論文のタイトル: C–heteroatom coupling with electron-rich aryls enabled by nickel catalysis and light
著者: Shengyang Ni, Riya Halder, Dilgam Ahmadli, Edward J. Reijerse, Josep Cornella & Tobias Ritter
雑誌: Nature Catalysis
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
光エネルギーを利用し、熱化学では困難な酸化状態を実現
アニリンやアリールエーテルの合成に応用されている
2: 未解決の問題
電子豊富なアリール求電子剤は多くの変換の範囲外
単純なニッケル系での酸化的付加が遅い
特殊な電子豊富配位子がない場合、触媒分解が起こる
3: 研究の目的
電子豊富なアリール求電子剤の問題に概念的解決策を提供
アリールチアントレニウム塩を用いたC-ヘテロ原子結合形成反応の開発
アミノ化、酸素化、硫黄化、ハロゲン化反応への応用
方法
1: 反応設計
アリールチアントレニウム塩の酸化還元特性を利用
チアントレニウム部位が主にSET反応性を決定
単純なNiCl2を光照射下で使用
2: 実験手順
アリールチアントレニウム塩と求核剤を反応容器に導入
NiCl2・6H2O触媒をDMA溶媒中で使用
青色LED(456 nm)照射下、25℃で反応
3: 分析方法
1H NMRによる収率測定
フラッシュカラムクロマトグラフィーまたは分取TLCによる精製
電子常磁性共鳴(EPR)分光法によるNi(I)種の観測
結果
1: アミノ化反応の最適化
NiCl2・6H2O (2 mol%)、ピペリジン (2当量)、DMA溶媒で最高収率
光照射が必須、暗所では反応進行せず
電子豊富・中性アリールチアントレニウム塩で50-93%収率
2: 基質適用範囲
様々な官能基(スルホンアミド、アミド、シクロプロピル等)に適用可能
複雑な医薬品様分子(フルルビプロフェン、ネフィラセタム等)にも適用
パラ位、メタ位置換基を持つ基質で反応進行
3: C-O、C-S、C-ハロゲン結合形成
メタノールを求核剤としたメトキシ化反応が可能
アルコール、フェノール、チオールも反応に参加
ヨウ素化、臭素化、塩素化反応も同じ触媒系で実現
考察
1: 主要な発見
電子豊富アリール求電子剤のC-ヘテロ原子カップリングを実現
単純なニッケル塩と光照射のみで反応が進行
幅広い基質適用範囲と高い官能基許容性を示す
2: 反応機構の考察
Ni(I)種の生成が光照射により促進される
アリールチアントレニウム塩へのSETが酸化的付加の鍵
Ni(I)/Ni(III)サイクルが反応の駆動力となる
3: 既存手法との比較
従来のPd触媒系では困難だった電子豊富基質に適用可能
配位子不要で室温反応が可能
合成後期での誘導体化に適した穏和な条件
4: 研究の限界点
オルト置換基質は反応範囲外
電子不足基質では副反応(脱官能基化)が競合
フッ素化反応への拡張は未達成
結論
電子豊富アリール基質のC-ヘテロ原子カップリング法を開発
単純なNi(I)/Ni(III)レドックスサイクルとアリールチアントレニウム塩の組み合わせが鍵
将来の展望
医薬品合成や材料科学への応用が期待される
今後の課題:反応機構の詳細解明と基質適用範囲の更なる拡大
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