2024年7月15日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0071~

論文のタイトル: Sequential Selective Dissolution of Coinage Metals in Recyclable Ionic Media(リサイクル可能なイオン性媒体中での貴金属の連続選択的溶解)

著者: Dr. Anže Zupanc, Joseph Install, Dr. Timo Weckman, Dr. Marko M. Melander, Mikko J. Heikkilä, Dr. Marianna Kemell, Prof. Karoliina Honkala, Prof. Timo Repo

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

銅、銀、金は現代の電子機器に不可欠

天然資源は限られており、リサイクルが重要

既存のリサイクル方法には選択性や環境への影響に問題がある

新しい持続可能で選択的な方法の開発が必要


2: 未解決の問題点

従来法は腐食性が高く危険な鉱酸や有毒な浸出剤を使用

多くの廃水を生成し、環境への悪影響が大きい

選択性が低く、複雑な多段階処理が必要


3: 研究の目的

バイオマス由来のイオン性溶媒と環境に優しい酸化剤を用いた新しいアプローチの開発

銅、銀、金混合物からの単一金属の連続選択的溶解の実現

溶解媒体のリサイクルと再利用が可能なシステムの構築


方法

1: 研究デザイン

異なるイオン性媒体と酸化剤の組み合わせによる金属溶解実験

実際の電子廃棄物基板への適用試験

溶解反応と選択性の分析技術およびDFT計算による探索


2: 使用した材料と手法

イオン性媒体: コリンクロリド/尿素(ChCl/U)、乳酸(LA)

酸化剤: 過酸化水素水(H2O2)、Oxone

基板: 金属ワイヤー、プリント基板、金メッキ、太陽電池パネル


3: 評価項目と測定方法

金属溶解量: ワイヤー質量減少の経時変化測定

溶解選択性: 異なる金属の溶解挙動の比較

溶解メカニズム: 各種分析技術(EDS、XRD、UV/Vis)による解析

熱力学的検討: DFT計算による自由エネルギー評価


結果

1: 銅の選択的溶解

ChCl/U/H2O2系で銅を選択的に溶解(2.7 wt%)

銀と金は溶解せず

初期溶解速度: 0.48 mol/m2h


2: 銀の選択的溶解

LA/H2O2系で銀を高濃度で溶解(7.0 wt%)

金は溶解せず、銅は銀の1/4程度の溶解

初期溶解速度: 3.32 mol/m2h


3: 金の溶解

ChCl/U/Oxone系で銅と金が溶解

金の溶解量: 1.1 wt%

初期溶解速度: 0.11 mol/m2h


考察

1: 選択的溶解のメカニズム

イオン性媒体と金属イオンの相互作用が選択性に寄与

DFT計算により各系での溶解の熱力学的可能性を確認

塩化物イオンによる表面パッシベーションが銀の選択性に影響


2: 従来法との比較

鉱酸や有毒な浸出剤を使用せず、環境負荷が低い

連続的な選択溶解により多段階処理が不要

溶媒のリサイクルが可能で持続可能性が高い


3: 実用化への課題

溶解速度は従来法より遅い傾向

大規模適用時の物質移動や不純物蓄積の検討が必要

ライフサイクルアセスメントによる総合的な評価が必要


4: 研究の限界点

実験室スケールでの検証に留まっている

長期的な溶媒の安定性や再利用回数の検討が不十分

複雑な実廃棄物への適用性のさらなる検証が必要


結論

バイオマス由来のイオン性媒体を用いた貴金属の連続選択的溶解法を開発

環境負荷が低く、溶媒のリサイクルが可能な持続可能なプロセス

電子廃棄物からの金属回収に適用可能性を示す


将来の展望

循環型経済と持続可能な開発の目標に沿った新しいリサイクルアプローチ

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