論文のタイトル: Towards a comprehensive data infrastructure for redox-active organic molecules targeting non-aqueous redox flow batteries(非水系レドックスフロー電池のための包括的なデータインフラストラクチャの構築)
著者: Rebekah Duke, Vinayak Bhat, Parker Sornberger, Susan A. Odom, Chad Risko
雑誌: Digital Discovery
巻: 2, 1152–1162
出版年: 2023
背景
1: 研究の背景
再生可能エネルギーの増加に伴い、エネルギー貯蔵ソリューションの需要が高まっている
レドックスフロー電池(RFB)は拡張性が高くコスト効率の良い新興技術
有機物ベースのRFBは金属ベースよりも広く入手可能で安価
非水系溶媒を用いるRFB(NARFB)は大きな電位窓を持ち、エネルギー貯蔵能力が高い
2: 研究課題
NARFBに適した酸化還元活性分子の設計には、主要な特性のバランスが必要
酸化還元電位、安定性、溶解度などの特性の基礎的な理解が不足している
NARFBのための大規模で幅広くアクセス可能な均一なデータが不足している
3: 研究の目的
NARFB用の酸化還元活性有機分子のための包括的なデータインフラの構築
43,000以上の分子の特性データを含むD3TaLESデータベースの開発
データ処理ツールとデータ共有・分析のためのインフラストラクチャの提供
方法
1: データベース設計
NoSQLスキーマを採用し、柔軟性と拡張性を確保
バックエンドデータベース:計算/実験中心のスキーマ、生データを格納
フロントエンドデータベース:分子中心のスキーマ、分析用に処理されたデータを格納
2: データ処理ワークフロー
D3TaLESウェブサイトを通じてデータファイルとメタデータをアップロード
既存のパーシングパッケージと独自コードを組み合わせて生データファイルを解析
管理者による承認後、バックエンドデータをフロントエンドプロパティに変換
3: 計算手法
密度汎関数理論(DFT)を用いた高スループット分子計算ワークフロー
(IP-tuned) LC-ωHPBE/Def2SVPレベルの理論をGaussian16ソフトウェアで使用
酸化還元電位、安定性、溶解度などの基本的特性を計算
結果
1: データベースの構成
総計43,168の独自構造を含む
平均分子量329 g/mol
31,583分子が完全な酸化プロファイルを持つ
28,000以上の還元プロファイルを含む
2: 主要な計算特性
酸化電位
緩和エネルギー
垂直および断熱イオン化ポテンシャル
溶媒和エネルギー
ラジカルカチオン安定性スコア
3: データ可視化
UMAPを用いた2次元化学空間上の酸化電位マッピング
酸化電位とラジカル安定性スコアの散布図
分子量分布のヒストグラム
考察
1: D3TaLESの主要な特徴
幅広い化学空間をカバーする大規模なデータセット
計算データと実験データの両方を統合可能な柔軟な構造
データ処理ツールとAPIによる容易なアクセスと分析
2: データベースの活用例
ファネルパイプラインを用いたNARFBカソライト材料候補の絞り込み
5つのテストを通じて43,168分子から364の潜在的システムを選別
原子数、合成アクセシビリティスコア、ラジカル安定性スコアなどを基準に使用
3: 研究の意義
NARFBの材料設計における構造-特性関係の解明を促進
機械学習や高スループットスクリーニングのための基盤を提供
有機レドックスフロー電池研究の加速に貢献
4: 研究の限界
現在のデータは主にDFT計算に基づいている
実験データの統合が今後の課題
特定の分子クラス(例:キノン系)に偏りがある可能性
結論
NARFBのための包括的なデータインフラストラクチャを構築
43,000以上の分子の計算データを含むD3TaLESデータベースを開発
データ処理ツールとAPIにより、コミュニティからの貢献と多様なデータ共有・分析が可能
将来の展望
今後は実験データの統合や機械学習モデルの開発に焦点を当てる
レドックスフロー電池研究だけでなく、酸化還元活性有機分子を応用する他の分野にも拡張可能
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