2024年7月28日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0083~

論文のタイトル: Polycyclic bis(amido)cyclodiphosphazane complexes of antimony(III) and bismuth(III): syntheses, molecular structures and solution behaviour(ポリサイクリックビス(アミド)シクロジホスファザンのアンチモン(III)およびビスマス(III)錯体:合成、分子構造、溶液挙動)

著者: Daniel F. Moser, Ingo Schranz, Michael C. Gerrety, Lothar Stahl, Richard J. Staples

雑誌: J. Chem. Soc., Dalton Trans.

ページ: 751–757

出版年: 1999年


背景

1: 研究の背景

リン系アミドは良く知られた無機化合物群

重元素(Sb, Bi)のアミド類縁体は少ない 

重元素アミド化合物は不安定で応用が限られていた

有機金属化合物や固体材料の前駆体として注目


2: 研究の目的

重元素(Sb, Bi)のアミド錯体の合理的合成法の確立

予測可能な構造を持つ単量体錯体の合成

配位空間を制御した新規錯体の設計


方法

1: 研究のアプローチ

ビス(アミド)置換無機複素環を配位子として使用

アンチモンおよびビスマスの3価錯体を合成

X線結晶構造解析による分子構造の決定

NMR分光法による溶液中の挙動解析


2: 合成方法

SbCl3やBiCl3と[(PNtBu)2(NRLi・THF)2]の反応

得られた塩化物錯体からの置換反応

置換基: N3-, OPh-, N(SiMe3)2-

トルエン溶媒中で結晶化


3: 構造解析

X線単結晶構造解析による分子構造の決定

CCD検出器付きBruker SMART回折計を使用

データ収集温度: 193 K

SHELXS-90およびSHELXL-97プログラムで構造精密化


結果

1: 錯体の分子構造

歪んだCs対称性を持つ多環式かご型構造

平面状シクロジホスファザン環を基部に持つ

重元素(SbまたはBi)が環上方に位置

3配位ピラミッド型構造の重元素中心


2: 結合長の比較

Sb-N結合長: 2.069-2.120 Å (アミド結合)

Sb-N結合長: 2.421-2.656 Å (環窒素からの配位結合)

Sb-Cl結合長: 2.439-2.492 Å

Sb-N3結合長: 2.199 Å


3: 溶液中の挙動

室温NMRでtert-ブチルイミノ基が非等価

加熱により信号がブロード化・融合

ビスマス錯体は室温以下で信号融合

ピラミダル反転による動的挙動を示唆


4: ピラミダル反転の活性化エネルギー

アンチモン錯体: >100 kJ/mol

ビスマス錯体: 53.6 kJ/mol

フェニル置換体: 77.4 kJ/mol

中心元素と配位子の嵩高さに依存


考察

1: 構造的特徴

多環式コア構造が錯体の安定性に寄与

嵩高い置換基が重元素の配位環境を制御

シクロジホスファザン環が配位空間を制限


2: 動的挙動

ピラミダル反転は分子内過程

活性化エネルギーは配位子と中心元素に依存

有機アンチモン・ビスマン化合物と類似の挙動


3: 研究の限界点

ビスマス錯体の合成収率が低い (30-40%)

X線構造解析で一部の錯体に disorder が見られた

溶液中の挙動解析が限られた温度範囲


結論

新規アンチモン・ビスマムアミド錯体の合成に成功

X線構造解析により分子構造を決定

溶液中でのピラミダル反転挙動を確認

重元素アミド化学の新たな可能性を提示


将来の展望

より安定な重元素アミド錯体の設計と合成

錯体の触媒活性や材料特性の探索

非対称なシクロジホスファザン配位子の開発

他の重元素(As, Te)への応用可能性の検討

理論計算による反転機構のさらなる解明

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