著者: Miroslav Labaj, Zdeněk Jalový,* Robert Matyáš, Jiří Nesveda, Jakub Mikulášťík, and Adam Votýpka
雑誌名: Organic Process Research & Development
巻: Volume 28, Issue 11, 4091–4098
出版年: 2024
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.oprd.4c00364
背景
1: アゾテトラゾレートの用途
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物 (Na2AzT·5H2O) は、様々なアゾテトラゾールエナジー塩の出発物質として使用される
- 鉛フリーの一次爆薬や安全システムの膨張剤として使用される
- 特に、グアニジニウムアゾテトラゾレート (GZT) は、エアバッグや消火剤として使用される
2: グアニジニウムアゾテトラゾレート (GZT) の重要性
- GZTは、優れた化学的安定性と機械的刺激に対する非感受性から、高窒素アゾテトラゾレートの中で最も適している
- エアバッグ やシートベルトプリテンショナー などの安全システムのガス発生剤として幅広く応用されている
- 花火への添加剤、赤外線デコイの成分、高性能ハイブリッドロケット燃料への添加剤など、他の用途にも使用される
3: 研究の課題
- GZTは、通常、中間体であるナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートから調製される
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物は、より感受性の高い形に容易に変化するため、取り扱いに危険が伴う
- 本研究では、五水和物が低水和物に変化する条件と、それらの機械的刺激に対する感受性に焦点を当てる
- 危険なナトリウム塩の単離を必要としない、GZTのワンステップ製造プロセスを開発することを目的とする
方法
1: ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの感受性評価
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートとその水和物の、衝撃および摩擦に対する感受性を測定
- 感受性は、衝撃エネルギーと摩擦力に対する開始確率の依存性として表す
- 測定物質の結晶のサイズと形状を考慮 (五水和物:130−1100 μm、二水和物:90−600 μm、無水物:120−800 μm)
- 結果を、一次爆薬である雷酸水銀 (MF) および高爆発性である四硝酸ペンタエリトリトール (PETN) の感受性と比較
2: ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート水和物の変化
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物の結晶水の損失に影響を与える要因を調査
- 温度、空気湿度、使用される溶媒の影響を評価
- 示差熱分析 (DTA) および熱重量分析 (TG) を用いて、温度上昇による結晶水の損失を調査
3: グアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートのワンポット合成
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートを単離することなく、グアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートをワンポットで合成する新しい方法を開発
- 最初のステップは、公表されている方法に基づいてナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートを調製
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートを温かい反応混合物に溶解させたまま、塩酸グアニジンを添加して、グアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートを直接沈殿させる
- 様々な条件下でのグアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートの収率を評価
結果
1: 衝撃感受性
- 無水塩と二水和物のナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの衝撃感受性曲線を、雷酸水銀 (MF) および四硝酸ペンタエリトリトール (PETN) と比較した結果、ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物は、衝撃に対して完全に非感受性だった
- 二水和物の衝撃感受性はPETNの半分だったが、無水塩はPETNよりもわずかに感受性が高かった
- グアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレート (GZT) は、衝撃に対して完全に非感受性だった
2: 摩擦感受性
- 無水塩と二水和物のナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの摩擦感受性曲線を、雷酸水銀 (MF) および四硝酸ペンタエリトリトール (PETN) と比較した結果、ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物は、摩擦に対して完全に非感受性ではなかった (過去の文献では、非感受性であると報告されている例もある)
- 二水和物の感受性は非常に高く、PETNに近い値を示した
- 無水塩は摩擦に対して非常に感受性が高く、その感受性は雷酸水銀よりも高かった
- GZTは、摩擦に対しても完全に非感受性だった
3: ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート水和物の変化
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物のDTAおよびTGサーモグラムは、様々な水和物の出現領域を示した
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物のDTAおよびTGサーモグラムから、二水和物の生成は55℃で起こり、3つの水分子が脱離することが示された
- さらなる脱水は120℃で起こり、無水物が生成された
- 分解は220℃で起こり、爆発を伴った
考察
1: ナトリウム塩の危険性
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート二水和物と無水物は、どちらも感受性の高い物質
- これらの物質の取り扱いと保管は危険であり、他の爆発物と同じリスクがある
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレート五水和物は、温度上昇、低湿度、有機溶媒の影響により、二水和物または無水塩に変化する可能性がある
- これらの変化により、物質は機械的刺激に敏感になり、取り扱いの安全性が損なわれる
2: ナトリウム塩の状態監視の重要性
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの状態は、保管および取り扱い中に定期的に監視する必要がある
- 結晶水に関連する変化は、赤外分光法、熱分析法、またはカールフィッシャー法によって認識することが可能
- 赤外分光法は、ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの水和物形態を識別するための迅速かつ簡単な方法
3: ワンポット合成の利点
- 本研究では、5-アミノテトラゾールと塩酸グアニジンから、ワンポットプロセスでグアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートを調製する方法を開発した
- このワンポット合成により、危険なナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートの単離を回避することが可能
- 合成は迅速かつ安全であり、収率はナトリウム塩を経由する従来の2段階プロセスよりもさらに高い
4: 今後の研究と応用
- グアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートは、他のアゾテトラゾレート塩の出発物質として使用することが可能
- 5,5′-アゾテトラゾレートの亜鉛塩と銀塩の合成に成功
結論
- ナトリウム 5,5′-アゾテトラゾレートは、取り扱いの安全性を高めるために、保管および取り扱い中に注意深く監視する必要がある
- 危険なナトリウム塩を回避し、取り扱いの安全なGZTを他の5,5′-アゾテトラゾール塩の出発物質として使用することを推奨
- 本研究で開発されたグアニジニウム 5,5′-アゾテトラゾレートのワンポット合成は、迅速、安全、高収率であり、この分野に大きく貢献する
将来の展望
- 今後の研究では、他の金属塩の合成と特性を調査する必要がある
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