著者: Irene Quirós, María Martín, Miguel Gomez-Mendoza, María Jesús Cabrera-Afonso, Marta Liras, Israel Fernández, Luis Nóvoa, and Mariola Tortosa*
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
巻: 63, e202317683
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
可視光光触媒反応は、従来不活性だった官能基を活性化できる
アミンは天然物や医薬品に広く存在する重要な官能基
C-N結合の切断は合成的に重要だが、新しい方法が必要
2: 既存の脱アミノ化手法
ピリジニウム塩を用いる方法(1級・2級アミンのみ)
電子豊富なイミンを用いる方法(3級アミンのみ)
1,2-ジアルキルジアゼンの脱窒素化
1級、2級、3級アミンに共通の手法が不足
3: イソニトリルに着目した研究
イソニトリルは多くの天然物に存在し、1級アミンから容易に合成可能
イソニトリルのC-N単結合の切断と官能基化は限定的
可視光照射下でのアルキルラジカル前駆体としての利用可能性を探る
方法
1: 反応条件の最適化
モデル基質:N-Boc保護‐4‐イソシアノピペリジン1a
光源:青色LED(λmax = 455 nm)
溶媒:アセトニトリル
シリル化剤:トリス(トリメチルシリル)シラン2a
濃度:0.2 M
2: 基質適用範囲の検討
1級、2級、3級アルキルイソニトリルの検討
アミノ酸誘導体の検討
生物活性分子や医薬品誘導体への応用
グラムスケール反応の検討
3: 重水素化反応の検討
(TMS)3SiDを用いた重水素化反応
様々な基質での重水素化効率の評価
2-デオキシ-D-グルコースの位置選択的重水素化
結果
1: 脱アミノ化反応の基質適用範囲
1級、2級、3級アルキルイソニトリルで高収率を達成
アミノ酸誘導体や生物活性分子でも効率的に進行
チロシンやトリプトファン、ジペプチドでも適用可能
リナグリプチン誘導体での位置選択性を確認
2: 重水素化反応の結果
(TMS)3SiDを用いて効率的な重水素化を達成
2-デオキシ-D-グルコースでは軸位選択的に重水素導入
様々な官能基を持つ基質で高い重水素化率を実現
3: 光触媒を用いた反応の加速
4CzIPNを光触媒として使用し、反応を大幅に加速
ベンジル位基質や一部の1級イソニトリルで効果的
リシンやプリマキン誘導体で高収率を達成
考察
1: 反応機構の考察
ラジカル捕捉剤(TEMPO)による反応の阻害
シリルラジカルの生成を示唆するGiese生成物の形成
酸素非存在下でも反応が進行することを確認
2: DFT計算による反応機構の考察
DFT計算によるエネルギープロファイルの解析
イソニトリルへのシリルラジカル付加は熱中性
β開裂によるアルキルラジカル生成が駆動力
3: 光触媒反応の機構解析
蛍光消光実験による反応速度定数の決定
過渡吸収分光法による中間体の検出
電子移動過程の可能性を示唆
4: 研究の意義と限界
イソニトリルを用いた新規脱アミノ化法の開発
可視光照射下での穏和な条件での反応
反応開始機構の詳細は不明確
結論
可視光照射下でのイソニトリルの脱アミノ化反応を開発
1級、2級、3級イソニトリルに適用可能な汎用性の高い手法
光触媒の使用により反応が大幅に加速
アルキルラジカル前駆体としてのイソニトリルの新しい可能性
将来の展望
今後のC-C結合形成反応への応用が期待される
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