論文のタイトル: Impact of two diammonium cations on the structure and photophysics of layered Sn-based perovskites(二つのジアンモニウムカチオンが層状Snベースペロブスカイトの構造と光物理学に与える影響)
著者: Eelco K. Tekelenburg, Nawal Aledlbi, Lijun Chen, Graeme R. Blake, Maria A. Loi
雑誌: Journal of Materials Chemistry C
巻: Volume11, 8154-8160
出版年: 2023年
背景
1: 層状金属ハライドペロブスカイトの重要性
光電子デバイスへの応用が期待される新興材料
大きな有機カチオンを収容できる柔軟な結晶構造
構造と光学特性のチューニングが可能
太陽電池やLEDで既に貢献実績あり
2: 研究のギャップ
ジアンモニウムカチオンの利用が増加傾向
Snベースペロブスカイトの結晶構造への理解が不足
カチオンの影響に関する詳細な知見が必要
環境に優しいSnの光学特性の探索が不十分
3: 研究の目的
2種類のジアンモニウムカチオン(OBEとEDBE)の影響を調査
結晶構造と光学特性の関係を解明
Snベースペロブスカイトの構造的柔軟性を探索
薄膜作製プロセスの影響を評価
方法
1: 材料合成と構造解析
Anti-Solvent Vapour Crystallisation法でOBESnI4とEDBESnI4を合成
X線回折(XRD)で結晶構造を解析
水素結合の形成を確認
2: 光学特性評価
Kubelka-Munk変換拡散反射スペクトル測定
室温でのフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定
温度依存PLスペクトル測定(4.4 Kまで)
励起強度依存PLスペクトル測定
3: 薄膜作製と評価
ブレードコーティング法で薄膜を作製
70℃と100℃で処理温度を変化
吸収スペクトルとPLスペクトルの測定
共焦点レーザー走査顕微鏡で空間分布を観察
結果
1: 結晶構造の違い
OBESnI4: 平面状の〈100〉型層状構造
EDBESnI4: 波打った〈110〉型層状構造
EDBEカチオン間の水素結合が波打ち構造を安定化
2: 光学特性の比較
OBESnI4: 1.99 eVに吸収ピーク、1.90 eVと1.96 eVにPLピーク
• EDBESnI4: 2.36 eVに吸収ピーク、1.61 eVに幅広いPLバンド
• EDBESnI4のストークスシフトは約700 meV
3: 薄膜の特性
70℃処理: 黒色薄膜、単一結晶相
100℃処理: 赤色薄膜、2つの結晶相の混合
処理温度により光学特性が大きく変化
100℃処理で新しい未同定の結晶相が出現
考察
1: 構造と光学特性の関係
カチオンの長さが結晶構造を決定
八面体のSn-I-Sn角度が電子バンド構造に影響
EDBESnI4の幅広いPLバンドは欠陥に起因する可能性
2: 温度依存性の解釈
OBESnI4の低エネルギー発光は熱活性化プロセス
EDBESnI4は低温で複数の発光状態を示す
発光寿命とフルエンス依存性から欠陥由来の発光を示唆
3: 薄膜の相転移
100℃処理で新しい結晶相が出現
可能性のある原因:
- 八面体の連結性の変化
- 波打ち構造への転移
動力学的に捕捉された状態の形成
4: 研究の限界点
新しい結晶相の詳細な構造解析が未完了
欠陥の正確な性質と位置の特定が必要
長期的な安定性と素子性能の評価が不足
結論
カチオン間相互作用が層状ペロブスカイトの構造を制御
Snベースペロブスカイトの特異な光学特性を解明
処理温度が薄膜の結晶構造と光学特性に大きく影響
将来の展望
新規相の構造同定
欠陥エンジニアリングによる発光制御
デバイス応用に向けた最適化
0 件のコメント:
コメントを投稿