2024年6月28日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0055~

論文のタイトル: Alkene 1,3-Difluorination via Transient Oxonium Intermediates(過渡的オキソニウム中間体を経由するアルケンの1,3-ジフルオロ化)

著者: Alice C. Dean, E. Harvey Randle, Andrew J. D. Lacey, Guilherme A. Marczak Giorio, Sayad Doobary, Benjamin D. Cons, Alastair J. J. Lennox

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024年


背景

1: アルケンの二重官能基化の重要性

アルケンの二重官能基化は分子の複雑性を急速に高める効率的な方法

 アルケンは一般的で安価な原料であり、有機合成の重要な構成要素

1,2-二重官能基化は広く研究、多くの有用な変換が報告されている

1,3-二重官能基化は未開拓の変換であり、興味深い官能基を生成


2: 1,3-二重官能基化の課題

1,3-二重官能基化は通常、金属触媒や官能基移動を必要とする

既存の方法は限られており、化学空間へのアクセスが制限されている

新しい反応性モードの開発が求められている

フッ素化された部分は生物活性化合物に有用な薬理学的効果をもたらす


3: 研究の目的

非活性化アルケンの1,3-二重フッ素化反応の開発

金属触媒や官能基移動に依存しない新しい反応性モードの探索

1,3-ジフルオロ-4-オキシアルカンという未報告の分子群の合成

スケールアップ可能で、様々な官能基と置換基を許容する反応の確立


方法

1: 反応の偶然の発見

アリルアリールエーテルのフルオロアリール化研究中に発見

ホモアリルエーテルを用いた際に予期せぬ生成物を観察

6員環生成物、7員環生成物、1,3-ジフルオロ化生成物を同定


2: 反応条件の最適化

HF:アミン比、HF当量、溶媒、温度を最適化

様々な超原子価ヨウ素/酸化剤システムを評価

PIFA (ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード)ベンゼンが最適な試薬

反応のグリーン度とコストを考慮して選択


結果

1: 反応条件の最適化結果

電気化学的に生成したp-Tol-IF2を用いて62%の収率を達成

商業的に入手可能なPIFAが最も高い収率(68%)を示した

反応のグリーン度(E-factor)とコストを考慮して最適条件を選択

酸化剤、超原子価ヨウ素種、[HF]がすべて反応に必要であることを確認


2: 基質適用範囲の探索結果

電子求引基を持つアレーン基質で良好な収率

ケトン、エステル、N-ヘテロ環などの官能基を許容

置換アルケンや二級アルキル(アリール)エーテルも適用可能

電子豊富な環を持つ基質では環化反応が優先


3: 立体選択性と反応のスケールアップ

置換アルケンでは優れた立体選択性を観察

アリル位のメチル基が立体選択性を向上させる

光学活性な出発物質を用いた場合、キラル情報が完全に保持される

反応は3 mmolスケールでも同等の収率で進行することを確認


考察

1: 反応機構の考察

オキソニウム中間体の形成が鍵となる段階

フッ化物イオンによるオキソニウムの開環が1,3-ジフルオロ化を引き起こす

DFT計算により、gauche配座のオキソニウム中間体が有利であることを示唆

軌道制御による選択的な1,3-ジフルオロ化が進行


2: 生成物の特性と安定性

1,3-ジフルオロ-4-オキシ化合物は新規な官能基として興味深い性質を示す

固体状態でフッ素原子がgauche-gauche配座をとる

双極子モーメントの最小化が配座制御に寄与

生成物は水、加熱、強塩基、強酸などの条件下で安定


結論

非活性化アルケンの1,3-二重フッ素化反応の開発に成功

過渡的オキソニウム中間体を経由する独自の反応機構を提案

未報告の1,3-ジフルオロ-4-オキシ官能基の合成を実現

スケールアップ可能で、様々な官能基と置換基を許容する反応を確立


将来の展望

生物活性分子や機能性材料への応用が期待される

0 件のコメント:

コメントを投稿