2024年7月27日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0082~

論文のタイトル: A Tandem Ring Closure and Nitrobenzene Reduction with Sulfide Provides an Improved Route to an Important Intermediate for the Anti-Tuberculosis Drug Candidate Sutezolid

著者: Hanuman P. Kalmode, Ongolu Ravikumar, Dinesh J. Paymode, John Bachert, Justina M. Burns, Rodger W. Stringham, Sarah L. Aleshire, and Ryan C. Nelson* 

雑誌: Organic Process Research & Development 

巻: 28, 1195−1204

出版年: 2024年


背景

1: 研究の背景

結核は世界で最も致命的な感染症の1つ

2021年に約1100万件の症例、160万人の死亡

適切な治療を適時に行えば治癒可能

低中所得国で症例の大半が発生


2: 未解決の問題

低コストで効果的な薬剤へのアクセスが限定的

多剤耐性結核(MDR-TB)の出現

新規TB治療薬の開発が数十年間停滞

新薬の低コスト化が最優先課題


3: 研究の目的

スーテゾリドの低コスト合成ルートの開発

チオモルホリン環構築の新手法の確立

遷移金属を用いないニトロ基の還元法の開発

スーテゾリドの重要中間体の効率的合成


方法

1: 合成戦略

ジエタノールアミンと硫化ナトリウムを出発原料に使用

3段階の合成ルートを設計

チオモルホリン環の構築と還元を同時に行う


2: 主要な反応ステップ

Step 1: SNAr反応によるジオール中間体の合成

Step 2: メシル化による活性化

Step 3: 硫化物によるタンデム環化/還元反応


3: 分析・精製方法

HPLCによる反応進行のモニタリング

NMR、HRMS等による構造確認

活性炭処理による最終製品の精製


結果

1: Step 1の最適化

DEAを溶媒兼反応物として使用

80-90°Cで3当量のDEAを使用

94.8%の収率で目的物を単離


2: Step 2の最適化

アセトニトリル中、Et3Nを塩基として使用

MsCl 2.5当量で完全な変換を達成

89.8%の収率で目的物を単離


3: Step 3の最適化

EtOH/H2O混合溶媒中、Na2S·9H2Oを使用

2段階添加法により副生成物を抑制

65.4%の収率で目的物を得た(活性炭処理後94.2%純度)


考察

1: 主要な成果

チオモルホリンを直接使用しない新規合成ルート

遷移金属を用いないニトロ基の還元に成功

3段階で53-68%の総収率を達成


2: コスト面での利点

安価な出発原料(DEA、Na2S)の使用

チオモルホリンの直接合成・単離を回避

遷移金属触媒の使用を回避


3: プロセス化学的利点

各ステップでの単離・精製が容易

スケールアップ(100gスケール)に成功

安全性に配慮したプロセス設計(発熱制御等)


4: 研究の限界

最終生成物の純度がやや低い(活性炭処理で改善)

さらなる収率向上の余地がある

工業スケールでの実証が必要


結論

スーテゾリド中間体の低コスト合成ルートを確立

チオモルホリン環構築の新手法を開発

3段階プロセスの100gスケールでの実証に成功


将来の展望

さらなる純度向上と工業スケールでの検証

スーテゾリドの低コスト製造への道を開く

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