論文のタイトル: Separation of Tellurium from Metal Chalcogenides through Mild Anhydrous Chlorination(金属カルコゲニドからの穏やかな無水塩素化によるテルルの分離)
著者: Madeleine C. Uible, Jerod M. Kieser, Suzanne C. Bart
雑誌: Chemistry - A European Journal
巻: 29, e202202364
出版年: 2023年
背景
1: テルル分離の重要性
テルルは太陽光発電用薄膜材料として重要
地殻中の存在量が非常に少ない (1-10 ppb)
銅精錬の副産物として主に回収
使用済み太陽電池からのリサイクルが重要な供給源
2: 既存のリサイクル手法と課題
First Solar社の湿式プロセス: 機械的分離後、酸化溶解
酸化物の分離と還元が必要
複数の元素がドープされた新型太陽電池では分離が困難
テルルとセレンの分離が特に困難
3: 研究の目的
温和な条件下でのテルル分離手法の開発
カテコール配位子を用いたテルル錯体の形成
カドミウムや亜鉛などの遷移金属からの分離
セレン、硫黄などの他のカルコゲンからの分離
方法
1: 分離プロセスの概要
3段階のプロセス: 溶解、錯体形成、分離
穏和な塩素化剤としてヨードベンゼンジクロリド(PhICl2)を使用
3,5-ジ-tert-ブチルカテコール(dtbc)をテルル錯体形成に使用
2: 溶解プロセス
MCh (M = Cd, Zn; Ch = Te, Se, S) に対してPhICl2を3当量使用
室温でアセトニトリル中1-3時間撹拌
TeとSeはTeCl4とSeCl4に酸化される
3: 錯体形成と分離
溶解物にdtbcを2当量添加
Te(dtbc)2錯体が形成され、暗橙色に変化
SeはSe0に還元され、赤色沈殿として分離
ろ過とトリチュレーションで精製
4: 分析手法
1H NMR分光法による純度確認
X線蛍光分析(XRF)による微量元素分析
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による定量分析
結果
1: テルル錯体の分離効率
Te(dtbc)2として高純度で分離 (20.0-23.2% Te)
CdとZnの含有量が1000-10000倍減少
SeとSも ppm レベルまで低減
2: 混合カルコゲニドからの分離
CdTe/ZnTe/CdSe/CdS混合物からもTe(dtbc)2を分離
Cd: 99 ppm, Zn: 35 ppm, Se: 1352 ppm, S: 397 ppm
3: セレンの分離
CdSeからのSe回収率: 99.3%
Cd含有量: 67 ppm
SとZnは検出限界以下
考察
1: テルル分離の有効性
カテコール配位子がTe選択的な錯体形成に有効
穏和な条件下で高い分離効率を達成
遷移金属(Cd, Zn)からの分離に成功
2: 他のカルコゲンからの分離
SeはSe0として還元分離、Sは未反応で容易に分離
TeとSeの分離は通常困難だが、本手法で効果的に達成
3: プロセスの利点
温和な条件: 室温、大気中で操作可能
再利用可能な試薬: PhICl2PhICl2からPhIが生成
柔軟性: 様々な金属カルコゲニドに適用可能
4: 研究の限界点
分離効率のさらなる向上の余地あり
大規模プロセスへのスケールアップ検討が必要
経済性評価が未実施
結論
穏和な条件下でのテルル高純度分離に成功
カテコール配位子の選択性を利用した新規分離法
将来の展望
太陽電池リサイクルへの応用可能性
プロセス最適化と他の金属カルコゲニドへの適用が今後の課題
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