2024年7月8日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0064~

論文のタイトル: Intermolecular [3+3] ring expansion of aziridines to dehydropiperi-dines through the intermediacy of aziridinium ylides(アジリジンの分子間[3+3]環拡大による脱水素ピペリジンの合成)

著者: Josephine Eshon, Kate A. Nicastri, Steven C. Schmid, William T. Raskopf, Ilia A. Guzei, Israel Fernández, Jennifer M. Schomaker

雑誌: Nature Communications

巻: 11:1273

出版年: 2020年


背景

1: 研究背景

N-複素環は医薬品や天然物に重要

ピペリジンは最も一般的なN-複素環骨格の1つ

既存の合成法では立体選択性の制御が困難

アジリジンは小員環からのN-複素環合成に有用


2: 未解決の課題 

アジリジンの環拡大反応の適用範囲が限定的

立体化学情報を保持した環拡大が難しい

分子間反応での立体選択的な環拡大の例が少ない

アジリジニウムイリドを経由する新しい反応機構の開発が必要


3: 研究目的

二環性アジリジンとロジウム触媒ビニルカルベンの[3+3]環拡大反応の開発

立体選択的な脱水素ピペリジン合成法の確立

アジリジニウムイリド中間体を経由する新規反応機構の解明


方法

1: 反応条件の最適化

アジリジン基質とビニルジアゾ酢酸エステルを用いた反応

Rh2(OAc)4触媒を使用

ジクロロメタン溶媒中、室温で反応


2: 基質適用範囲の検討

様々な置換基を持つアジリジン基質の合成

電子的性質の異なるビニルジアゾ酢酸エステルの合成

各基質の収率とジアステレオ選択性を評価


3: 反応機構の解析

DFT計算による反応経路の解析

キラルアジリジンを用いた立体化学の保持の確認

X線結晶構造解析による生成物の立体配置の決定


結果

1: アジリジン基質の適用範囲

直鎖アルキル基を持つアジリジンで良好な収率(66-92%)

かさ高い置換基(イソプロピル基)でも良好な収率(71%)

アルキルクロリドやエーテル基を含む基質も反応可能


2: ビニルジアゾ酢酸エステルの適用範囲

電子供与性、中性、電子求引性置換基で同程度の収率

β-アルキル置換ジアゾエステルでも良好な収率

エステル部位のかさ高さも許容


3: 反応機構の解明

DFT計算によりアジリジニウムイリド中間体の存在を示唆

擬[1,4]シグマトロピー転位を経由する新規機構を提案

キラルアジリジンからの立体化学の保持を確認


考察

1: 反応の特徴

アジリジンの分子間[3+3]環拡大反応の開発に成功

高立体選択的な脱水素ピペリジン合成法を確立

幅広い基質適用範囲を実現


2: 反応機構

アジリジニウムイリド中間体を経由する新規反応機構を解明

擬[1,4]シグマトロピー転位による立体保持機構を提案

キラルアジリジンからの立体化学情報の転写に成功


3: 先行研究との比較

従来の分子内反応と比べ、より汎用性の高い分子間反応を実現

アジリジンの環拡大反応の適用範囲を大幅に拡大

立体化学情報の保持という点で既存法を凌駕


4: 研究の限界点

一部の電子豊富な複素環基質で低収率

エナンチオ選択的反応の開発が今後の課題

反応機構の直接的な実験的証拠が限定的


結論

アジリジンの新規[3+3]環拡大反応を開発

高立体選択的な脱水素ピペリジン合成法を確立

アジリジニウムイリドの新しい反応性を解明


将来の展望

生理活性物質合成への応用が期待される

エナンチオ選択的触媒の開発が今後の課題

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