2024年10月29日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0169~

論文のタイトル: Systematic Route to Construct the 5–5–6 Tricyclic Core of Furanobutenolide-Derived Cembranoids and Norcembranoids(フラノブテノリド由来セムブラノイドおよびノルセムブラノイドの5-5-6三環式コア構築への系統的アプローチ)

著者: Melinda Chan, Nicholas J. Hafeman, Tyler J. Fulton, and Brian M. Stoltz*

雑誌: Organic Letters

巻: Volume26, Issue30, 6320–6323

出版年: 2024年


背景

1: 研究の背景

海洋生物由来の複雑な天然物が長年化学者の関心を集める

Sinularia属軟サンゴから多様なマクロ環状・多環状化合物が得られる

ポリ環状フラノブテノリド由来セムブラノイド・ノルセムブラノイドが注目

これらの化合物は複雑な構造と有望な生物活性を持つ


2: 既存研究と課題

2022年にハベロケート(7)の不斉全合成を報告

Julia-Kocieńskiオレフィン化とエステル化/Diels-Alder反応カスケードを利用

トリシクリックコア構築に成功したが、いくつかの制約あり

プロピオール酸エステル中間体の不安定性が課題


3: 研究目的

5-5-6三環式コア構築の効率的な方法の開発

高立体選択性を持つ分子内Diels-Alder反応の利用

プロパルギルエーテルテザーを用いた反応効率の向上

多様な天然物ファミリーへの応用可能性の探索


方法

1: 合成戦略

ジオール3からプロパルギルエーテル12の合成

分子内Diels-Alder反応による三環式エーテル13の形成

エーテル13からケトン16への変換を目指す3段階酸化プロトコル


2: 主要反応

プロパルギルブロミドを用いた塩基性アルキル化条件下でのエーテル化

分子内Diels-Alder反応による環状エーテル形成

V触媒による位置選択的エポキシ化

Ti触媒によるエポキシド開環還元


3: 分析・特性評価

NMR (1H, 13C)によるエーテル1213の構造確認

高分解能質量分析(HRMS)による分子量確認

赤外分光法(IR)による官能基同定

X線結晶構造解析によるエーテル13の立体構造決定


結果

1: エーテル合成と環化

ジオール3からプロパルギルエーテル12を83%収率で合成

エーテル12の分子内Diels-Alder反応が96%収率で進行

シクロエーテル13が単一のジアステレオマーとして得られる


2: 酸化反応の結果

エポキシド14が単一のジアステレオマーとして生成

ジオール15への還元的エポキシド開環が高収率で進行

IBX酸化によりケトン16が生成


3: 構造特性

エーテル13はエステル4と比較して安定性が向上

ケトン16ではΔオレフィンの異性化が観察されず

ケトン16の構造は一部の天然物と類似した特徴を持つ


考察

1: 合成経路の改善

プロパルギルエーテルルートが高収率・高選択性を示す

エステルルートと比較して中間体の安定性が向上

取り扱いが容易になり、精製が簡略化された


2: 反応機構の考察

エーテル構造が分子内Diels-Alder反応に有利な立体配座を提供

s-トランス配座の採用が容易になり、反応性が向上

エステル構造による立体的制約が解消された


3: 酸化段階の課題

エーテル13からラクトン5への直接酸化は困難

複数の反応性アリル位C-H結合の存在が原因

酵素的方法の検討が今後の課題として示唆される


4: 天然物合成への応用

ケトン16の構造がdissectolide Aなどの天然物と類似

IBX酸化時のオレフィン異性化の制御が可能に

多様な天然物への合成アプローチの可能性が開かれた


結論

高効率・高選択的な5-5-6三環式コア構築法を確立

プロパルギルエーテルテザーの利用により反応性と安定性が向上

複雑な海洋天然物合成への新たなアプローチを提供

酵素的酸化など、更なる反応開発の余地がある


将来の展望

フラノブテノリド由来天然物ファミリーへの応用が期待される

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