論文のタイトル: Why •CF2H is nucleophilic but •CF3 is electrophilic in reactions with heterocycles(CF2HラジカルとCF3ラジカルの異なる反応性:ヘテロ環化合物との反応における求核性と親電子性)
著者: Meng Duan, Qianzhen Shao, Qingyang Zhou, Phil S. Baran, K. N. Houk
雑誌: Nature Communications
巻: 15巻, 4630号
出版年: 2024年
背景
1: フッ素化合物の重要性
フッ素化合物は農薬、医薬品、材料科学で広く応用されている
ヘテロ環化合物の直接的なジフルオロメチル化は未発達
10年以上前に、ジフルオロメタンスルフィン酸亜鉛が開発された
2: CF2HラジカルとCF3ラジカルの反応性の違い
CF2Hラジカルはアルキルラジカルや芳香族ラジカルと同様の求核性を示す
CF3ラジカルは親電子性を示す
この違いは経験的に観察されているが、理由は不明瞭
3: 研究の目的
CF2HラジカルとCF3ラジカルの反応性の違いを理論的に解明する
フッ素原子の影響を詳細に分析する
ヘテロ環化合物との反応における位置選択性を説明する
方法
1: 計算手法
密度汎関数理論(DFT)計算を使用
M06-2X汎関数と6-311+G(d,p)基底関数を使用
SMD溶媒和モデルを適用
2: モデル化合物
プロトン化されたヘテロ環化合物を使用
4-アセチルピリジン、バレニクリン、ジヒドロキニーネを対象
3: 解析方法
遷移状態の自由エネルギー差(ΔΔG‡)を計算
フロンティア分子軌道(FMO)理論を適用
制限開殻DFT計算を実施
結果
1: ラジカルのSOMOエネルギー
CH3: -2.6 eV
CH2F: -2.5 eV
CF2H: -2.8 eV
CF3: -3.4 eV
2: フッ素原子の影響
誘起効果:SOMOエネルギーを低下させる
共役効果:SOMOエネルギーを上昇させる
CF3では誘起効果が支配的
3: 位置選択性の違い
CF2H:ヘテロ環のLUMO係数が支配的
CF3:ヘテロ環のHOMOとLUMO係数の両方が重要
考察
1: CF2HとCF3の反応性の違い
CF2H:CH3と同様の求核性を示す
CF3:誘起効果が強く、親電子性を示す
フッ素原子数の増加に伴う不連続な変化
2: フッ素原子の効果
1つ目と2つ目のフッ素:誘起効果と共役効果が相殺
3つ目のフッ素:誘起効果が支配的になる
3: 位置選択性のメカニズム
CF2H:ヘテロ環のLUMOとの相互作用が主要
CF3:ヘテロ環のHOMOとLUMOの両方と相互作用
4: 研究の限界
プロトン化されたヘテロ環のみを考慮
溶媒効果の詳細な検討が不足
実験結果との更なる比較が必要
結論
CF2HラジカルとCF3ラジカルの反応性の違いを理論的に説明
フッ素原子数による不連続な変化を解明
ヘテロ環化合物との反応における位置選択性のメカニズムを提案
将来の展望
より多様なヘテロ環化合物での検証が必要
新しい反応設計への応用可能性
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