著者: Kanak Kanti Das, Debasis Aich, Sutapa Dey, Santanu Panda
雑誌: Nature Communications
巻: 15, 3794
出版年: 2024
背景
1: 研究の背景
官能基の変換は有機合成において重要な資産
フェノール/アニリンは天然に豊富に存在
カルボニル化合物は生理活性分子に広く存在
フェノール/アニリンからカルボニル化合物への効率的な変換が重要
2: 既存の手法と課題
従来法は遷移金属触媒を用いたクロスカップリングが必要
一酸化炭素を用いる手法は毒性や高圧ガスの危険性がある
医薬品における遷移金属の許容一日摂取量に関する問題
遷移金属フリーかつCOフリーの変換法が求められている
3: 研究の目的
フェノール/アニリンからアルデヒド/ケトンへの一段階変換法の開発
C-O/C-N結合開裂を伴う遷移金属フリーの手法の確立
多様な官能基に適用可能な手法の開発
生理活性分子合成への応用
方法
1: 合成手法の概要
フェノールからキノケタールへの酸化
α-ビス(ボリル)カルバニオンとの1,2-付加反応
ビニルボロン酸エステルの酸化によるカルボニル化合物の生成
ワンポット反応での実施
2: 反応条件の最適化
(ジアセトキシヨード(Ⅲ))benzene(PIDA )を用いたフェノールの酸化
K2CO3によるAcOHの中和
温度、塩基、酸化剤の検討
NaBO3・4H2Oを用いた最終酸化段階
3: 基質適用範囲の検討
様々な置換基を持つフェノール類の検討
アニリン誘導体への適用
生理活化合物への応用
BINOLを用いた光触媒の設計
結果
1: アルデヒド合成
多様な置換基を持つフェノールからアルデヒドを合成
オルト、パラ、メタ位に置換基を有する基質に適用可能
ハロゲン、エステル、ケタール、水酸基、アルケン、末端アルキンとの共存性
2: ケトン合成
フェノールから各種ケトンへの変換に成功
アリールアルキルケトン、ジアリールケトン、アセトフェノン類の合成
α,β-不飽和ケトンの立体選択的合成(100% trans選択性)
3: アニリンからの合成
保護アニリンからアルデヒド・ケトンへの変換
キノケタール中間体の単離が高収率に必要
多様な置換基を持つアニリン類に適用可能
考察
1: 反応機構
キノケタール中間体の生成
α-ビス(ボリル)カルバニオンの1,2-付加
ビニルボロン酸エステル中間体の生成
NBO解析とDFT計算による反応性の説明
2: 従来法との比較
遷移金属触媒やCOを必要としない環境調和型の手法
ワンポット反応による効率的な合成
多様な官能基との共存性が高い
位置選択的なアセトフェノン合成が可能
3: 生理活性分子合成への応用
CRACインヒビターの合成
抗マラリア活性化合物の合成
抗真菌活性を持つ化合物の合成
トポイソメラーゼ阻害剤の効率的合成
4: 新規光触媒の開発
BINOLベースの多環式化合物の設計
可視光および太陽光照射下での光触媒活性
デハロゲン化アリール化反応への応用
デカルボキシル化およびデボリル化ビニル化反応の達成
結論
フェノール/アニリンからアルデヒド/ケトンへの効率的変換法を開発
遷移金属フリー・COフリーの環境調和型手法を確立
多様な官能基に適用可能で、生理活性分子合成に有用
将来の展望
新規光触媒の開発につながる可能性を示唆
有機合成化学における新たな方法論として期待
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