2024年7月4日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0060~

論文のタイトル: Triarylborane-Catalyzed Alkenylation Reactions of Aryl Esters with Diazo Compounds(トリアリールボラン触媒によるアリールエステルとジアゾ化合物のアルケニル化反応)

著者: Dr. Ayan Dasgupta, Katarína Stefkova, Rasool Babaahmadi, Lukas Gierlichs, Prof. Alireza Ariafard, Dr. Rebecca L. Melen

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

巻: 59, 15492-15496

出版年: 2020


背景

1: 研究背景

ジアゾ化合物は有機合成に広く利用される多用途中間体

炭素-炭素二重結合形成に利用される

通常、遷移金属触媒(Pd, Cu, Fe)が必要

金属フリーアプローチは比較的稀


2: 未解決の課題

環境に優しい金属フリー触媒の開発が求められる

ベンジル位sp3炭素のアルケニル化の新手法が必要

トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランB(C6F5)3の触媒能力の探索


3: 研究目的

B(C6F5)3を用いた金属フリーアルケニル化反応の開発

アリールエステルとジアゾ化合物の反応による共役有機化合物の合成

反応メカニズムの解明


方法

1: 反応条件の最適化

様々なボラン触媒の検討(B(C6F5)3, B(2,4,6-F3C6H2)3など)

触媒量、温度、溶媒の最適化

エステル部位の脱離基の効果を調査


2: 基質適用範囲の検討

様々なジアゾマロン酸エステルとアリール-アルキニルエステルの反応

非対称α-アリール-ジアゾエステルの反応

ジアリールエステルの反応


3: 反応メカニズムの解明

DFT計算による理論的検討

SMD/M06-2X-D3/def2-TZVP//CPCM/B3LYP/6-31G(d)レベルで計算

触媒サイクルの提案と自由エネルギープロファイルの作成


結果

1: 最適反応条件

B(C6F5)3 (10-20 mol%)が最も効果的な触媒

65℃、トリフルオロトルエン溶媒が最適

電子求引性の脱離基(4-FC6H4, CF3)が有効


2: 基質適用範囲

対称ジアゾエステル: 良好〜非常に良好な収率(63-87%)

非対称α-アリール-ジアゾエステル: 中程度の収率(36-46%)

ジアリールエステル: 良好〜非常に良好な収率(67-87%)


3: 反応メカニズム

ボランによるエステルの活性化が初期段階

カルベニウムイオン中間体の生成

E2型脱離反応によるC=C結合形成


考察

1: 反応の特徴

金属フリー条件下でのアルケニル化反応の実現

高機能化されたC=C結合生成物の簡便な合成法

幅広い基質適用範囲


2: 主要な発見

B(C6F5)3の触媒効果の解明

エステル部位の活性化が鍵となる反応機構

DFT計算による理論的裏付け


3: 先行研究との比較

従来の遷移金属触媒を用いた手法と比較して環境調和型

単一ステップでの複雑なエステル置換エンイン・ジエン生成物の合成


4: 研究の意義

生物活性天然物合成への応用可能性

ピラン-2-オン等の複素環化合物合成への展開


5: 研究の限界点

電子供与性置換基を持つ基質での反応性低下

非対称ジアゾエステルでの副生成物の生成

シクロヘキシル基を持つエステルでの反応性の欠如


結論

B(C6F5)3触媒を用いた金属フリーアルケニル化反応の開発

プロパルギル、アリール、ベンジル位でのC=C結合形成を実現

反応機構の解明により、今後の触媒設計への指針を提供


将来の展望

生物活性化合物合成への応用が期待される新規合成法の確立

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