2024年6月24日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0051~

論文のタイトル: Lewis Acid-Driven Inverse Hydride Shuttle Catalysis

著者: Benjamin T. Jones and Nuno Maulide

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

逆水素化物シャトル触媒は、高効率で立体選択的なアルカロイド骨格合成を可能にする


2: 未解決の問題点

従来の方法では、強い電子求引基を持つアクセプターが必要

この制限により、アザビシクロ化合物の合成範囲が限られていた

アルカロイド天然物合成への応用が困難


3: 研究の目的

より幅広い電子アクセプターを使用可能にする手法の開発

ルイス酸を戦略的に導入し、反応の制約を解消する

不斉合成を簡略化するキラル補助基の利用

複雑なアザビシクロ化合物の効率的な一段階合成を実現する


4: 期待される成果

従来法では合成困難だった化合物の合成を可能にする

アルカロイド合成への応用範囲を拡大する

(−)-タシロミンのような天然物の簡便な全合成を実現する


方法

1: 反応の基本戦略

戦略A: 休止状態中間体の開環を促進するルイス酸の使用

戦略B: 困難なマイケル付加を促進するルイス酸の使用

TMSOTfやLiOTfなどのルイス酸を反応系に添加


2: アクリレートの環化反応

TMSOTfを用いてアクリレートの環化を促進

エナミンとアクリレートから複雑なアザビシクロ化合物を一段階で合成

様々な置換基を持つアクリレートとエナミンの組み合わせを検討


3: エノンの環化反応

LiOTfを用いてエノンの環化を促進

脂肪族エノン、芳香族エノン、ヘテロ環を含むエノンの反応を検討

置換エノンにはTMSOTfを使用し、より強力なルイス酸効果を利用


結果

1: アクリレートの環化結果

メチルアクリレートから86%収率でインドリジジンを合成

電子求引基を持つアリルアクリレートも高効率で反応

置換アクリレートと単置換エナミンの組み合わせも可能

様々な環状・非環状アミン由来のエナミンが適用可能


2: エノンの環化結果

脂肪族エノンから中程度〜良好な収率でアザビシクロ化合物を合成 

芳香族エノンは高効率で反応 

ヘテロ環を含むエノンも適用可能

置換エノンからは三置換インドリジジンを立体選択的に合成


3: 不斉合成への応用

キラルオキサゾリジノン補助基を用いた不斉合成を実現

tert-ブチル置換オキサゾリジノンで単一の光学活性ジアステレオマーを生成

様々な窒素含有化合物由来のエナミンに適用可能


考察

1: 主要な発見

ルイス酸の添加により、従来法では困難だった基質の環化が可能に

TMSOTfとLiOTfの使い分けにより、幅広い基質に対応

一段階反応で複雑なアザビシクロ骨格を高立体選択的に構築


2: 反応の特徴

キラル補助基を用いた簡便な不斉合成法の確立

従来法では合成困難だった多置換アザビシクロ化合物の合成を実現

反応機構の理解に基づく戦略的なルイス酸の選択と使用


3: 先行研究との比較

従来の逆水素化物シャトル触媒法の制限を克服

より幅広い電子アクセプターの使用が可能に

キラル補助基を用いた新しい不斉合成アプローチを提案


4: 研究の限界点

一部の基質で反応効率の低下が見られる

エナミンの反応性によっては特別な手順が必要

キラル補助基の選択が立体選択性に大きく影響


結論

ルイス酸駆動型逆水素化物シャトル触媒法の確立

複雑なアザビシクル化合物の効率的かつ立体選択的合成を実現

(−)-タシロミンの簡便な全合成への応用


将来の展望

今後、様々なアルカロイド天然物合成への応用が期待される

新しい触媒系や不斉合成法の更なる開発の可能性

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