論文のタイトル: Intermolecular [3+3] ring expansion of aziridines to dehydropiperi-dines through the intermediacy of aziridinium ylides(アジリジンの分子間[3+3]環拡大による脱水素ピペリジンの合成)
著者: Josephine Eshon, Kate A. Nicastri, Steven C. Schmid, William T. Raskopf, Ilia A. Guzei, Israel Fernández, Jennifer M. Schomaker
雑誌: Nature Communications
巻: 11:1273
出版年: 2020年
背景
1: 研究背景
N-複素環は医薬品や天然物に重要
ピペリジンは最も一般的なN-複素環骨格の1つ
既存の合成法では立体選択性の制御が困難
アジリジンは小員環からのN-複素環合成に有用
2: 未解決の課題
アジリジンの環拡大反応の適用範囲が限定的
立体化学情報を保持した環拡大が難しい
分子間反応での立体選択的な環拡大の例が少ない
アジリジニウムイリドを経由する新しい反応機構の開発が必要
3: 研究目的
二環性アジリジンとロジウム触媒ビニルカルベンの[3+3]環拡大反応の開発
立体選択的な脱水素ピペリジン合成法の確立
アジリジニウムイリド中間体を経由する新規反応機構の解明
方法
1: 反応条件の最適化
アジリジン基質とビニルジアゾ酢酸エステルを用いた反応
Rh2(OAc)4触媒を使用
ジクロロメタン溶媒中、室温で反応
2: 基質適用範囲の検討
様々な置換基を持つアジリジン基質の合成
電子的性質の異なるビニルジアゾ酢酸エステルの合成
各基質の収率とジアステレオ選択性を評価
3: 反応機構の解析
DFT計算による反応経路の解析
キラルアジリジンを用いた立体化学の保持の確認
X線結晶構造解析による生成物の立体配置の決定
結果
1: アジリジン基質の適用範囲
直鎖アルキル基を持つアジリジンで良好な収率(66-92%)
かさ高い置換基(イソプロピル基)でも良好な収率(71%)
アルキルクロリドやエーテル基を含む基質も反応可能
2: ビニルジアゾ酢酸エステルの適用範囲
電子供与性、中性、電子求引性置換基で同程度の収率
β-アルキル置換ジアゾエステルでも良好な収率
エステル部位のかさ高さも許容
3: 反応機構の解明
DFT計算によりアジリジニウムイリド中間体の存在を示唆
擬[1,4]シグマトロピー転位を経由する新規機構を提案
キラルアジリジンからの立体化学の保持を確認
考察
1: 反応の特徴
アジリジンの分子間[3+3]環拡大反応の開発に成功
高立体選択的な脱水素ピペリジン合成法を確立
幅広い基質適用範囲を実現
2: 反応機構
アジリジニウムイリド中間体を経由する新規反応機構を解明
擬[1,4]シグマトロピー転位による立体保持機構を提案
キラルアジリジンからの立体化学情報の転写に成功
3: 先行研究との比較
従来の分子内反応と比べ、より汎用性の高い分子間反応を実現
アジリジンの環拡大反応の適用範囲を大幅に拡大
立体化学情報の保持という点で既存法を凌駕
4: 研究の限界点
一部の電子豊富な複素環基質で低収率
エナンチオ選択的反応の開発が今後の課題
反応機構の直接的な実験的証拠が限定的
結論
アジリジンの新規[3+3]環拡大反応を開発
高立体選択的な脱水素ピペリジン合成法を確立
アジリジニウムイリドの新しい反応性を解明
将来の展望
生理活性物質合成への応用が期待される
エナンチオ選択的触媒の開発が今後の課題
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