論文のタイトル: Computed NMR Shielding Effects over Fused Aromatic/Antiaromatic Hydrocarbons
著者: Ned H. Martin、Mathew R. Teague、Katherine H. Mills
雑誌: Symmetry
巻: 2巻, p. 418-436
出版年: 2010年
背景
1: 研究の背景
芳香族性と反芳香族性は分子の構造的、エネルギー的、磁気的性質に関係している
核独立化学シフト(NICS)は芳香族性を評価する有用な指標である
2: 未解決の問題点
多環式芳香族/反芳香族炭化水素における芳香族性の程度を調べる必要がある
分子プローブを用いた遮蔽効果の測定は、芳香族性を評価する新しい手法である
3: 研究の目的
多環式芳香族/反芳香族炭化水素上の遮蔽効果を計算する
結合長の変化、π電子の非局在化、電荷分布との関係を調べる
方法
1: 研究デザイン
量子化学計算(Gaussian 03)を用いた理論研究
GIAO HF/6-31G(d,p)レベルでの等方遮蔽値計算
2: 計算モデル
ベンゼンとシクロブタジエンが縮合した多環式化合物
ベンゼンとイオン性の芳香族環が縮合した化合物
3: 解析手法
分子プローブ(H2)を環平面上2.5Å に配置
等方遮蔽増分(Δσ)をプローブ位置で計算
3次元等方遮蔽増分曲面を作成
4: その他の解析
NICS(1)値の計算
結合長と自然電荷の解析
結果
1: 主要な結果
ベンゼン縮環体において、シクロブタジエン部分で大きな遮蔽効果
芳香環ベンゼン部分の遮蔽効果は小さい
シクロブタジエン縮環数が増えると、ベンゼン環の芳香族性は低下
イオン性の環が縮環すると、大きな遮蔽効果が見られる
2: 解析結果
Δσ値とNICS(1)値は良い相関を示した
結合長と電荷分布から芳香族性を支持する結果が得られた
考察
1: シクロブタジエン縮環の効果
ベンゼンとシクロブタジエンが縮環すると、ベンゼン環の芳香族性が低下する
これは環電流とπ電子の非局在化の減少による
2: イオン性の芳香環の縮環の効果
イオン性の芳香環の縮環は大きな遮蔽効果をもたらす
正電荷は分子プローブの水素を引き寄せ、遮蔽を増大させる
3: 先行研究との比較
Fowlerらの環電流密度計算結果と一致している
Schleyerらの研究と同様に、π電子の非局在化が重要である
4: 研究の限界点
基底関数の制限による電子相関の無視
分散力の無視
溶媒効果を考慮していない
結論
多環式芳香族/反芳香族炭化水素の芳香族性を評価した
分子プローブ法はNICSと相関が良く、有用な手法である
結合長や電荷分布から芳香族性を理解できる
将来の展望
今後、より高水準の理論計算による検証が期待される
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