2024年12月10日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0212~

論文のタイトル: [18F]Trifluoroiodomethane – Enabling Photoredox-mediated Radical [18F]Trifluoromethylation for Positron Emission Tomography([18F]トリフルオロヨードメタン:陽電子放射断層撮影のための光レドックスを介したラジカル [18F]トリフルオロメチル化を可能にする)
著者: Lukas Veth,* Albert D. Windhorst, and Danielle J. Vugts
雑誌名: Angewandte Chemie International Edition
巻: Early View, e202416901
出版年: 2024
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.joc.4c01729

背景

1: 陽電子放射断層撮影(PET)とは?

  • PETは、様々な疾患の診断や創薬において使用される非侵襲的な画像技術
  • 体内で標的構造と相互作用する放射性トレーサー(放射性標識化合物)を利用
  • PETで使用される陽電子放出放射性核種の中で、¹⁸Fは、好ましい特性(半減期が109.8分、陽電子エネルギーが低い)と医薬品化合物における普及率のために、重要な位置を占めている

2: ¹⁸Fを用いたトリフルオロメチル基の標識の課題

  • 医薬品化合物によく見られるトリフルオロメチル(CF₃)基の¹⁸F標識は特に困難
  • 既存の¹⁹Fの導入戦略は、¹⁸F標識には容易に適用不可
  • [¹⁸F]フッ化物を用いるアプローチは、多くの場合、特定の前駆体の合成を必要とし、アクセス可能な化学空間が制限される
  • また、¹⁸F-¹⁹F同位体交換に起因する低いモル活性が得られることがある

3: 研究の目的

  • ラジカルトリフルオロメチル化反応による、これまでアクセスできなかった化学空間へのアクセスを可能にする、新しい¹⁸F標識試薬の開発
  • 高いモル活性を持ち、様々な反応に適用可能な¹⁸F標識試薬を、30分以内で合成する

方法

1: [¹⁸F]トリフルオロヨードメタン(CF₂¹⁸FI)の合成

  • [¹⁸F]フルオロホルム(CHF₂¹⁸F)を出発物質として、塩基とヨウ素源の存在下で反応させることで、CF₂¹⁸FIを合成
  • 様々な塩基、ヨウ素源、溶媒をスクリーニングし、最適な反応条件を決定

2: ラジカル[¹⁸F]トリフルオロメチル化反応への応用

  • 合成したCF₂¹⁸FIを用いて、光レドックス触媒反応によるα-トリフルオロメチルケトンとトリフルオロメチルスルフィドを合成
  • 様々な基質を用いて反応を行い、官能基許容性を評価

3: 反応条件の最適化

  • α-トリフルオロメチルケトンの合成には、光レドックス触媒として[Ru(bpy)₃]Cl₂・6H₂O、塩基としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を使用
  • トリフルオロメチルスルフィドの合成には、光レドックス触媒として[Ru(bpy)₃]Cl₂・6H₂O、塩基として1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)を使用
  • 反応時間、温度、溶媒などを最適化

結果

1: CF₂¹⁸FIの合成

  • 最適化された反応条件を用いることで、CF₂¹⁸FIを25分以内に、良好な放射化学的収率(67±5%)および高いモル活性(>99% RCP)で合成することができた
  • この結果は、CF₂¹⁸FIがPETトレーサー合成のための有望なビルディングブロックであることを示した

2: α-トリフルオロメチルケトンの合成

  • CF₂¹⁸FIを用いることで、様々な置換基を持つα-トリフルオロメチルケトンを、中程度から良好な放射化学的変換率(RCC、22-96%)で合成することができた
  • 電子供与基および電子求引基の両方を含む基質に対して、反応は良好な結果を示した
  • 生物活性化合物であるプロベネシドおよびフェブキソスタットの誘導体の放射性標識も達成された

3: トリフルオロメチルスルフィドの合成

  • CF₂¹⁸FIを用いることで、様々な置換基を持つトリフルオロメチルスルフィドを、高収率(RCC、65-100%)で合成することができた
  • 芳香族および脂肪族の両方の基質に対して、反応は良好な結果を示した
  • 従来の方法と比較して、前駆体の使用量を大幅に削減することができた
  • 高いモル活性を達成することができた

考察

1: CF₂¹⁸FIの有用性

  • CF₂¹⁸FIが高モル活性で合成可能であり、光レドックス触媒反応によるラジカル¹⁸Fトリフルオロメチル化に利用できることを実証
  • CF₂¹⁸FIは、これまで合成が困難であった¹⁸F標識化合物の合成を可能にする、強力なツール

2: α-トリフルオロメチルケトンの合成の意義

  • α-トリフルオロメチルケトンは、様々な生物活性化合物に存在する重要な構造モチーフ
  • 開発された方法は、α-トリフルオロメチルケトンの¹⁸F標識化を可能にした
  • これは、創薬やPETイメージングにおける新たな可能性を開く

3: トリフルオロメチルスルフィド合成の利点

  • 従来の方法と比較して、開発された方法は、前駆体の使用量が少ない、高いモル活性を達成できる、芳香族および脂肪族の両方の基質に適用できるなどの利点がある

4: 先行研究との関連性

  • 光レドックス触媒を用いたラジカルトリフルオロメチル化反応は、近年有機化学において広く研究されている
  • しかし、光レドックス触媒を用いた¹⁸Fトリフルオロメチル化反応は、これまで報告されていなかった
  • 光レドックス触媒を用いた¹⁸Fトリフルオロメチル化反応の例であり、この分野における重要な進歩

結論

  • [¹⁸F]トリフルオロヨードメタン(CF₂¹⁸FI)の効率的な合成法を開発し、光レドックス触媒を用いたラジカル[¹⁸F]トリフルオロメチル化反応によるα-トリフルオロメチルケトンおよびトリフルオロメチルスルフィドの合成に成功した
  • これらの化合物は、これまで¹⁸F標識化が困難であったため、PETトレーサー開発に新たな可能性をもたらす

将来の展望

  • CF₂¹⁸FIを用いたより多様な¹⁸F標識化合物の合成法が開発され、PETイメージング研究がさらに発展することが期待される

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