2024年7月20日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0076~

 論文のタイトル: Synthesis of tribenzo-1,6-diazabicyclo[4.4.4]tetradecane(トリベンゾ-1,6-ジアザビシクロ[4.4.4]テトラデカンの合成)

著者: Hiroyuki Takemura, Seri Kuwahara, Hinano Nakamura, Shoko Munakata, Yumi Tsukada, Yuri Asami, Megumi Tominaga, Miwako Yoshida, Shiori Furuya, Mizuki Hirose, Miki Ikeda, Kazue Katai, Miyako Kanagawa, Yukie Nomoto, Tetsuo Iwanaga, Katsuya Sako

雑誌: Tetrahedron Letters

巻: 141, 155065

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

アザマクロサイクリックケージ化合物の研究が進行中

m-キシリレンや2,6-ルチジレン環を含むクリプタンドが特異的な包接現象を示す

p-キシリレンユニットを用いた大型立方体ケージ化合物も得られている

新たにo-キシリレンユニットを持つクリプタンドの設計を計画


2: 研究の目的

1,6-ジアザビシクロ[4.4.4]テトラデカンのベンゾ類縁体(1)の合成

小さな金属カチオンスカベンジャーや新型プロトンスポンジとしての可能性を探る

高度に対称的なプロペラ状クリプタンドの合成と性質の解明


3: 研究アプローチ

Alderらの合成ルートに基づくアプローチ

2,11-ジアザ[3.3]-o-シクロファンからの新規合成ルートの開発

得られた化合物の構造解析と理論計算による最適化構造の推定


方法

1: 合成アプローチ1

5,7,12,14-テトラヒドロフタラジノ[2,3-b]フタラジン(2)からの合成

o-キシリレンジブロミドとの反応

生成物の単離と構造解析


2: 合成アプローチ2

2,11-ジアザ[3.3]-o-シクロファン(8)からの合成

トシル基の除去とo-キシリレンジブロミドとの環化反応

プロトンテンプレート合成法の適用


3: 構造解析と計算

X線結晶構造解析による中間体の構造決定

DFT計算による最終生成物の最適化構造の推定

NMRスペクトル解析による構造確認


結果

1: アプローチ1の結果

目的の化合物1ではなく、1-アゾニア-6-アザトリシクロ[4.4.4.01,5]テトラデカントリベンゾ類縁体(4)が主生成物として得られた

化合物4の結晶構造を決定

化合物4の還元は目的の1を与えなかった


2: アプローチ2の結果

2,11-ジアザ[3.3]-o-シクロファン(8)の合成に成功

化合物8o-キシリレンジブロミドの反応により目的の1・H+]を73.3%の収率で得た

化合物1・H+は10%水酸化カリウム水溶液で容易に脱プロトン化された


3: 構造解析結果

化合物1のN···N距離は270.6 pm(DFT計算)

化合物1・H+のN···N距離は251.5 pm、N-H+結合長は115.3 pm(DFT計算)

化合物1・H+では内部プロトンが一方の窒素原子に偏っている


考察

1: 合成経路の考察

Alderのルートでは目的化合物が得られず、トリシクロ化合物4が生成

プロトンテンプレート合成法が1・H+の合成に有効

溶媒条件の最適化が重要(クロロホルム中、塩基なし)


2: 構造特性の考察

化合物1・H+は親化合物の骨格1,6-ジアザビシクロ[4.4.4]テトラデカン(A)と異なり、非対称的なプロトン配置を示す

弱いNH+···N水素結合の形成が示唆される

ベンジル型環状ジアミンと脂肪族二環性ジアミンの挙動の違いを確認


3: 塩基性の考察

化合物1は通常のアミンと同程度の弱い塩基性を示す

トリベンジルアミン(pKa = 4.1, DMSO)の弱い塩基性が影響

プロトンスポンジAとは異なる性質を持つ


4: 研究の限界

結晶構造が得られなかったため、理論計算に頼らざるを得なかった

化合物1の応用可能性についてはさらなる研究が必要

金属カチオンとの相互作用に関する実験データが不足


結論

新規クリプタンド1の合成に成功

ベンゾ類縁体は親化合物とは異なる性質を示す

弱い塩基性と非対称的なプロトン配置が特徴


将来の展望

金属カチオンスカベンジャーとしての可能性を探る必要性

ベンジル型環状ジアミンの特性をさらに解明する研究の重要性

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