論文のタイトル: Triple Nucleophilic Head-to-Tail Cascade Polycyclization ofDiazodienals via Combination Catalysis: Direct Access toCyclopentane Fused Aza-Polycycles with Six-ContiguousStereocenters(新規(2E,4E)-ジアゾヘキサ-2,4-ジエナールを用いたカスケード環化反応による多環式化合物の直接的合成)
著者: Haribabu Chennamsetti, Kuldeep Singh Rathore, Saikat Chatterjee, Pratap Kumar Mandal, Sreenivas Katukojvala
雑誌: JACS Au
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
天然に存在するアザトリシクロ[6.2.1.04,11]ウンデカン骨格を有する多環式アルカロイドは、様々な生理活性を示す
これらの構造的複雑さから、効率的な全合成手法の開発が求められていた
2: 未解決の問題
単純な前駆体から直接的にアザトリシクロ[6.2.1.04,11]ウンデカン骨格を構築する一般的な方法がなかった
従来の環化反応では、連続する多段階が必要であった
3: 研究の目的
新規ビルディングブロック"ジアゾジエナール"の開発
ジアゾジエナールのカスケード環化反応による高効率的合成法の確立
方法
1: 研究デザイン
新規化合物の合成と反応性の評価
2: 基質の調製
ソルビン酸からジアゾジエナール前駆体の合成
さまざまなアルジミンおよびアリールアミンの調製
3: 主要な評価項目
ロジウム/ブレンステッド酸協奏触媒によるジアゾジエナールのカスケード環化反応
生成物の構造決定(NMR、X線結晶構造解析)
4: 解析手法
NMR、質量分析、X線結晶構造解析による生成物の同定
実験的および理論的手法による反応機構の解明
結果
1: ジアゾジエナールの合成と単離
多様なアルキルエステル体の調製に成功
安定な結晶として単離可能
2: カスケード環化反応
ロジウム/酸触媒によりジアゾジエナール、アルジミン、アリールアミンから単一の環化体が生成
6つの新規結合、3つの環、6つの連続する不斉中心が形成
3: 生成物の構造
X線結晶構造解析により、アザトリシクロ[6.2.1.04,11]ウンデカン骨格を確認
各種官能基化された多環式化合物が得られた
考察
1: 主要な発見
ジアゾジエナールがカスケード環化の良い基質となる点
ロジウム/Brønsted酸協奏触媒が鍵となる役割を果たした
複雑な環状構造を一段階で構築できる画期的な反応
高い原子経済性と位置・立体選択性が達成された
2: ジアゾジエナールの特徴
ジアゾ基とエナール部位の高い共役性が重要
独立した触媒反応では達成できない新規反応性
3: 反応機構
実験的・理論的検討から反応機構を提案
ジアゾジエナールの共役系と二次的π-π相互作用が、この複雑なカスケード環化反応を可能にしている
- 反応の開始
ロジウム触媒によりジアゾジエナールからロジウムカルベノイドが生成
カルベノイドがアルジミンと反応し、金属配位したジエニルアゾメチンイリド(DAY)を形成
- DAYの生成
ロジウムから放出されたDAYは電荷の非局在化によりトリエノレートへの異性化が競争的に進行
Brønsted酸存在下、DAYがアリールアミンと速やかに反応しアザトリエニルアゾメチンイリド(ATAY)を生成
- 6π電子環状反応
ATAYの立体特異的な6π電子環状反応によりトランス体ジヒドロピロールが生じる
この際、アリールとオレフィン間のπ-π相互作用が反応を促進
- アザマイケル付加とアザDiels-Alder反応
Brønsted酸によりイミニウムイオンが生成
アリールアミンのアザマイケル付加により中間体を与える
カチオン-πおよびπ-π相互作用によりコンホメーション変化を経て、aza Diels-Alder反応が進行しシクロペンタ縮環4環式化合物(CPAT)を与える
4: 研究の限界点
基質の一般性と置換基の適用範囲に制限がある
大規模生産への展開が課題
結論
ジアゾジエナールがカスケード環化反応の新たな基質となることを実証
協奏触媒によりアザトリシクロ[6.2.1.04,11]ウンデカン骨格を直接的に構築可能
立体制御された6連続不斉中心を有する多環式化合物を効率的に合成
将来の展望
ジアゾジエナールの応用拡大が期待される分野での貢献が期待される
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