論文のタイトル: Bifunctional Iminophosphorane Catalyzed Enantioselective Ketimine Phospha-Mannich Reaction(二機能性イミノホスホラン触媒を用いたケチミンのエナンチオ選択的ホスファ-マンニッヒ反応)
著者: Gerard P. Robertson, Alistair J. M. Farley, Darren J. Dixon*
雑誌: Synlett
巻: 27, 21-24
出版年: 2016
背景
1: 研究の背景(α-アミノホスホン酸誘導体の重要性)
α-アミノホスホン酸誘導体はα-アミノ酸類似体として広く使用
抗菌、抗HIV、プロテアーゼ阻害など様々な生物活性を示す
生物学的に重要な構成要素であり、絶対配置が重要
エナンチオ選択的合成法の改良が望まれている
2: 未解決の課題(ケチミンのホスファ-マンニッヒ反応の課題)
ケチミンは求電子性が低く、触媒による基質活性化が困難
エナンチオ面の区別が難しい
金属イオン触媒や化学量論量の添加剤が必要
活性化されたケチミン求電子剤の使用が必要
3: 研究の目的(新規二機能性イミノホスホラン触媒の開発)
未活性化N-DPPケチミンのエナンチオ選択的ホスファ-マンニッヒ反応の開発
有機超塩基と水素結合供与基を組み合わせた新規触媒の設計
金属を用いない環境調和型の反応条件の確立
高収率かつ中程度のエナンチオ選択性の達成
方法
1: 実験方法(最適化)
モデル反応: アセトフェノン由来のN-DPPケチミンとジエチルホスファイトの1,2-付加
二機能性イミノホスホラン(BIMP)触媒の評価
溶媒、濃度、温度などの反応条件の最適化
生成物の収率とエナンチオ選択性の評価
2: 触媒設計(二機能性イミノホスホラン(BIMP)触媒)
トリアリールイミノホスホラン部位を有する新規有機超塩基触媒
水素結合供与基としてチオウレア部位を導入
キラルな骨格上に超塩基と水素結合供与基を配置
触媒の構造最適化(アミノ酸残基、リン原子上の置換基など)
3: 分析方法(生成物の分析)
1H NMRおよび31P NMRによる構造解析
キラルHPLCによるエナンチオ選択性の決定
高分解能質量分析(HRMS)による分子量の確認
比旋光度測定による絶対配置の決定
結果
1: 最適化結果
最適反応条件
• 最適触媒: トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン由来のBIMP触媒1b
• 溶媒: ジエチルエーテル
• 濃度: 0.05 M
• 温度: 室温
• 反応時間: 24時間
• 触媒量: 10 mol%
2: ケチミン基質への適用範囲
電子豊富および電子不足芳香族ケチミンに適用可能
収率は主に>99%
エナンチオ選択性は41〜62% ee
3-ピリジル基質でも良好な結果 (>99% 収率, 53% ee)
対応するエチル類縁体では71% eeを達成
考察
1: 有機触媒によるケチミンのホスファ-マンニッヒ反応
未活性化N-DPPケチミンに対する初めての有機触媒的エナンチオ選択的ホスファ-マンニッヒ反応
二機能性イミノホスホラン(BIMP)触媒が高い反応性と中程度のエナンチオ選択性を示す
金属触媒や化学量論量の添加剤を必要としない環境調和型の反応
2: 触媒構造の最適化
トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン由来の触媒1bが最も高い活性を示す
キラル骨格上のアミノ酸残基が選択性に大きな影響を与える
水素結合供与基としてのチオウレア部位が重要な役割を果たす
3: 先行研究との比較
銅(I)触媒を用いたShibasakiらの方法: 高エナンチオ選択性だが金属触媒が必要
Nakamuraらの方法: シンコナアルカロイド触媒と過剰量のNa2CO3が必要
Chimniらの方法: 活性化されたイサチン由来ケチミンに限定
本研究: 金属フリー、未活性化ケチミンに適用可能、中程度のエナンチオ選択性
4: 研究の限界点
エナンチオ選択性は最高で71% eeにとどまる
芳香族ケチミンに適用範囲が限定されている
反応時間が比較的長い (24時間)
触媒量が比較的多い (10 mol%)
結論
未活性化ケチミンのエナンチオ選択的ホスファ-マンニッヒ反応を初めて実現
二機能性イミノホスホラン触媒の有用性を実証
α-アミノホスホン酸誘導体の新しい合成法を提供
将来の展望
触媒設計の最適化によるエナンチオ選択性の向上
他の難反応性求電子剤への応用が期待される
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