2024年7月12日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0068~

論文のタイトル: Syntheses and Structures of Two Dimethyl Diselenide–Diiodine Adducts and the First Well Characterized Diorgano Disulfide–Nitrosonium Adduct(ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の合成と構造、および初めて構造決定されたジオルガノジスルフィド-ニトロソニウム付加体)

著者: Birgit Mueller, Teemu T. Takaluoma, Risto S. Laitinen, Konrad Seppelt

雑誌: European Journal of Inorganic Chemistry

巻: 4970-4977

出版年: 2011年


背景

1: 研究の背景

16族元素(S, Se, Te)を含む有機分子の付加体形成が注目されている

ジヨウ素や二トロソニウムとの付加体に関心が高まっている

生物学、材料科学、産業化学など幅広い分野に応用可能性がある


2: 未解決の課題

ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の構造が未解明

ジオルガノジスルフィド-ニトロソニウム付加体の特性が不明

これらの付加体形成メカニズムの理解が不十分


3: 研究の目的

新規ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の合成と構造解析

初のジオルガノジスルフィド-ニトロソニウム付加体の構造解析

付加体形成のメカニズムを理論計算により解明


方法

1: 合成と結晶構造解析

ジメチルジセレニドとジヨウ素の反応による付加体合成

X線結晶構造解析による分子構造の決定

単結晶X線回折装置を使用(Bruker Smart CCD 1000)


2: ニトロソニウム付加体の合成

ジ-ネオペンチルジスルフィドとニトロシルトリフラートの反応

低温(‐80°C)での結晶化と構造解析

溶液中での色変化の観察


3: 理論計算

密度汎関数理論(DFT)計算によるジスルフィド-NO+付加体の安定性評価

M06L/def2-TZVPPレベルでの計算

電子密度分布とNBO解析による結合性の評価


結果

1: ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の構造

[Me2Se2·2I2]と[Me2Se2·I2]の2種類の付加体を同定

線形Se-I-I配置を持つ中性電荷移動「スポーク」型付加体

I-I結合長の伸長とSe-I間の配位結合の形成を確認


2: ジ-ネオペンチルジスルフィド-ニトロソニウム付加体

[C10H22S2·NO+ TfO]の結晶構造を決定

S-S-N-O四員環構造の形成を確認

S-N、S-O間の相互作用を観測(結合長: S-N 2.3Å, S-O 2.9Å)


3: 理論計算結果

ジスルフィド-NO+付加体の安定性を比較評価

電子供与性置換基が付加体形成を有利にする傾向

電荷移動が付加体形成の主要メカニズムであることを確認


考察

1: ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の特徴

Se-I-I角度がほぼ180°で強い異方性を示す

電荷移動によりI-I結合が弱まり、Se-I間に配位結合が形成

付加体の化学量論比により構造が変化


2: ジスルフィド-ニトロソニウム付加体の性質

ジスルフィドのC-S-S-C二面角が160°に増大

NO+との相互作用により四員環構造を形成

溶液中と固体状態で色変化を示す動的挙動


3: 付加体形成のメカニズム

硫黄のローンペアからNO+のLUMO(π*)への電子移動が主要因

電子供与性置換基が硫黄上の正電荷を安定化

π軌道の重なりにより S-S 結合が短縮


4: 研究の限界点

理論計算は気相中で行われ、溶媒効果が考慮されていない

一部の付加体で結晶化が困難で構造決定ができなかった

動的挙動の詳細なメカニズムは未解明


結論

新規ジメチルジセレニド-ジヨウ素付加体の構造を解明

初のジオルガノジスルフィド-ニトロソニウム付加体を構造解析

電荷移動が付加体形成の主要メカニズムであることを確認


将来の展望

今後は溶媒効果の考慮や動的挙動の解明が課題

これらの知見は新規材料設計や生体内相互作用の理解に貢献

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