著者: Hanuman P. Kalmode, Ongolu Ravikumar, Dinesh J. Paymode, John Bachert, Justina M. Burns, Rodger W. Stringham, Sarah L. Aleshire, and Ryan C. Nelson*
雑誌: Organic Process Research & Development
巻: 28, 1195−1204
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
結核は世界で最も致命的な感染症の1つ
2021年に約1100万件の症例、160万人の死亡
適切な治療を適時に行えば治癒可能
低中所得国で症例の大半が発生
2: 未解決の問題
低コストで効果的な薬剤へのアクセスが限定的
多剤耐性結核(MDR-TB)の出現
新規TB治療薬の開発が数十年間停滞
新薬の低コスト化が最優先課題
3: 研究の目的
スーテゾリドの低コスト合成ルートの開発
チオモルホリン環構築の新手法の確立
遷移金属を用いないニトロ基の還元法の開発
スーテゾリドの重要中間体の効率的合成
方法
1: 合成戦略
ジエタノールアミンと硫化ナトリウムを出発原料に使用
3段階の合成ルートを設計
チオモルホリン環の構築と還元を同時に行う
2: 主要な反応ステップ
Step 1: SNAr反応によるジオール中間体の合成
Step 2: メシル化による活性化
Step 3: 硫化物によるタンデム環化/還元反応
3: 分析・精製方法
HPLCによる反応進行のモニタリング
NMR、HRMS等による構造確認
活性炭処理による最終製品の精製
結果
1: Step 1の最適化
DEAを溶媒兼反応物として使用
80-90°Cで3当量のDEAを使用
94.8%の収率で目的物を単離
2: Step 2の最適化
アセトニトリル中、Et3Nを塩基として使用
MsCl 2.5当量で完全な変換を達成
89.8%の収率で目的物を単離
3: Step 3の最適化
EtOH/H2O混合溶媒中、Na2S·9H2Oを使用
2段階添加法により副生成物を抑制
65.4%の収率で目的物を得た(活性炭処理後94.2%純度)
考察
1: 主要な成果
チオモルホリンを直接使用しない新規合成ルート
遷移金属を用いないニトロ基の還元に成功
3段階で53-68%の総収率を達成
2: コスト面での利点
安価な出発原料(DEA、Na2S)の使用
チオモルホリンの直接合成・単離を回避
遷移金属触媒の使用を回避
3: プロセス化学的利点
各ステップでの単離・精製が容易
スケールアップ(100gスケール)に成功
安全性に配慮したプロセス設計(発熱制御等)
4: 研究の限界
最終生成物の純度がやや低い(活性炭処理で改善)
さらなる収率向上の余地がある
工業スケールでの実証が必要
結論
スーテゾリド中間体の低コスト合成ルートを確立
チオモルホリン環構築の新手法を開発
3段階プロセスの100gスケールでの実証に成功
将来の展望
さらなる純度向上と工業スケールでの検証
スーテゾリドの低コスト製造への道を開く
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