2024年10月18日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0159~

論文のタイトル: A general synthesis of dendralenes(デンドラレンの一般的合成法)

著者: Josemon George, Jas S. Ward and Michael S. Sherburn*

雑誌: Chemical Science

巻: 10, 9969-9973

出版年: 2019年


背景

1: デンドラレンとは

sp2混成炭素からなる炭化水素の4つの基本構造の1つ

非環状で分岐した構造を持つ

21世紀初頭まで扱いが困難と考えられていた

[3]デンドラレンから[12]デンドラレンが合成されている


2: デンドラレンの重要性

複雑な構造を迅速に生成する有用なビルディングブロック

連続的な付加反応(ジエン伝達性)が可能

天然物合成への応用が近年報告されている

段階経済的な全合成に利用されている


3: 既存の合成法の課題

既存の合成法は構造的に限定されたサブセットのみ可能

置換基の種類や数に制限がある

立体選択的な合成法が確立されていない

より短い工程数での合成が求められている


方法

1: 新しい合成アプローチ

市販のアルデヒドから2〜3工程で合成

Ramirezジブロモメチレン化反応を利用

根岸クロスカップリング反応を活用

1,1-ジブロモアルケンを出発物質として使用


2: 立体選択的合成の戦略

1,1-ジブロモアルケンの選択的モノカップリング

異なる2つのアルケニル亜鉛試薬を逐次的に反応

Pd(0)/t-Bu3P触媒を用いた立体保持カップリング

[PdCl2(dppf)]前触媒を用いた立体反転カップリング


3: 合成の多様性

アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール置換基に対応

[3]デンドラレンの全ての可能な位置への置換が可能

1〜5個の置換基を導入可能

[4]デンドラレンの立体選択的合成にも適用可能


結果

1: [3]デンドラレンの合成例

23種類の[3]デンドラレンを合成

13種類の1,1-ジブロモアルケンと4種類のアルケニル求核剤を使用

中心のメチレン位に様々な置換基を導入(アルキル、アリール、アルケニル、アルキニルなど)


2: 立体選択的合成の成功

19種類の[3]デンドラレンを立体保持カップリングで合成

6種類の[3]デンドラレンを立体反転カップリングで合成

10組のE/Z異性体ペアを選択的に合成

NOE実験とX線結晶構造解析で立体化学を確認


3: 新規反応の開発

[4]デンドラレンの初の立体選択的合成に成功(10a-Z)

前例のない連続的な6π-6π電子環状反応を実現(10a-Z1112)

多環式化合物の新しい合成法への可能性を示唆


考察

1: 合成法の利点

幅広い置換基に対応可能

立体選択的合成が可能

短工程での合成を実現

拡張共役系を持つデンドラレン構造の初の一般的合成法


2: デンドラレンの構造的特徴

化合物4e-ZとX線結晶構造解析の結果、最長共役セグメントがほぼ平面構造

イソプロペニル置換基は平面から77°と83°の角度で傾斜


3: ジエン伝達性Diels-Alder反応の応用

立体異性体が異なる構造異性体のオクタリンを生成

天然物や医薬品に多く見られるオクタリンやデカリン骨格の合成に有用


4: 研究の限界点

アルキル置換基を持つ系での立体選択性の課題

高圧条件が必要な反応があるなど、一部の反応条件に制約


結論

デンドラレンの初の広範囲な合成法を確立

1〜5個の多様な置換基を持つ[3]デンドラレンの合成に成功

立体選択的合成の問題を解決

[4]デンドラレンへの応用も示唆

任意のデンドラレン構造の短期間での化学合成を可能に


将来の展望

 段階経済的な全合成への新たな応用が期待される

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