2024年6月22日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0049~

論文のタイトル: Computed NMR Shielding Effects over Fused Aromatic/Antiaromatic Hydrocarbons

著者: Ned H. Martin、Mathew R. Teague、Katherine H. Mills

雑誌: Symmetry

巻: 2巻, p. 418-436

出版年: 2010年


背景

1: 研究の背景

芳香族性と反芳香族性は分子の構造的、エネルギー的、磁気的性質に関係している

核独立化学シフト(NICS)は芳香族性を評価する有用な指標である


2: 未解決の問題点

多環式芳香族/反芳香族炭化水素における芳香族性の程度を調べる必要がある

分子プローブを用いた遮蔽効果の測定は、芳香族性を評価する新しい手法である  


3: 研究の目的

多環式芳香族/反芳香族炭化水素上の遮蔽効果を計算する

結合長の変化、π電子の非局在化、電荷分布との関係を調べる


方法

1: 研究デザイン

量子化学計算(Gaussian 03)を用いた理論研究

GIAO HF/6-31G(d,p)レベルでの等方遮蔽値計算


2: 計算モデル 

ベンゼンとシクロブタジエンが縮合した多環式化合物

ベンゼンとイオン性の芳香族環が縮合した化合物  


3: 解析手法

分子プローブ(H2)を環平面上2.5Å に配置

等方遮蔽増分(Δσ)をプローブ位置で計算

3次元等方遮蔽増分曲面を作成


4: その他の解析

NICS(1)値の計算

結合長と自然電荷の解析


結果

1: 主要な結果

ベンゼン縮環体において、シクロブタジエン部分で大きな遮蔽効果

芳香環ベンゼン部分の遮蔽効果は小さい

シクロブタジエン縮環数が増えると、ベンゼン環の芳香族性は低下

イオン性の環が縮環すると、大きな遮蔽効果が見られる


2: 解析結果

Δσ値とNICS(1)値は良い相関を示した

結合長と電荷分布から芳香族性を支持する結果が得られた


考察

1: シクロブタジエン縮環の効果

ベンゼンとシクロブタジエンが縮環すると、ベンゼン環の芳香族性が低下する

これは環電流とπ電子の非局在化の減少による


2: イオン性の芳香環の縮環の効果

イオン性の芳香環の縮環は大きな遮蔽効果をもたらす 

正電荷は分子プローブの水素を引き寄せ、遮蔽を増大させる


3: 先行研究との比較

Fowlerらの環電流密度計算結果と一致している

Schleyerらの研究と同様に、π電子の非局在化が重要である


4: 研究の限界点

基底関数の制限による電子相関の無視

分散力の無視

溶媒効果を考慮していない


結論

多環式芳香族/反芳香族炭化水素の芳香族性を評価した

分子プローブ法はNICSと相関が良く、有用な手法である

結合長や電荷分布から芳香族性を理解できる


将来の展望

今後、より高水準の理論計算による検証が期待される

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