論文のタイトル: Ni-Catalyzed Electro-Reductive Cross-Electrophile Couplings of Alkyl Amine-Derived Radical
著者: Lars J. Wesenberg, Alessandra Sivo, Gianvito Vilé, Timothy Noël
雑誌: The Journal of Organic Chemistry
出版年: 2023
背景
1: 研究の背景
従来の金属触媒クロスカップリング反応は、主に平面的な化合物の合成に重点が置かれていた
近年、立体的な医薬品候補化合物の開発ニーズから、sp3を豊富に有する化合物の合成法開発が重要視される
2: 未解決の問題点と研究目的
交差求電子剤カップリング反応は当量の末端還元剤を必要とする
特に、アルキルピリジニウム塩(Katritzky塩)とハロゲン化アリールの直接的なクロスカップリングが未解決
3: 期待される成果
アミン由来のラジカル前駆体とアリールヨウ化物のニッケル触媒電気化学的カップリング反応の開発
持続可能で廃棄物の少ない新規合成手法の構築
方法
1: 研究デザイン
最適化実験を通じた反応条件の検討
基質スコープの評価
シクロヘキシルアミン誘導体とアリールヨウ化物の組み合わせ
2: 基質一般性の検討
様々なアリールヨウ化物の評価
種々の二級アルキルアミン誘導体の検証
3: 分析手法
NMR、単離収率
統計的手法によるデータ解析
結果
1: 代表的な基質の反応
シクロヘキシルアミン誘導体から様々な置換基をもつアリールベンゾエート誘導体が合成可能
電子求引性、電子供与性、ヘテロ環状置換基が許容される
種々の二級アルキルアミン誘導体(線状、分岐状、環状)からカップリング生成物が得られる
2: 応用的な反応例
保護されたアミノ酸や医薬品骨格の導入も可能
反応は非保護のアルコール基の存在下でも進行
メントールとエストラジオールのそれぞれから誘導された複雑な分子骨格への適用も可能
考察
1: 電気化学的手法の利点
廃棄物削減、持続可能性
ニッケル触媒系と電極の最適化による反応効率の向上
2: 先行研究との比較
従来法に比べ、有毒な還元剤が不要なグリーンな手法
フローケミストリーへの展開により、連続的な製造が可能に
3: 反応機構の考察
カトリツキー塩の一電子還元によりアミンラジカルカチオン種が発生
ラジカルカチオンがニッケル触媒に酸化的付加し、ニッケル(III)中間体を形成
ニッケル(III)中間体がアリールヨウ化物と酸化的付加してニッケル(III)中間体となる
高原子価ニッケル種から還元的除去が進行し、目的生成物と再酸化されたNi(I)種を与える
生成したNi(I)種が電極で還元されてNi(0)種に戻る
このNi(0)種がさらにカトリツキー塩を還元してサイクルが継続する
適切な配位子選択がラジカル捕捉の効率化に重要
4: 本手法の限界点
一級アミン誘導体への適用
ラジカルカチオン捕捉が遅い場合、アミンラジカルの二量化副反応が競合
結論
アミン由来ラジカルとアリールハロゲン化物の新規クロスカップリング反応の確立
持続可能な合成手法への貢献
将来の展望
医薬品や材料合成への応用が期待される
他の基質クラス(ケトン、アルデヒドなど)への適用拡大の可能性
本手法の工業的応用に向けたスケールアップ研究の必要性
フロー電気化学的手法の検討によるさらなる効率化が期待される
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