2024年7月10日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0066~

論文のタイトル: Separation of Tellurium from Metal Chalcogenides through Mild Anhydrous Chlorination(金属カルコゲニドからの穏やかな無水塩素化によるテルルの分離)

著者: Madeleine C. Uible, Jerod M. Kieser, Suzanne C. Bart

雑誌: Chemistry - A European Journal

巻: 29, e202202364

出版年: 2023年



背景

1: テルル分離の重要性

テルルは太陽光発電用薄膜材料として重要

地殻中の存在量が非常に少ない (1-10 ppb)

銅精錬の副産物として主に回収

使用済み太陽電池からのリサイクルが重要な供給源


2: 既存のリサイクル手法と課題

First Solar社の湿式プロセス: 機械的分離後、酸化溶解

酸化物の分離と還元が必要

複数の元素がドープされた新型太陽電池では分離が困難

テルルとセレンの分離が特に困難


3: 研究の目的

温和な条件下でのテルル分離手法の開発

カテコール配位子を用いたテルル錯体の形成

カドミウムや亜鉛などの遷移金属からの分離

セレン、硫黄などの他のカルコゲンからの分離


方法

1: 分離プロセスの概要

3段階のプロセス: 溶解、錯体形成、分離

穏和な塩素化剤としてヨードベンゼンジクロリド(PhICl2)を使用

3,5-ジ-tert-ブチルカテコール(dtbc)をテルル錯体形成に使用


2: 溶解プロセス

MCh (M = Cd, Zn; Ch = Te, Se, S) に対してPhICl2を3当量使用

室温でアセトニトリル中1-3時間撹拌

TeとSeはTeCl4とSeCl4に酸化される


3: 錯体形成と分離

溶解物にdtbcを2当量添加

Te(dtbc)2錯体が形成され、暗橙色に変化

SeはSe0に還元され、赤色沈殿として分離

ろ過とトリチュレーションで精製


4: 分析手法

1H NMR分光法による純度確認

X線蛍光分析(XRF)による微量元素分析

誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による定量分析


結果

1: テルル錯体の分離効率

Te(dtbc)2として高純度で分離 (20.0-23.2% Te)

CdとZnの含有量が1000-10000倍減少

SeとSも ppm レベルまで低減


2: 混合カルコゲニドからの分離

CdTe/ZnTe/CdSe/CdS混合物からもTe(dtbc)2を分離

Cd: 99 ppm, Zn: 35 ppm, Se: 1352 ppm, S: 397 ppm


3: セレンの分離

CdSeからのSe回収率: 99.3%

Cd含有量: 67 ppm

SとZnは検出限界以下


考察

1: テルル分離の有効性

カテコール配位子がTe選択的な錯体形成に有効

穏和な条件下で高い分離効率を達成

遷移金属(Cd, Zn)からの分離に成功


2: 他のカルコゲンからの分離

SeはSe0として還元分離、Sは未反応で容易に分離

TeとSeの分離は通常困難だが、本手法で効果的に達成


3: プロセスの利点

温和な条件: 室温、大気中で操作可能

再利用可能な試薬: PhICl2PhICl2からPhIが生成

柔軟性: 様々な金属カルコゲニドに適用可能


4: 研究の限界点

分離効率のさらなる向上の余地あり

大規模プロセスへのスケールアップ検討が必要

経済性評価が未実施


結論

穏和な条件下でのテルル高純度分離に成功

カテコール配位子の選択性を利用した新規分離法


将来の展望

太陽電池リサイクルへの応用可能性

プロセス最適化と他の金属カルコゲニドへの適用が今後の課題

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