論文のタイトル: Triarylborane-Catalyzed Alkenylation Reactions of Aryl Esters with Diazo Compounds(トリアリールボラン触媒によるアリールエステルとジアゾ化合物のアルケニル化反応)
著者: Dr. Ayan Dasgupta, Katarína Stefkova, Rasool Babaahmadi, Lukas Gierlichs, Prof. Alireza Ariafard, Dr. Rebecca L. Melen
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
巻: 59, 15492-15496
出版年: 2020
背景
1: 研究背景
ジアゾ化合物は有機合成に広く利用される多用途中間体
炭素-炭素二重結合形成に利用される
通常、遷移金属触媒(Pd, Cu, Fe)が必要
金属フリーアプローチは比較的稀
2: 未解決の課題
環境に優しい金属フリー触媒の開発が求められる
ベンジル位sp3炭素のアルケニル化の新手法が必要
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランB(C6F5)3の触媒能力の探索
3: 研究目的
B(C6F5)3を用いた金属フリーアルケニル化反応の開発
アリールエステルとジアゾ化合物の反応による共役有機化合物の合成
反応メカニズムの解明
方法
1: 反応条件の最適化
様々なボラン触媒の検討(B(C6F5)3, B(2,4,6-F3C6H2)3など)
触媒量、温度、溶媒の最適化
エステル部位の脱離基の効果を調査
2: 基質適用範囲の検討
様々なジアゾマロン酸エステルとアリール-アルキニルエステルの反応
非対称α-アリール-ジアゾエステルの反応
ジアリールエステルの反応
3: 反応メカニズムの解明
DFT計算による理論的検討
SMD/M06-2X-D3/def2-TZVP//CPCM/B3LYP/6-31G(d)レベルで計算
触媒サイクルの提案と自由エネルギープロファイルの作成
結果
1: 最適反応条件
B(C6F5)3 (10-20 mol%)が最も効果的な触媒
65℃、トリフルオロトルエン溶媒が最適
電子求引性の脱離基(4-FC6H4, CF3)が有効
2: 基質適用範囲
対称ジアゾエステル: 良好〜非常に良好な収率(63-87%)
非対称α-アリール-ジアゾエステル: 中程度の収率(36-46%)
ジアリールエステル: 良好〜非常に良好な収率(67-87%)
3: 反応メカニズム
ボランによるエステルの活性化が初期段階
カルベニウムイオン中間体の生成
E2型脱離反応によるC=C結合形成
考察
1: 反応の特徴
金属フリー条件下でのアルケニル化反応の実現
高機能化されたC=C結合生成物の簡便な合成法
幅広い基質適用範囲
2: 主要な発見
B(C6F5)3の触媒効果の解明
エステル部位の活性化が鍵となる反応機構
DFT計算による理論的裏付け
3: 先行研究との比較
従来の遷移金属触媒を用いた手法と比較して環境調和型
単一ステップでの複雑なエステル置換エンイン・ジエン生成物の合成
4: 研究の意義
生物活性天然物合成への応用可能性
ピラン-2-オン等の複素環化合物合成への展開
5: 研究の限界点
電子供与性置換基を持つ基質での反応性低下
非対称ジアゾエステルでの副生成物の生成
シクロヘキシル基を持つエステルでの反応性の欠如
結論
B(C6F5)3触媒を用いた金属フリーアルケニル化反応の開発
プロパルギル、アリール、ベンジル位でのC=C結合形成を実現
反応機構の解明により、今後の触媒設計への指針を提供
将来の展望
生物活性化合物合成への応用が期待される新規合成法の確立
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