論文のタイトル: Tunably strained metallacycles enable modular differentiation of aza-arene C–H bonds
著者: Longlong Xi, Minyan Wang, Yong Liang, Yue Zhao, Zhuangzhi Shi
雑誌: Nature Communications
巻: 14:3986
出版年: 2023
背景
1: C-H活性化の課題
C-H結合の活性化は有機分子の機能化に重要
複数のC-H結合の中から特定の位置を選択することが課題
従来は立体的・電子的効果や配向基を利用
5-7員環の中間体を経由する方法が主流
2: ひずみのある金属環状中間体
3-4員環のような高度にひずんだ中間体の生成は困難
脂肪族アミンのC-H活性化では小さな金属環状中間体が報告済み
ベンゼン環が融合した類似体の形成はさらに困難
アザアレーンのC-H結合を区別する新しい戦略が必要
3: 本研究の目的
アザアレーンのC-H活性化における位置選択性の制御
3員環または4員環の金属環状中間体の形成
配位子の調整による反応位置の切り替え
キノリンなどの複素環化合物への適用
方法
1: 反応条件の最適化
3-メチルキノリンと(ブロモエチニル)トリイソプロピルシランの反応
[Rh(cod)Cl]2を触媒として使用
NaOtBuを塩基として使用
トルエン溶媒中、120°Cで反応
2: 配位子の影響
dtbpy (4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジン)を使用:C2位選択性
IMes・HCl (NHC配位子)を使用:C8位選択性
触媒前駆体の構造をX線結晶構造解析で確認
3: 基質適用範囲の検討
様々な置換基を持つキノリン類の反応
ベンゾ[f]キノリン、フェナントリジンなどの複素環化合物への適用
アルキニル臭化物の構造変更による影響の調査
結果
1: キノリン誘導体の位置選択的アルキニル化
C2位選択的アルキニル化:収率84%、C2/C8 = 99/1
C8位選択的アルキニル化:収率85%、C8/C2 = 92/8
電子供与基、ハロゲン、CF3基などの置換基に対応
2: 他のアザアレーンへの適用
ベンゾ[f]キノリン:C3位とC5位で選択的反応
フェナントリジン:C6位とC4位で選択的反応
4,7-フェナントロリン:モノおよびジ置換体を生成
3: 反応の一般性
グラムスケールでの反応にも適用可能
生成物の官能基変換による多様な誘導体合成
医薬品中間体や機能性材料の合成への応用
考察
1: 反応機構の考察
DFT計算による反応経路の解析
C-Br結合の酸化的付加が律速段階
配位子によるC-H活性化位置の制御
2: 位置選択性の起源
キノリンのC2位とC8位の電子密度の違い
配位子の立体効果と電子効果の影響
3員環vs 4員環中間体の安定性の差
3: 本手法の利点
配位子による簡便な位置選択性の制御
複素環化合物の直接的な官能基化
従来法では困難だった位置での反応が可能
4: 研究の限界点
一部の基質で反応性が低下
末端アルキンの反応性が低い
配位子の選択肢がまだ限られている
結論
3員環・4員環の金属環状中間体を経由するC-H活性化を実現
配位子による位置選択性の制御が可能に
アザアレーンの新しい官能基化法を開発
将来の展望
医薬品・機能性材料合成への応用が期待される
さらなる配位子設計による適用範囲の拡大が今後の課題
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