2024年7月30日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0085~

論文のタイトル: Site-Selective Distal C(sp3)−H Bromination of Aliphatic Amines as a Gateway for Forging Nitrogen-Containing sp3Architectures

著者: Jinhong Chen, Clarence Tan, Jesus Rodrigalvarez, Shuai Zhang, Ruben Martin

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024年


背景

1: アミン化合物の重要性

2022年の上位200種の小分子処方薬の82%がアミノ基を含む

窒素含有骨格の合成手法が近年急速に発展

C(sp3)−H官能基化による窒素含有骨格類の合成が注目されている

後期段階での構造多様化が可能になる


2: 既存の手法と課題(アミンのC(sp3)−H官能基化の現状)

α位官能基化:超塩基、酸化プロセスを使用

β位官能基化:イミン-エナミン平衡を利用

遠位C(sp3)−H官能基化:金属触媒、アミジルラジカル、Ir触媒ボリル化

アンモニウム塩を利用した手法も開発されている

しかし、予測可能な位置選択性を持つ統一的手法が不足


3: 研究の目的(新しいC(sp3)−H官能基化戦略の開発)

未保護の一級・二級アミンの遠位C(sp3)−H結合を選択的に臭素化

予測可能な位置選択性パターンの確立

得られた臭素化中間体を利用した多様な変換反応の開発

医薬品化学に関連する窒素含有sp3骨格への迅速なアクセス


方法

1: C(sp3)−H臭素化反応条件の最適化

モデル基質:n-プロピルアミン

臭素源:1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)

酸性条件:過塩素酸(HClO4)

光触媒:テトラ-n-ブチルアンモニウムデカタングステート(TBADT)

光源:390 nm照射


2: 電子的効果による位置選択性の制御

アミンのプロトン化により近位C(sp3)−H結合のHAT抑制

DFT計算による結合解離エネルギーと電子密度の解析

プロトン化アミンの β位C(sp3)−H結合が最も反応性が高い

長鎖アミンでは最遠位のメチレン部位で反応が進行


3: 基質適用範囲の検討

直鎖状アルキルアミン

環状アミン(ピロリジン、ピペリジン、アゼパン)

アミノ酸

含フッ素化合物

市販薬(バクロフェン)


結果

1: 直鎖状アルキルアミンの臭素化

n-プロピルアミン:β位選択的臭素化(2a

n-ブチルアミン:γ位選択的臭素化(2c

n-ペンチルアミン:δ位選択的臭素化(2d、70%選択性)

アミノ酸:側鎖の構造により選択性が変化(2e, 2f


2: 環状アミンの臭素化

ピロリジン:β位選択的臭素化(2m

ピペリジン:γ位とβ位の混合物(2n

アゼパン:γ位選択的臭素化(2t、88%選択性)

置換基効果:メチル基、シアノ基により選択性が変化(2o, 2p, 2q


3: 臭素化中間体の変換反応

アジリジン、アゼチジンの合成(3a-3d

2-オキサゾリドンの合成(3f-3g

Ni触媒クロスカップリング反応(4a, 4c

Pd触媒Heck型反応(4b

C-N、C-O結合形成反応(4d-4f


考察

1: 位置選択性の制御要因

アミンのプロトン化による近位C-H結合の電子的摂動

結合解離エネルギーと電子密度の相関

長鎖アミンでの最遠位選択性:電子的影響の減衰


2: 従来法との比較(本手法の特徴と利点)

Hofmann-Löffler-Freytag反応との違い:より柔軟な環構築

金属触媒を用いない温和な条件下での反応

未保護アミンに直接適用可能

予測可能な位置選択性パターン


3: 合成的有用性(医薬品化学への応用)

多様な含窒素複素環の迅速合成

後期段階での構造修飾が可能

市販薬の合成:Azelastine®、Fluoxetine®の形式全合成


結論

未保護アミンの遠位C(sp3)−H臭素化法の開発に成功

予測可能な位置選択性パターンを実現

多様な含窒素sp3骨格への合成的アクセスを可能に

医薬品化学における有用性を実証


将来の展望

三級アミンへの適用性の検討

位置選択性のさらなる向上

不斉誘起を伴う変換反応の開発

大規模合成への適用性の検証

今後の創薬への応用に期待

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