著者: Jinhong Chen, Clarence Tan, Jesus Rodrigalvarez, Shuai Zhang, Ruben Martin
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
出版年: 2024年
背景
1: アミン化合物の重要性
2022年の上位200種の小分子処方薬の82%がアミノ基を含む
窒素含有骨格の合成手法が近年急速に発展
C(sp3)−H官能基化による窒素含有骨格類の合成が注目されている
後期段階での構造多様化が可能になる
2: 既存の手法と課題(アミンのC(sp3)−H官能基化の現状)
α位官能基化:超塩基、酸化プロセスを使用
β位官能基化:イミン-エナミン平衡を利用
遠位C(sp3)−H官能基化:金属触媒、アミジルラジカル、Ir触媒ボリル化
アンモニウム塩を利用した手法も開発されている
しかし、予測可能な位置選択性を持つ統一的手法が不足
3: 研究の目的(新しいC(sp3)−H官能基化戦略の開発)
未保護の一級・二級アミンの遠位C(sp3)−H結合を選択的に臭素化
予測可能な位置選択性パターンの確立
得られた臭素化中間体を利用した多様な変換反応の開発
医薬品化学に関連する窒素含有sp3骨格への迅速なアクセス
方法
1: C(sp3)−H臭素化反応条件の最適化
モデル基質:n-プロピルアミン
臭素源:1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)
酸性条件:過塩素酸(HClO4)
光触媒:テトラ-n-ブチルアンモニウムデカタングステート(TBADT)
光源:390 nm照射
2: 電子的効果による位置選択性の制御
アミンのプロトン化により近位C(sp3)−H結合のHAT抑制
DFT計算による結合解離エネルギーと電子密度の解析
プロトン化アミンの β位C(sp3)−H結合が最も反応性が高い
長鎖アミンでは最遠位のメチレン部位で反応が進行
3: 基質適用範囲の検討
直鎖状アルキルアミン
環状アミン(ピロリジン、ピペリジン、アゼパン)
アミノ酸
含フッ素化合物
市販薬(バクロフェン)
結果
1: 直鎖状アルキルアミンの臭素化
n-プロピルアミン:β位選択的臭素化(2a)
n-ブチルアミン:γ位選択的臭素化(2c)
n-ペンチルアミン:δ位選択的臭素化(2d、70%選択性)
アミノ酸:側鎖の構造により選択性が変化(2e, 2f)
2: 環状アミンの臭素化
ピロリジン:β位選択的臭素化(2m)
ピペリジン:γ位とβ位の混合物(2n)
アゼパン:γ位選択的臭素化(2t、88%選択性)
置換基効果:メチル基、シアノ基により選択性が変化(2o, 2p, 2q)
3: 臭素化中間体の変換反応
アジリジン、アゼチジンの合成(3a-3d)
2-オキサゾリドンの合成(3f-3g)
Ni触媒クロスカップリング反応(4a, 4c)
Pd触媒Heck型反応(4b)
C-N、C-O結合形成反応(4d-4f)
考察
1: 位置選択性の制御要因
アミンのプロトン化による近位C-H結合の電子的摂動
結合解離エネルギーと電子密度の相関
長鎖アミンでの最遠位選択性:電子的影響の減衰
2: 従来法との比較(本手法の特徴と利点)
Hofmann-Löffler-Freytag反応との違い:より柔軟な環構築
金属触媒を用いない温和な条件下での反応
未保護アミンに直接適用可能
予測可能な位置選択性パターン
3: 合成的有用性(医薬品化学への応用)
多様な含窒素複素環の迅速合成
後期段階での構造修飾が可能
市販薬の合成:Azelastine®、Fluoxetine®の形式全合成
結論
未保護アミンの遠位C(sp3)−H臭素化法の開発に成功
予測可能な位置選択性パターンを実現
多様な含窒素sp3骨格への合成的アクセスを可能に
医薬品化学における有用性を実証
将来の展望
三級アミンへの適用性の検討
位置選択性のさらなる向上
不斉誘起を伴う変換反応の開発
大規模合成への適用性の検証
今後の創薬への応用に期待
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