論文のタイトル: Electrochemical Generation of Aryl Radicals from Organoboron Reagents Enabled by Pulsed Electrosynthesis(電気化学的パルス合成法による有機ホウ素試薬からのアリールラジカル生成)
著者: Maxime Boudjelel, Jessica Zhong, Lorenzo Ballerini, Ian Vanswearingen, Rossul Al-Dhufari, Christian A. Malapit*
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
巻: e202406203
出版年: 2024
背景
1: 有機ホウ素試薬の重要性
化学合成における重要な基質
商業的入手可能性の増加
多様な炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子結合形成に利用
主に遷移金属との金属交換反応が支配的
一電子酸化によるアリールラジカル生成の可能性
2: アリールラジカル生成の従来法と限界
アリールホウ素試薬の高い酸化電位
化学的・光化学的酸化プロセスに限定
Minisci型反応やラジカル共役付加反応に制限
電気化学的アプローチの可能性
電極不動態化、ラジカルのホモカップリング、分解などの課題
3: 研究の目的
有機ホウ素試薬からの効率的なアリールラジカル生成法の開発
電気化学的手法によるアリールラジカル生成の基本的課題の解明
パルス電解合成法の適用による課題解決の探索
多様な炭素-ヘテロ原子結合形成への応用
方法
1: 電気化学的手法の概要
アリールトリフルオロボレート塩を基質として使用
定電流および定電位電解の検討
パルス電解合成法の導入
白金電極の使用
アセトンを溶媒および犠牲試薬として利用
2: 反応条件の最適化
パルス周波数の影響調査(0.2 Hzが最適)
溶媒、支持電解質、電流・電位の検討
基質濃度の影響評価
電荷量の最適化(4 F/mol)
トリエチルホスファイトをラジカルトラップ剤として使用
3: 反応機構の解明手法
クロノアンペロメトリー分析
サイクリックボルタンメトリー実験
X線光電子分光法(XPS)による電極表面分析
ラジカルトラップ実験(TEMPO、1,1-ジフェニルエチレン)
結果
1: パルス電解合成の優位性
電極表面の再生により不動態化を抑制
アリールラジカルの効率的生成を実現
定電流/電位電解と比較して収率が2.5倍向上
電極表面の清浄性維持を確認(XPS分析)
反応溶液の透明性維持(副反応抑制の指標)
2: 基質適用範囲
電子供与性・求引性置換基を持つアリールBF3K塩に適用可能
オルト置換基を有する基質も有効
アリールクロリドとの共存性を確認
ヘテロアリール基質(ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、キノリン、ピリジン)に適用可能
3: 多様な炭素-ヘテロ原子結合形成
アリールC-P結合形成を実現(収率90%)
アリールC-Se、C-Te結合形成に成功
アリールC-S結合形成も可能
反応条件の大幅な変更なしに多様な結合形成を達成
考察
1: パルス電解合成の利点
電極表面の継続的な再生により不動態化を防止
アリールラジカルの効率的生成と反応溶液中への放出
ホモカップリングや過剰酸化/分解の抑制
電極材料(白金)の選択が重要
2: 推定反応機構
Ar-BF3K塩の陽極酸化によるアリールラジカル生成
アセトンの対極での還元(電子シンクとして機能)
トリエチルホスファイトとのラジカル反応
アリールホスホラニルラジカルの開裂または酸化
アセトンケチルラジカルのホモカップリング
3: 従来法との比較
遷移金属触媒を必要としない直接的な官能基化
アリールクロリドとの共存性(クロスカップリング基質との差別化)
多様なヘテロアリール基質への適用可能性
環境調和型プロセスの実現(外部酸化剤不要)
4: 研究の限界点
特定の電極材料(白金)への依存性
パルス周波数の最適化が基質ごとに必要
高周波数(2-10 Hz)での収率低下
結論
パルス電解合成によるアリールラジカル生成法の確立
有機ホウ素試薬の電気化学的官能基化を実現
多様な炭素-ヘテロ原子結合形成への応用可能性
環境調和型合成プロセスへの貢献
将来の展望
さらなる反応開発と応用範囲の拡大
大規模合成への適用
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