2024年7月17日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0072~

論文のタイトル: Tunably strained metallacycles enable modular differentiation of aza-arene C–H bonds

著者: Longlong Xi, Minyan Wang, Yong Liang, Yue Zhao, Zhuangzhi Shi

雑誌: Nature Communications

巻: 14:3986

出版年: 2023


背景

1: C-H活性化の課題

C-H結合の活性化は有機分子の機能化に重要

複数のC-H結合の中から特定の位置を選択することが課題

従来は立体的・電子的効果や配向基を利用

5-7員環の中間体を経由する方法が主流


2: ひずみのある金属環状中間体

3-4員環のような高度にひずんだ中間体の生成は困難

脂肪族アミンのC-H活性化では小さな金属環状中間体が報告済み

ベンゼン環が融合した類似体の形成はさらに困難

アザアレーンのC-H結合を区別する新しい戦略が必要


3: 本研究の目的

アザアレーンのC-H活性化における位置選択性の制御

3員環または4員環の金属環状中間体の形成

配位子の調整による反応位置の切り替え

キノリンなどの複素環化合物への適用


方法

1: 反応条件の最適化

3-メチルキノリンと(ブロモエチニル)トリイソプロピルシランの反応

[Rh(cod)Cl]2を触媒として使用

NaOtBuを塩基として使用

トルエン溶媒中、120°Cで反応


2: 配位子の影響

dtbpy (4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジン)を使用:C2位選択性

IMes・HCl (NHC配位子)を使用:C8位選択性

触媒前駆体の構造をX線結晶構造解析で確認


3: 基質適用範囲の検討

様々な置換基を持つキノリン類の反応

ベンゾ[f]キノリン、フェナントリジンなどの複素環化合物への適用

アルキニル臭化物の構造変更による影響の調査


結果

1: キノリン誘導体の位置選択的アルキニル化

C2位選択的アルキニル化:収率84%、C2/C8 = 99/1

C8位選択的アルキニル化:収率85%、C8/C2 = 92/8

電子供与基、ハロゲン、CF3基などの置換基に対応


2: 他のアザアレーンへの適用

ベンゾ[f]キノリン:C3位とC5位で選択的反応

フェナントリジン:C6位とC4位で選択的反応

4,7-フェナントロリン:モノおよびジ置換体を生成


3: 反応の一般性

グラムスケールでの反応にも適用可能

生成物の官能基変換による多様な誘導体合成

医薬品中間体や機能性材料の合成への応用


考察

1: 反応機構の考察

DFT計算による反応経路の解析

C-Br結合の酸化的付加が律速段階

配位子によるC-H活性化位置の制御


2: 位置選択性の起源

キノリンのC2位とC8位の電子密度の違い

配位子の立体効果と電子効果の影響

3員環vs 4員環中間体の安定性の差


3: 本手法の利点

配位子による簡便な位置選択性の制御

複素環化合物の直接的な官能基化

従来法では困難だった位置での反応が可能


4: 研究の限界点

一部の基質で反応性が低下

末端アルキンの反応性が低い

配位子の選択肢がまだ限られている


結論

3員環・4員環の金属環状中間体を経由するC-H活性化を実現

配位子による位置選択性の制御が可能に

アザアレーンの新しい官能基化法を開発


将来の展望

医薬品・機能性材料合成への応用が期待される

さらなる配位子設計による適用範囲の拡大が今後の課題

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