論文のタイトル: A Double-Walled Tetrahedron with AgI4 Vertices Binds Different Guests in Distinct Sites(異なるゲストを異なる部位に結合するAgI4頂点を持つ二重壁四面体)
著者: Samuel E. Clark, Dr. Andrew W. Heard, Dr. Charlie T. McTernan, Dr. Tanya K. Ronson, Dr. Barbara Rossi, Petr Rozhin, Prof. Silvia Marchesan, Prof. Jonathan R. Nitschke
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
巻: Volume62, Issue16, e202301612
出版年: 2023年
背景
1: 研究の背景
金属-有機ケージは、分子認識や化学分離に応用可能
内部空洞を持ち、ゲストを選択的に結合できる
サブコンポーネント自己集合により複雑な3次元構造を形成
AgIは構造金属イオンとして有用な可能性がある
2: 未解決の課題
多金属クラスターを頂点とする自己組織化構造の開発が進行中
AgIクラスターを含む構造の合理的設計戦略が必要
既存のAgI構造は内部空間が比較的小さく、ゲスト結合に制限
3: 研究目的
AgI4クラスターを頂点とする新しい二重壁四面体構造の開発
内部および外部のゲスト結合部位の特性評価
ハロゲン交換による内部空洞体積の調整可能性の検討
方法
1: 合成方法
1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン(A)と2-ホルミル-1,8-ナフチリジン(B)を使用
AgIビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとテトラ-n-ブチルアンモニウムヨウ化物を添加
サブコンポーネント自己集合により四面体ケージ1を形成
2: 構造解析
1H NMRスペクトル解析で2つの異なるリガンド環境を確認
DOSY NMRで単一の離散構造を確認
質量分析で[Ag16I4L8]12+組成を確認
単結晶X線回折で分子構造を決定
3: ゲスト結合評価
小さな中性および陰イオン性化合物のスクリーニング
1H NMRシフトによる結合の確認
内部および外部結合モードの区別
結合定数の算出
4: ハロゲン交換実験
ヨウ化物、臭化物、塩化物を用いたケージの合成
1H NMRによるハロゲン交換過程のモニタリング
交換後の内部空洞体積の推定
結果
1: 構造の特徴
T対称二重壁四面体構造を形成
各頂点に[Ag4I]3+クラスターを含む
内部と外部のリガンドが異なる配位様式を示す
内部空洞体積は103 Å3と算出
2: ゲスト結合特性
陰イオン性ゲストが内部空洞に結合 (Ka = 2-9 × 102 M-1)
小さな芳香族分子が外部結合クレフトに結合 (Ka ≈ 2 × 1022 M-1)
ベンゼンは6:1の化学量論比で外部結合
3: ハロゲン交換と空洞調整
I- > Br- > Cl-の順でハロゲン親和性を確認
ハロゲン交換により内部空洞体積を調整可能
臭化物体積111 Å3、塩化物体積113 Å3と推定
考察
1: 主要な発見
新規な二重壁四面体構造の形成に成功
AgI4クラスターが頂点として機能
内部と外部に異なるゲスト結合部位を持つ
2: 主要な特徴
陰イオン性ゲストは内部に、芳香族ゲストは外部に選択的に結合
ハロゲン交換により内部空洞体積を微調整可能
ナフチリジン-イミンリガンドがAgIクラスター形成を支援
3: 先行研究との比較
既存のAgIケージ構造よりも大きな内部空間を実現
多金属クラスター頂点を持つ自己組織化構造の新しい例を提供
ハロゲン交換による空洞調整は新規な特徴
4: 研究の意義
複雑なAgIクラスター頂点アーキテクチャを持つケージの設計原理を提供
集合後の内部空洞体積調整により、標的結合挙動の制御が可能に
化学センサーなど、新しい応用分野の開拓につながる可能性
5: 研究の限界
臭化物および塩化物アナログの単結晶X線構造解析ができていない
ゲスト結合の選択性メカニズムの詳細な解明が必要
より広範なゲスト分子のスクリーニングが望まれる
結論
AgIクラスター頂点を持つ新規二重壁四面体ケージの開発に成功
内部と外部に異なるゲスト結合部位を持つユニークな構造
ハロゲン交換による内部空洞体積の調整が可能
将来の展望
今後、発光性AgIクラスター頂点を用いた化学センサーの開発が期待される
より複雑なゲスト分子の選択的結合や分離への応用が考えられる
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