2024年12月6日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0208~

論文のタイトル: Controlling the Helical Pitch of Foldamers through Terminal Functionality: A Solid State Study(末端官能基によるフォルダマーのらせんピッチの制御:固体状態の研究)

著者: Alexander R. Davis, Sena Ozturk, Colin C. Seaton, Louise Male, and Sarah J. Pike*

雑誌名: Chemistry - A European Journal

巻: e202402892

出版年: 2024

DOI: https://doi.org/10.1002/chem.202402892


背景

1: フォルダマーとらせん構造の重要性

  • らせん構造は自然界に広く存在し、生体分子が機能を発揮するために不可欠
  • フォルダマーと呼ばれる合成らせんオリゴマーは、自然界のらせん構造を模倣することが可能
  • フォルダマーはセンサー、触媒、材料化学など、幅広い分野で応用されている
  • フォルダマーの二次構造は、その活性と機能に影響を与えるため、らせん構造のサイズと形状を制御する新しい方法の開発が重要

2: フォルダマーのらせんピッチ制御の現状

  • フォルダマーのらせんピッチを制御する体系的な研究は不足している
  • 従来の方法は、自己組織化を利用して二重らせん構造を形成することで、らせんピッチを調整していた
  • 自己組織化は設計が難しく、すべての用途に適しているわけではない

3: 研究の目的

  • 末端官能基を系統的に変化させることで、フォルダマーのらせんピッチを制御できることを実証する
  • 単一鎖フォルダマーを用いることで、自己組織化に頼らずにらせんピッチを制御する
  • 末端官能基がフォルダマーの固体状態の挙動に与える影響を、結晶学的解析を用いて明らかにする

方法

1: 研究デザイン

  • オルト-アゾベンゼン/2,6-ピリジンジカルボキサミドフォルダマーのライブラリを用いて研究を行う
  • 末端官能基として、カルボキシベンジル (Cbz)、ジフェニルカルバミル (N(Ph)2)、フェロセン (Fc)、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc) を選択
  • これらの官能基は、π-πスタッキング、C-H⋯O、C-H⋯π水素結合などの超分子相互作用を形成する傾向が異なる

2: フォルダマーの合成

  • フォルダマー 110 は、多段階手順で合成
  • まず、o-フェニレンジアミン 11 をジ-tert-ブチルジカルボネート ((Boc)2O) で処理してモノ-Boc 保護を行い、12 を得た
  • 化合物 12 のアミノ基を、CH2Cl2/H2O の二相系反応混合物中でオキソン存在下でニトロソ基に変換し、13 を得た
  • 化合物 1113 を酢酸存在下で反応させて、非対称アゾベンゼン 14 を得た
  • 化合物 14 をピリジン-2,6-ジカルボニルクロリドおよびピリジンと 48 時間反応させて、目的のジ Boc 末端フォルダマー10 を得た
  • 化合物 8 は、14 をトリフルオロ酢酸で処理することで得た非対称の Fc/NH2基を持つアゾベンゼン 15 を同様にピリジン-2,6-ジカルボニルクロリドおよびピリジンと反応させて得た

3: 結晶構造解析

  • 合成したフォルダマーの単結晶 X 線回折分析を行う
  • らせんピッチは、各末端基のカルボニルの C 原子から C 原子までを測定
  • 超分子相互作用を特定し、それらが固体状態の挙動に与える影響を評価

結果

1: フォルダマーの固体状態挙動

  • すべてのフォルダマー (110) は、固体状態で安定ならせん構造をとることが確認された
  • らせん構造は、中心の 2,6-ピリジンジカルボキサミドユニットの周りの折り畳みを促進する syn-syn コンフォメーションと、アゾベンゼンユニットのらせんを拡張する E-配座によって安定化
  • ほとんどのフォルダマー (15710) は、単位格子内に M-らせんと P-らせんを同量含んでいる
  • フォルダマー 6P-らせんのみを示した

2: Cbz 末端フォルダマーのらせんピッチ

  • 少なくとも 1 つの末端 Cbz 基を持つフォルダマー (14) のらせんピッチは 3.4–3.7 Å 
  • これらのフォルダマーは、密ならせん構造をとった
  • Cbz 基は、π-πスタッキング相互作用や C-H⋯O 水素結合などのさまざまな分子間相互作用に関与していた

3: N(Ph)2、Fc、Boc 末端フォルダマーのらせんピッチ

  • N(Ph)2 末端フォルダマー (57) のらせんピッチは 3.9–5.7 Å で、Cbz 末端フォルダマーよりも大きくなった
  • Fc/Boc 末端フォルダマー (810) は、5.6 Å (8)、6.3 Å (9)、7.3 Å (10) と、さらに大きならせんピッチを示した
  • これらのフォルダマーでは、末端官能基が関与する超分子相互作用が、より緩く、より広がったらせん構造の形成に寄与していた

考察

1: 末端官能基がフォルダマーのらせんピッチに与える影響

  • 末端官能基は、フォルダマーの固体状態のらせんピッチに大きな影響を与える
  • Cbz 基は、密ならせん構造の形成を促進
  • N(Ph)2 基は、Cbz 基よりも柔軟性が低いため、らせんピッチはやや大きくなる
  • Fc 基と Boc 基は、かさ高い性質と超分子相互作用のために、最も大きならせんピッチをもたらす

2: らせんピッチと超分子相互作用の関係

  • Cbz 末端フォルダマーでは、Cbz 基の柔軟性により、らせん構造を崩すことなく、さまざまな超分子相互作用を形成することができる
  • N(Ph)2 末端フォルダマーでは、N(Ph)2 基の剛性と立体障害が、結晶充填とらせんピッチに影響を与える
  • Fc 末端フォルダマーと Boc 末端フォルダマーでは、末端官能基が関与する π-πスタッキング相互作用や C-H⋯O 水素結合が、より緩く、より広がったらせん構造の形成に寄与している

3: らせんピッチ制御の重要性

  • フォルダマーのらせんピッチを制御することで、特定の形状とサイズを持つフォルダマーを設計することが可能
  • これは、固体状態での用途において特に重要

4: 研究の限界点

  • 結晶充填を予測することは困難であり、すべてのフォルダマーでらせんピッチを正確に予測することはできない
  • 単一回転フォルダマーに焦点を当てており、複数回転フォルダマーへの適用可能性はさらに調査する必要がある

結論

  • 末端官能基がオルト-アゾベンゼン/2,6-ピリジンジカルボキサミドフォルダマーのらせんピッチに大きな影響を与えることを実証
  • 単純な末端基の変更により、幅広いらせんピッチ (3.4–7.3 Å) を持つフォルダマーを合成することができた
  • この知見は、特定の形状とサイズを持つ機能性フォルダマーの設計に役立つ

将来の展望

  • 複数回転フォルダマーにおける末端官能基の影響を調査し、らせんピッチ制御の一般性をさらに高める

0 件のコメント:

コメントを投稿