論文のタイトル: Addressing Environmental Challenges of Porphyrin Mixtures Obtained from Statistical Syntheses
著者: Helen Hölzel, Maximilian Muth, Dominik Lungerich, Norbert Jux
雑誌: Chemistry—Methods
巻: Volume1, Issue3, Pages 142-147
出版年: 2021年
背景
1: 研究の背景
統計的合成アプローチは多様な分子ライブラリーへの迅速なアクセスを提供
低対称ポルフィリンは興味深い光電子的特性を持つ
しかし、精製が困難で大量の溶媒を必要とする
環境因子(E-factor)が非常に高い
2: 研究の課題
低対称ポルフィリンの合成と精製には多大な時間と資源が必要
従来の手動クロマトグラフィーは多量の溶媒廃棄物を生成
学術研究でも持続可能性を考慮する必要性が高まっている
3: 研究目的
半自動化プロセスによるポルフィリン混合物の合成と精製の効率化
消耗品コストの削減、時間の節約、廃棄物生成の低減を目指す
環境因子(E-factor)の大幅な削減を達成する
方法
1: 研究アプローチ
モノモードマイクロ波リアクターと自動サンプラーを使用
中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)による精製
UV/Vis検出器と再利用可能なSiO2充填ガラスカラムを採用
2: ポルフィリン合成
2種類のベンズアルデヒドの統計的反応を実施
Zerrouki型ポルフィリン合成条件を修正して使用
マイクロ波照射により反応時間を短縮(5分)
3: 精製プロセス
固体ローダーを用いてサンプルを導入
ガードカラムとメインカラムを使用して分離
単一溶媒系での分離を目指す
溶媒のリサイクルにより廃棄物を最小化
4: 環境因子の評価
E-factorを計算して環境負荷を評価
従来法と半自動化プロセスのE-factorを比較
溶媒リサイクルの効果を検証
結果
1: ポルフィリン混合物の合成
P1-P6の6種類のポルフィリン混合物を合成
A3B、trans-A2B2、cis-A2B2、AB3異性体を分離
総収率は24.7-27.6%を達成
2: 精製条件の最適化
流速50 mL/minで最適な分離を実現(P1)
単一溶媒系(CH2Cl2またはCHCl3)で極性ポルフィリンを分離
非極性ポルフィリンは溶媒混合系が必要
3: 環境因子の改善
極性ポルフィリン(P1-P3)のE-factorを530-624に低減
従来法と比較して2桁以上の改善を達成
非極性ポルフィリン(P4-P6)でもE-factorを2000-2500に抑制
考察
1: 半自動化プロセスの利点
操作者の介入を最小限に抑え、再現性を向上
マイクロ波照射により反応時間を大幅に短縮
MPLCによる精製で溶媒使用量を削減
2: 環境負荷の低減
単一溶媒系の採用により溶媒廃棄物をほぼゼロに
溶媒リサイクルにより非極性ポルフィリンのE-factorも大幅に改善
従来法と比較して1-2桁のE-factor低減を実現
3: 学術研究への示唆
統計的アプローチの環境面での優位性を実証
選択的合成と比較して総収率、時間、コスト面で有利
持続可能性を考慮したレトロ合成計画の重要性を提示
4: 研究の限界
非極性ポルフィリンでは単一溶媒系での分離が困難
溶媒混合系のリサイクルには制限がある
一部の異性体(cis/trans A2B2)の完全分離が困難
結論
半自動化プロセスによりポルフィリン合成の環境負荷を大幅に低減
学術研究でも持続可能性を考慮することの重要性を示した
選択的合成と統計的アプローチの環境面での比較評価が必要
将来の展望
さらなるプロセス最適化により、より広範な化合物への適用が期待される