2024年6月26日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0053~

論文のタイトル: C–heteroatom coupling with electron-rich aryls enabled by nickel catalysis and light

著者: Shengyang Ni, Riya Halder, Dilgam Ahmadli, Edward J. Reijerse, Josep Cornella & Tobias Ritter

雑誌: Nature Catalysis

出版年: 2024年


背景

1: 研究の背景

ニッケル光レドックス触媒による炭素-ヘテロ原子結合形成が発展

光エネルギーを利用し、熱化学では困難な酸化状態を実現

アニリンやアリールエーテルの合成に応用されている


2: 未解決の問題

電子豊富なアリール求電子剤は多くの変換の範囲外

単純なニッケル系での酸化的付加が遅い

特殊な電子豊富配位子がない場合、触媒分解が起こる


3: 研究の目的

電子豊富なアリール求電子剤の問題に概念的解決策を提供

アリールチアントレニウム塩を用いたC-ヘテロ原子結合形成反応の開発

アミノ化、酸素化、硫黄化、ハロゲン化反応への応用


方法

1: 反応設計

アリールチアントレニウム塩の酸化還元特性を利用

チアントレニウム部位が主にSET反応性を決定

単純なNiCl2を光照射下で使用


2: 実験手順

アリールチアントレニウム塩と求核剤を反応容器に導入

NiCl2・6H2O触媒をDMA溶媒中で使用

青色LED(456 nm)照射下、25℃で反応


3: 分析方法

1H NMRによる収率測定

フラッシュカラムクロマトグラフィーまたは分取TLCによる精製

電子常磁性共鳴(EPR)分光法によるNi(I)種の観測


結果

1: アミノ化反応の最適化

NiCl2・6H2O (2 mol%)、ピペリジン (2当量)、DMA溶媒で最高収率

光照射が必須、暗所では反応進行せず

電子豊富・中性アリールチアントレニウム塩で50-93%収率


2: 基質適用範囲

様々な官能基(スルホンアミド、アミド、シクロプロピル等)に適用可能

複雑な医薬品様分子(フルルビプロフェン、ネフィラセタム等)にも適用

パラ位、メタ位置換基を持つ基質で反応進行


3: C-O、C-S、C-ハロゲン結合形成

メタノールを求核剤としたメトキシ化反応が可能

アルコール、フェノール、チオールも反応に参加

ヨウ素化、臭素化、塩素化反応も同じ触媒系で実現


考察

1: 主要な発見

電子豊富アリール求電子剤のC-ヘテロ原子カップリングを実現

単純なニッケル塩と光照射のみで反応が進行

幅広い基質適用範囲と高い官能基許容性を示す


2: 反応機構の考察

Ni(I)種の生成が光照射により促進される

アリールチアントレニウム塩へのSETが酸化的付加の鍵

Ni(I)/Ni(III)サイクルが反応の駆動力となる


3: 既存手法との比較

従来のPd触媒系では困難だった電子豊富基質に適用可能

配位子不要で室温反応が可能

合成後期での誘導体化に適した穏和な条件


4: 研究の限界点

オルト置換基質は反応範囲外

電子不足基質では副反応(脱官能基化)が競合

フッ素化反応への拡張は未達成


結論

電子豊富アリール基質のC-ヘテロ原子カップリング法を開発

単純なNi(I)/Ni(III)レドックスサイクルとアリールチアントレニウム塩の組み合わせが鍵


将来の展望

医薬品合成や材料科学への応用が期待される

今後の課題:反応機構の詳細解明と基質適用範囲の更なる拡大

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