2024年7月21日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0077~

論文のタイトル: Synthetic Studies on Bilobalide

著者: Akihiro Shiogai, Tatsuya Toma, Satoshi Yokoshima*

雑誌: Synlett 

巻: 31(03): 290-294

出版年: 2020


背景

1: ビロバリドの構造と特徴

ビロバリドはイチョウの葉から単離されたセスキテルペン

1967年に初めて単離され、1971年に構造決定された

3つのラクトン環と1つのシクロペンタン環からなる四環性骨格

2つの水酸基とtert-ブチル基を含む6つの連続した不斉中心を有する


2: ビロバリドの生物学的活性と合成研究

神経保護作用やGABA受容体アンタゴニスト活性などの生物活性を示す

複雑な構造と生物活性から、化学分野で注目を集めている

これまでに3つの研究グループによる全合成が報告されている


3: 研究の目的

ビロバリドの新しい合成経路の開発

対称性に着目した逆合成解析の提案

連続する4級炭素の構築を含む合成戦略の確立


方法

1: 逆合成解析

ビロバリドの対称性に着目した逆合成解析

環状無水物のDiels-Alder反応を鍵反応として提案

連続する4級炭素の構築を目指す


2: 環状無水物の合成

シクロペンタジエンを出発物質とする多段階合成

一重項酸素を用いた酸化反応

パラジウム触媒を用いた還元的環化反応


3: Diels-Alder反応と脱対称化

環状無水物とブタジエンのDiels-Alder反応

立体選択的な反応による4級炭素の構築

対称ジオールの脱対称化反応


4: 官能基変換と環化反応

tert-ブチル基の導入

1,3-異性化反応による第3級アルコールの位置制御

酸性条件下での環状アセタール形成


結果

1: 環状無水物の合成

シクロペンタジエンから9段階で環状無水物11を合成

一重項酸素を用いた酸化反応で高収率でジオールを得た

AZADOを用いた酸化反応でジカルボン酸を効率的に合成


2: Diels-Alder反応と脱対称化

環状無水物11とブタジエンのDiels-Alder反応が室温で進行

立体選択的に2つの4級炭素を含む三環性化合物12を得た

PCCを用いた酸化反応で対称ジオール14から脱対称化を達成


3: 官能基変換と環化反応

tert-ブチルリチウムの付加反応でtert-ブチル基を導入

2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボロン酸を用いた1,3-異性化反応

酸性条件下での環状アセタール形成と立体反転を伴う環化反応


考察

1: 合成戦略の有効性

対称性に着目した逆合成解析が効果的であった

Diels-Alder反応による4級炭素の構築が高い立体選択性で進行

脱対称化戦略により効率的に複雑な骨格を構築できた


2: 鍵反応の成功

環状無水物のDiels-Alder反応が予想通り進行

PCCを用いた酸化的脱対称化が高収率で進行

酸性条件下での環状アセタール形成と立体反転が同時に進行


3: Coreyの中間体との比較

合成した化合物22bがCoreyの全合成中間体と一致

新しい合成経路でCoreyの中間体に到達できた

本研究の合成戦略の妥当性が示された


4: 課題と今後の展望

第3級アルコールの立体化学制御が課題として残る

Mukaiyama水和反応で望まない立体化学の第3級アルコールが生成

さらなる立体選択的反応の開発が必要


結論

ビロバリドの新しい合成経路を開発

対称性を利用した効率的な合成戦略を確立

連続する4級炭素の構築に成功

Coreyの中間体への到達を達成


将来の展望

第3級アルコールの立体制御が今後の課題

さらなる反応開発によるビロバリド全合成への展開が期待される

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