2024年10月17日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0158~

論文のタイトル: Synthesis of a Molecule with Five Different Adjacent Pnictogens(5つの異なる隣接するニクトゲンを含む分子の合成)

著者: Christian Ritter, Florian Weigend, Carsten von Hänisch

雑誌: Chemistry - A European Journal

巻: 26, 8536-8540

出版年: 2020年


背景

1: 研究背景

異なる15族元素を含む分子化合物は特殊な結合状況と反応性を示す

最近、初のビスマス-アンチモン単結合を持つ化合物が合成された

ヘテロ環状ビラジカロイドの反応性が研究されている

二元系15族化合物は半導体製造の前駆体として使用される


2: 未解決の課題

開鎖型の4元系や5元系15族化合物の合成は困難

ビスマスを含む3元系化合物はリン酸アゼン部分で実現されている例が多い

ビスマス-X結合(Xは他の典型元素)は本質的に不安定

全5つの15族元素を含む化合物は未だ合成されていない


3: 研究目的

(ビスアミド)ジアザアルセチジンを出発物質として利用

段階的な反応を経て、5つの異なる隣接する15族元素を含む分子を合成

得られた化合物の構造と物性を解明する


方法

1: 合成戦略

(tBuNAs)2(tBuNH)2をリチオ化して出発物質を調製

AsCl3, SbCl3, BiCl3との反応で多環式化合物を合成

リチオ化したジ-tert-ブチル-スチビノ-tert-ブチル-ホスファンとの反応


2: 構造解析

単結晶X線構造解析による分子構造の決定

NMR分光法による溶液中の構造と動的挙動の解析

UV/Vis分光法による電子状態の解析


3: 理論計算

密度汎関数理論(DFT)計算による電子構造の解析

時間依存DFT計算による励起状態の解析

X2C法を用いた相対論効果の考慮


結果

1: 多環式化合物の合成

[(tBuNAs)2(tBuNH)2]PnCl (Pn = As (2), Sb (3), Bi (4))の合成に成功

化合物2-4は温度依存NMRにより動的挙動を示す

化合物4は二量体構造を形成し、Biは5配位構造をとる


2: 5元系化合物の合成

[(tBuNAs)2(tBuNH)2]BiP(tBu)SbtBu2 (7)の合成に成功

化合物7は初の5つの15族元素を含む分子化合物

Bi-P結合長: 2.751(3) Å, Sb-P結合長: 2.550(2) Å

Bi-P-Sb角: 102.20(8)°


3: 物性

化合物7は室温で安定で、光に対しても比較的安定

UV/Visスペクトルで441.5 nmに強い吸収を示す(ε = 2.9×105 l mol-1 m-1)

TD-DFT計算により、HOMO-LUMO遷移が可視領域の吸収に寄与


考察

1: 構造的特徴

(ビスアミド)ジアザアルセチジン骨格が安定化に寄与

Biは追加のN配位により5配位構造をとる

As-N-As-N-Bi-P-Sb配列で電気陰性度が交互に変化


2: 電子状態

HOMOはP原子に、LUMOはBi/Sb原子に局在化

可視領域の吸収はHOMO-LUMO遷移に起因

中心原子(Bi/Sb)と分子構造の違いがLUMOエネルギーに影響


3: 安定性

キレート効果とN原子の追加配位によりBi原子が保護されている

電気陰性度の交互配列が分子の安定性に寄与

Bi-P結合の不安定性は予想に反して観測されず


4: 研究の限界

P原子を含む類縁体の合成は選択性が低く困難

理論計算では実験値との30 nm程度のブルーシフトが見られる

光や熱に対する長期安定性の詳細な評価が必要


結論

5元系15族分子化合物の合成に成功

(ビスアミド)ジアザアルセチジン骨格が安定化に重要な役割

予想外の安定性と特異な電子状態を示す

半導体材料への応用や新規多元系化合物の合成に道を開く


将来の展望

周期表順の5元系15族化合物合成

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