルバゾール (Hcbz)、7-アザインドール (Hai)、1,8-ジアミノナフタレン (H4nda)、N,N’-ビス(α-ピリジル)-2,6-ジアミノピリジン (H2tpda)から、それぞれ[Mg(cbz)2(thf)3] 、[Mg4O(ai)6]・1.5C7H8、[Mg4(H2nda)4(thf)4]、[Mg3(tpda)3]を単結晶として得た


考察

1: マグネシウムナノ粒子の高い反応性

空気・水との激しい反応から高反応性が示唆される

立体的に混雑した基質への適用が可能


2: 液体懸濁系の利点

常温〜120℃の温和な条件下で反応が進行  

収率40-80%と比較的高い収率


3: 既存手法との比較

グリニャール反応に比べ温和な条件

活性マグネシウムに比べ清浄な粒子が得られる


4: 新規配位子化合物の合成

多核錯体や希少な配位構造をもつ化合物が得られる

立体的にかさ高い配位子の導入が可能


5: 本手法の限界点

厳密な不活性条件下での取り扱いが必要

大量合成が困難

ナノサイズ効果の詳細は不明


結論

マグネシウムナノ粒子は、温和な条件下で立体的にかさ高い基質と反応できる

新規配位子化合物の液相合成ルートとして有用


将来の展望

サイズ制御などによる更なる反応性向上が期待される

実用化に向けた大量合成プロセス開発が必要

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