論文のタイトル: Reactive Magnesium Nanoparticles to Perform Reactions in
Suspension(反応性マグネシウムナノ粒子を懸濁液中で反応に利用する)
著者: Christian Ritschel, Carsten Donsbach, Claus Feldmann
雑誌: Chemistry - A European Journal
出版年: 2024
背景
1: マグネシウムの反応性
マグネシウムは非常に高い還元力を持つ(-2.34 V vs 標準水素電極)
しかしながら、バルクマグネシウムはMgO被膜で覆われており不活性化される
2: 従来の活性化手法の限界
グリニャール反応のためのヨウ素処理
ジブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物の使用
マイクロメートルサイズの"Rieke マグネシウム"
3: ナノマグネシウムの利点
ナノサイズ化によりマグネシウムの反応性が向上する可能性
液相合成による清浄なマグネシウムナノ粒子の調製
新規配位子化合物合成への応用が期待される
方法
1: 研究デザイン
液相法によるマグネシウムナノ粒子合成
MgBr2を出発原料とする
強力な還元剤としてリチウムナフタレニド/ビフェニルを使用
2: 合成条件
溶媒にTHFを使用
均一溶液から直接ナノ粒子を生成するLaMer機構
3: 特性評価
透過電子顕微鏡によるサイズ・形態観察
X線回折による結晶構造解析
FT-IR、元素分析による表面状態解析
4: マグネシウムナノ粒子の反応性評価
立体的にかさ高い有機ハロゲン化物との反応
酸性プロトンを有するアミン化合物との反応
結果
1: 合成されたマグネシウムナノ粒子
粒子径10.3 ± 1.7 nm (LiBP還元)、28.5 ± 4 nm (LiNaph還元)
単結晶構造 (d101 = 245±5 pm)
表面にTHFが吸着
2: ハロゲン化物との反応
1,1'-ビアダマンタンの生成 (収率80%)
[MgCl2(thf)2]・Ph6Si2 (収率70%) の生成
3: 酸性プロトンを有するアミン化合物との反応
9H-カルバゾール (Hcbz)、7-アザインドール (Hai)、1,8-ジアミノナフタレン (H4nda)、N,N’-ビス(α-ピリジル)-2,6-ジアミノピリジン (H2tpda)から、それぞれ[Mg(cbz)2(thf)3] 、[Mg4O(ai)6]・1.5C7H8、[Mg4(H2nda)4(thf)4]、[Mg3(tpda)3]を単結晶として得た
考察
1: マグネシウムナノ粒子の高い反応性
空気・水との激しい反応から高反応性が示唆される
立体的に混雑した基質への適用が可能
2: 液体懸濁系の利点
常温〜120℃の温和な条件下で反応が進行
収率40-80%と比較的高い収率
3: 既存手法との比較
グリニャール反応に比べ温和な条件
活性マグネシウムに比べ清浄な粒子が得られる
4: 新規配位子化合物の合成
多核錯体や希少な配位構造をもつ化合物が得られる
立体的にかさ高い配位子の導入が可能
5: 本手法の限界点
厳密な不活性条件下での取り扱いが必要
大量合成が困難
ナノサイズ効果の詳細は不明
結論
マグネシウムナノ粒子は、温和な条件下で立体的にかさ高い基質と反応できる
新規配位子化合物の液相合成ルートとして有用
将来の展望
サイズ制御などによる更なる反応性向上が期待される
実用化に向けた大量合成プロセス開発が必要
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