論文のタイトル: Mechanism of Iron-Catalyzed Oxidative α-Amination of Ketones with Sulfonamides(ケトンとスルホンアミドの鉄触媒酸化的α-アミノ化の機構)
著者: Gloria M. Parrales, Nina C. Hollin, Fubin Song, Yangyang Lyu, Anne-Marie O. Martin, Alexandra E. Strom*
雑誌: The Journal of Organic Chemistry
巻: 89, 17, 12462–12466
出版年: 2024
背景
1: 研究の背景
カルボニル化合物は普遍的で有用な官能基
α-umpolung反応性は化学者の注目を集めている
鉄触媒は地球に豊富で安価、入手しやすい
キノン系酸化剤は様々な機構で反応可能
2: 未解決の問題点
ケトンのα-アミノ化反応の機構が不明確
2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)の役割が不明確
反応中間体の特定が必要
3: 研究の目的
鉄触媒によるケトンとスルホンアミドの酸化的α-アミノ化の機構を解明
反応の律速段階を特定
中間体の構造と反応性を明らかにする
方法
1: 研究アプローチ
直線自由エネルギー関係(LFER)の分析
競争実験の実施
反応中間体の同定
2: 実験手法
ケトン基質の構造変化による反応速度への影響を調査
α-カルボカチオン前駆体を用いた反応性の比較
α-キノールアダクトの合成と反応性の評価
3: データ解析
Hammettプロットによる置換基効果の分析
競争実験による相対反応速度の算出
NMRによる中間体構造の同定
結果
1: 直線自由エネルギー関係
フェニル置換基のρ値: -0.99
ベンジル置換基のρ値: -0.84
両置換基とも正電荷の安定化が反応速度を向上
2: 競争実験結果
触媒反応: N-メチル-p-トルエンスルホンアミド : p-トルエンスルホンアミド = 1.0 : 0.54
α-DDQ付加体: N-メチル-p-トルエンスルホンアミド : p-トルエンスルホンアミド = 1.0 : 0.57
α-カルボカチオン前駆体: ~1:1の比率
3: 中間体の同定
O-結合α-DDQ付加体の単離に成功
鉄触媒とDDQ存在下でのα-DDQ付加体からの生成物形成を確認
考察
1: 主要な発見
反応は酸化段階を経てα-DDQ付加体を形成
α-ラジカルやα-カルボカチオン中間体は関与しない
律速段階は鉄エノラートの酸化過程
2: DDQの作用
DDQは直接反応機構に関与している
鉄はDDQの配位やエノラート形成に重要な役割
ルイス酸によるヒドロキノン脱離基の活性化を初めて報告
3: 先行研究との比較
従来のα-カルボカチオン経由の機構とは異なる
DDQを用いたカルボニル化合物の活性化に新たな知見を提供
鉄触媒の多様な反応性を示す結果
4: 研究の限界点
反応条件の制約(高温、特定の溶媒)
中間体の直接観察が困難
スルホンアミドに限定された基質範囲
結論
ケトンのα-アミノ化はα-DDQ付加体経由で進行
律速段階は鉄エノラートの酸化
カルボニル化合物のumpolung活性化に新たな視点を提供
将来の展望
他の求核剤との反応への応用が期待される
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