論文のタイトル: Fluoride recovery in degradable fluorinated polyesters(分解性フッ素化ポリエステルにおけるフッ化物回収)
著者: Christoph Fornacon-Wood, Merlin R. Stühler, Alexandre Millanvois, Luca Steiner, Christiane Weimann, Dorothee Silbernagl, Heinz Sturm, Beate Paulus, Alex J. Plajer*
雑誌: Chemical Communications
巻: 60, 7479-7482
出版年: 2024年
背景
フッ素化ポリマーは多くの消費者向け製品や産業で不可欠
低い分極率により疎水性が高く、接着性が低い
撥水性や低摩擦コーティングとして有用
PFASとして知られ、環境中で分解しにくい「永遠の化学物質」
2: 問題点
フッ素化ポリマーの多くは埋立地に廃棄
マイクロプラスティックとして環境中に漏出
フッ素は限られた資源で、回収されずに失われている
循環型経済に向けた化学的リサイクル方法が必要
3: 研究目的
分解性フッ素化ポリマーの新しいクラスを開発
エポキシドと環状無水物の開環共重合を利用
フッ素化ポリエステルの合成と特性評価
フッ素回収の可能性を探る
方法
1: ポリマー合成
テトラフルオロフタル酸無水物(FPA)とプロピレンオキシド(PO)の共重合
LAl(III)Cl/PPNCl(PPN = Ph3PNPPh3)の二成分触媒系を使用
80℃で90分間反応
2: 分析手法
19F NMRスペクトロスコピーによる構造解析
GPCによる分子量測定
1H NMRによるエステル結合の定量
3: 物性評価
原子間力顕微鏡(AFM)による力-距離曲線測定
水接触角測定による疎水性評価
走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察
4: 分解性試験
5 wt% NaOH in 6:4 EtOH:H2O, 40℃での分解試験
5 wt% NaOMe in MeOH, 110℃での完全分解試験
19F NMRによる分解生成物の分析
結果
1: ポリマー合成
FPA/PO共重合体の分子量: 11.5-17.0 kg/mol (Ð = 1.1-1.3)
エステル結合92%、エーテル結合8%
非フッ素化ポリマーと比べ、重合速度が速い(TOF = 260-311 h-1)
2: 物性評価
フッ素化により弾性率が低下: E(FPA-co-FPO) < E(FPA-co-PO) < E(PA-co-PO)
表面の付着力が減少: 50 nN (PA-co-PO) > 41 nN (FPA-co-PO) > 38 nN (FPA-co-FPO)
水接触角: 97.4° (FPA-co-FPO) > 90.5° (FPA-co-PO) > 80.9° (PA-co-PO)
3: 分解性
フッ素化ポリマーの方が分解が速い: FPA/FPO (6h) < FPA/PO (72h) < PA/PO (144h)
表面侵食メカニズムを確認 (SEMによる観察)
完全分解によりNaFとして無機フッ化物を回収可能
考察
1: フッ素化の影響
フッ素化によりポリマーの疎水性が向上
予想に反し、フッ素化ポリマーの方が分解が速い
カルボニル基の求核攻撃に対する感受性が向上
2: 分解メカニズム
表面侵食による分解を確認
求核芳香族置換反応によるフッ素の脱離
DFT計算により、フッ素化ポリマーの分解が熱力学的・速度論的に有利であることを示唆
3: フッ素回収
芳香環結合フッ素を無機フッ化物として回収可能
酸処理によりHFとして回収
循環型フッ素経済への貢献の可能性
結論
テトラフルオロフタル酸無水物を用いた新しいフッ素化ポリエステルの合成に成功
フッ素化により分解性が向上し、フッ素回収が可能に
将来のフッ素化ポリマー設計には分解性と再利用性の組み込みが重要
循環型フッ素経済の実現に向けた重要な一歩
将来の展望
長期的な環境影響評価
スケールアップ
他のフッ素化ポリマーへの応用
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