2024年6月18日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0045~

論文のタイトル: Ni-Catalyzed Electro-Reductive Cross-Electrophile Couplings of Alkyl Amine-Derived Radical

著者: Lars J. Wesenberg, Alessandra Sivo, Gianvito Vilé, Timothy Noël

雑誌: The Journal of Organic Chemistry

出版年: 2023


背景

1: 研究の背景

従来の金属触媒クロスカップリング反応は、主に平面的な化合物の合成に重点が置かれていた

近年、立体的な医薬品候補化合物の開発ニーズから、sp3を豊富に有する化合物の合成法開発が重要視される 


2: 未解決の問題点と研究目的  

交差求電子剤カップリング反応は当量の末端還元剤を必要とする

特に、アルキルピリジニウム塩(Katritzky塩)とハロゲン化アリールの直接的なクロスカップリングが未解決


3: 期待される成果

アミン由来のラジカル前駆体とアリールヨウ化物のニッケル触媒電気化学的カップリング反応の開発

持続可能で廃棄物の少ない新規合成手法の構築


方法

1: 研究デザイン

最適化実験を通じた反応条件の検討 

基質スコープの評価

シクロヘキシルアミン誘導体とアリールヨウ化物の組み合わせ


2: 基質一般性の検討

様々なアリールヨウ化物の評価

種々の二級アルキルアミン誘導体の検証  


3: 分析手法

NMR、単離収率

統計的手法によるデータ解析


結果

1: 代表的な基質の反応

シクロヘキシルアミン誘導体から様々な置換基をもつアリールベンゾエート誘導体が合成可能

電子求引性、電子供与性、ヘテロ環状置換基が許容される

種々の二級アルキルアミン誘導体(線状、分岐状、環状)からカップリング生成物が得られる


2: 応用的な反応例

保護されたアミノ酸や医薬品骨格の導入も可能

反応は非保護のアルコール基の存在下でも進行

メントールとエストラジオールのそれぞれから誘導された複雑な分子骨格への適用も可能


考察

1: 電気化学的手法の利点

廃棄物削減、持続可能性

ニッケル触媒系と電極の最適化による反応効率の向上


2: 先行研究との比較

従来法に比べ、有毒な還元剤が不要なグリーンな手法

フローケミストリーへの展開により、連続的な製造が可能に


3: 反応機構の考察

カトリツキー塩の一電子還元によりアミンラジカルカチオン種が発生

ラジカルカチオンがニッケル触媒に酸化的付加し、ニッケル(III)中間体を形成

ニッケル(III)中間体がアリールヨウ化物と酸化的付加してニッケル(III)中間体となる

高原子価ニッケル種から還元的除去が進行し、目的生成物と再酸化されたNi(I)種を与える

生成したNi(I)種が電極で還元されてNi(0)種に戻る

このNi(0)種がさらにカトリツキー塩を還元してサイクルが継続する

適切な配位子選択がラジカル捕捉の効率化に重要


4: 本手法の限界点

一級アミン誘導体への適用

ラジカルカチオン捕捉が遅い場合、アミンラジカルの二量化副反応が競合


結論

アミン由来ラジカルとアリールハロゲン化物の新規クロスカップリング反応の確立

持続可能な合成手法への貢献


将来の展望

医薬品や材料合成への応用が期待される

他の基質クラス(ケトン、アルデヒドなど)への適用拡大の可能性

本手法の工業的応用に向けたスケールアップ研究の必要性

フロー電気化学的手法の検討によるさらなる効率化が期待される


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