論文のタイトル: Synthetic Studies on Bilobalide
著者: Akihiro Shiogai, Tatsuya Toma, Satoshi Yokoshima*
雑誌: Synlett
巻: 31(03): 290-294
出版年: 2020
背景
1: ビロバリドの構造と特徴
ビロバリドはイチョウの葉から単離されたセスキテルペン
1967年に初めて単離され、1971年に構造決定された
3つのラクトン環と1つのシクロペンタン環からなる四環性骨格
2つの水酸基とtert-ブチル基を含む6つの連続した不斉中心を有する
2: ビロバリドの生物学的活性と合成研究
神経保護作用やGABA受容体アンタゴニスト活性などの生物活性を示す
複雑な構造と生物活性から、化学分野で注目を集めている
これまでに3つの研究グループによる全合成が報告されている
3: 研究の目的
ビロバリドの新しい合成経路の開発
対称性に着目した逆合成解析の提案
連続する4級炭素の構築を含む合成戦略の確立
方法
1: 逆合成解析
ビロバリドの対称性に着目した逆合成解析
環状無水物のDiels-Alder反応を鍵反応として提案
連続する4級炭素の構築を目指す
2: 環状無水物の合成
シクロペンタジエンを出発物質とする多段階合成
一重項酸素を用いた酸化反応
パラジウム触媒を用いた還元的環化反応
3: Diels-Alder反応と脱対称化
環状無水物とブタジエンのDiels-Alder反応
立体選択的な反応による4級炭素の構築
対称ジオールの脱対称化反応
4: 官能基変換と環化反応
tert-ブチル基の導入
1,3-異性化反応による第3級アルコールの位置制御
酸性条件下での環状アセタール形成
結果
1: 環状無水物の合成
シクロペンタジエンから9段階で環状無水物11を合成
一重項酸素を用いた酸化反応で高収率でジオールを得た
AZADOを用いた酸化反応でジカルボン酸を効率的に合成
2: Diels-Alder反応と脱対称化
環状無水物11とブタジエンのDiels-Alder反応が室温で進行
立体選択的に2つの4級炭素を含む三環性化合物12を得た
PCCを用いた酸化反応で対称ジオール14から脱対称化を達成
3: 官能基変換と環化反応
tert-ブチルリチウムの付加反応でtert-ブチル基を導入
2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボロン酸を用いた1,3-異性化反応
酸性条件下での環状アセタール形成と立体反転を伴う環化反応
考察
1: 合成戦略の有効性
対称性に着目した逆合成解析が効果的であった
Diels-Alder反応による4級炭素の構築が高い立体選択性で進行
脱対称化戦略により効率的に複雑な骨格を構築できた
2: 鍵反応の成功
環状無水物のDiels-Alder反応が予想通り進行
PCCを用いた酸化的脱対称化が高収率で進行
酸性条件下での環状アセタール形成と立体反転が同時に進行
3: Coreyの中間体との比較
合成した化合物22bがCoreyの全合成中間体と一致
新しい合成経路でCoreyの中間体に到達できた
本研究の合成戦略の妥当性が示された
4: 課題と今後の展望
第3級アルコールの立体化学制御が課題として残る
Mukaiyama水和反応で望まない立体化学の第3級アルコールが生成
さらなる立体選択的反応の開発が必要
結論
ビロバリドの新しい合成経路を開発
対称性を利用した効率的な合成戦略を確立
連続する4級炭素の構築に成功
Coreyの中間体への到達を達成
将来の展望
第3級アルコールの立体制御が今後の課題
さらなる反応開発によるビロバリド全合成への展開が期待される
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