論文のタイトル: 9-Step synthesis of (−)-larikaempferic acid methyl ester enabled by skeletal rearrangement
著者: Mario E. Rivera, Lei Li, Aditya Kolisetti, Nina Chi, Mingji Dai*
雑誌: Chemical Communications
出版年: 2024年
背景
1: 研究背景
ラリカエンフェリン酸メチルエステルは抗腫瘍促進効果を持つ天然物
独特の四環式骨格を持つ再構成アビエタン型ジテルペン
トランスヒドリンダン、オキサビシクロ[3.2.1]オクタン、6つの不斉中心を含む
Larix kaempferiの葉から0.0006%の収率で単離された
2: 研究の重要性
EBVの初期抗原活性化に対する強力な阻害効果を示す
β-カロテンよりも効果的な抗腫瘍促進リード化合物
がん予防開発のための有望な候補化合物
生合成経路は提案されているが、未検証
3: 研究目的
アビエチン酸から出発する簡潔な合成経路の開発
骨格再構成戦略を用いた効率的な合成法の確立
全9工程での(−)-ラリカエンフェリン酸メチルエステルの合成
方法
1: 合成戦略の概要
酸化的C-C結合開裂による10員環ジケトンの形成
環状アルドール反応による6-5-7三環式骨格の構築
分子内オキサ-マイケル付加によるオキサ架橋の形成
アビエチン酸から出発する9工程合成
2: 主要な合成ステップ
C13-C15二重結合の選択的還元
C8-C9二重結合の酸化的開裂
アルミナまたはLiHMDSを用いた環状アルドール反応
Saegusa-Ito酸化によるエノンの形成
3: 最終段階の合成
TMS基の除去
オキサ-マイケル付加の誘起
AcOH/THF/H2O混合溶媒中での一段階反応
結果
1: 主要中間体の合成
化合物11から12a/12bの1:1混合物を71%収率で得た
混合物12a/12bから13a/13bの1:1混合物を49%収率で得た
混合物13a/13bから19を60-75%収率で得た(13aベース)
2: 環状アルドール反応の制御
Al2O3またはLiHMDSを用いて望ましいトランス5,7-融合環系を形成
化合物13aから19への変換が可能、13bは分解
化合物14aから19への変換も76%収率で成功
3: 最終生成物の合成
化合物19から20へのSaegusa-Ito酸化を70%収率で達成
化合物20から(−)-ラリカエンフェリン酸メチルエステルを45%収率で合成
合成品のNMR、質量分析、旋光度データが天然物と一致
考察
1: 合成戦略の有効性
骨格再構成と環状化戦略が効果的に機能
縮合6-6-6三環式骨格から6-5-7三環式骨格への変換に成功
全9工程という短い工程数で目的物の合成を達成
2: 鍵反応の重要性
酸化的C-C結合開裂が10員環ジケトン形成に重要
キレーション制御下の環状アルドール反応がトランス5,7-融合環系構築に不可欠
オキサ-マイケル付加がオキサビシクロ[3.2.1]オクタン形成に有効
3: 生合成経路への示唆
提案された生合成経路を支持する結果を得た
オキサ-マイケル反応がオキサ架橋形成の代替プロセスである可能性を示唆
4: 研究の限界
一部の中間体の立体選択性制御に課題が残る
最終段階の収率にさらなる改善の余地がある
結論
アビエチン酸から9工程で(−)-ラリカエンフェリン酸メチルエステルの合成に成功
骨格再構成と環状化戦略が複雑な天然物合成に有効であることを実証
生合成経路の理解に貢献し、新たな合成手法の可能性を示唆
抗腫瘍促進活性を持つ化合物の更なる研究開発への道を開いた
将来の展望
合成経路の最適化による収率の向上
類縁体の合成と構造活性相関研究
ラリカエンフェリン酸の抗腫瘍メカニズムの解明
がん予防薬としての開発可能性の探索
他の複雑な天然物への骨格再構成戦略の応用
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