2024年10月7日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0148~

論文のタイトル: Electrochemical Generation of Aryl Radicals from Organoboron Reagents Enabled by Pulsed Electrosynthesis(電気化学的パルス合成法による有機ホウ素試薬からのアリールラジカル生成)

著者: Maxime Boudjelel, Jessica Zhong, Lorenzo Ballerini, Ian Vanswearingen, Rossul Al-Dhufari, Christian A. Malapit*

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

巻: e202406203

出版年: 2024


背景

1: 有機ホウ素試薬の重要性

化学合成における重要な基質

商業的入手可能性の増加

多様な炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子結合形成に利用

主に遷移金属との金属交換反応が支配的

一電子酸化によるアリールラジカル生成の可能性


2: アリールラジカル生成の従来法と限界

アリールホウ素試薬の高い酸化電位

化学的・光化学的酸化プロセスに限定

Minisci型反応やラジカル共役付加反応に制限

電気化学的アプローチの可能性

電極不動態化、ラジカルのホモカップリング、分解などの課題


3: 研究の目的

有機ホウ素試薬からの効率的なアリールラジカル生成法の開発

電気化学的手法によるアリールラジカル生成の基本的課題の解明

パルス電解合成法の適用による課題解決の探索

多様な炭素-ヘテロ原子結合形成への応用


方法

1: 電気化学的手法の概要

アリールトリフルオロボレート塩を基質として使用

定電流および定電位電解の検討

パルス電解合成法の導入

白金電極の使用

アセトンを溶媒および犠牲試薬として利用


2: 反応条件の最適化

パルス周波数の影響調査(0.2 Hzが最適)

溶媒、支持電解質、電流・電位の検討

基質濃度の影響評価

電荷量の最適化(4 F/mol)

トリエチルホスファイトをラジカルトラップ剤として使用


3: 反応機構の解明手法

クロノアンペロメトリー分析

サイクリックボルタンメトリー実験

X線光電子分光法(XPS)による電極表面分析

ラジカルトラップ実験(TEMPO、1,1-ジフェニルエチレン)


結果

1: パルス電解合成の優位性

電極表面の再生により不動態化を抑制

アリールラジカルの効率的生成を実現

定電流/電位電解と比較して収率が2.5倍向上

電極表面の清浄性維持を確認(XPS分析)

反応溶液の透明性維持(副反応抑制の指標)


2: 基質適用範囲

電子供与性・求引性置換基を持つアリールBF3K塩に適用可能

オルト置換基を有する基質も有効

アリールクロリドとの共存性を確認

ヘテロアリール基質(ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、キノリン、ピリジン)に適用可能


3: 多様な炭素-ヘテロ原子結合形成

アリールC-P結合形成を実現(収率90%)

アリールC-Se、C-Te結合形成に成功

アリールC-S結合形成も可能

反応条件の大幅な変更なしに多様な結合形成を達成


考察

1: パルス電解合成の利点

電極表面の継続的な再生により不動態化を防止

アリールラジカルの効率的生成と反応溶液中への放出

ホモカップリングや過剰酸化/分解の抑制

電極材料(白金)の選択が重要


2: 推定反応機構

Ar-BF3K塩の陽極酸化によるアリールラジカル生成

アセトンの対極での還元(電子シンクとして機能)

トリエチルホスファイトとのラジカル反応

アリールホスホラニルラジカルの開裂または酸化

アセトンケチルラジカルのホモカップリング


3: 従来法との比較

遷移金属触媒を必要としない直接的な官能基化

アリールクロリドとの共存性(クロスカップリング基質との差別化)

多様なヘテロアリール基質への適用可能性

環境調和型プロセスの実現(外部酸化剤不要)


4: 研究の限界点

特定の電極材料(白金)への依存性

パルス周波数の最適化が基質ごとに必要

高周波数(2-10 Hz)での収率低下


結論

パルス電解合成によるアリールラジカル生成法の確立

有機ホウ素試薬の電気化学的官能基化を実現

多様な炭素-ヘテロ原子結合形成への応用可能性

環境調和型合成プロセスへの貢献


将来の展望

さらなる反応開発と応用範囲の拡大

大規模合成への適用

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